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(80) 安全地帯にて1

読者の皆様、お待たせ致しました。

コロナ禍の昨今、折角のゴールデンウィークも自粛ムードとなり、在宅巣籠もりの状態となってはおりますが、ここはひとつ、この機会に小説でも読んで気晴らしをしていって下さいませ。

一方、ゲート前へと到着し、開門を待っている和馬達3人の向こう側では、クレーン車が発する大きなディーゼルエンジン音と共にクレーンフックとコンテナフックを繋ぐ太いワイヤーが徐々に張られ始め、今まさにコンテナフェンスが吊り上げられ様としていた。

更に一段と高まるエンジン音と共に徐々にワイヤーは巻き上げられ、コンテナフェンスが少しずつ吊り上げられてゆく事によって、コンテナと地面との間には次第に隙間が広がり始め、やがては人が屈まずとも充分に歩ける程の空間が生まれた。



「よし、和馬君、雄太君。ここをくぐり抜けて中へと入ろう」



「了解」


和馬達3人は、目の前で吊り上げられているコンテナフェンスの下をくぐり抜け安全地帯側へと入り、全員が敷地内へと入り終えた事を確認した花菜は、再び昇降用レバーを操作してコンテナフェンスを元の位置へと戻していった。



「へえ~、良く考えてあるなあ。同じ位置にコンテナを簡単に戻せるもんなんですね」



「いや、いや、和馬君。そうでもないよ。一応、予めコンテナの四隅にずれ防止のガイドを溶接してあるから、コンテナを上下させても元の位置へと戻せる様にはしてあるんだが、それでもコツを掴まない事には中々難しいからねえ。儂なんか、上手くいかずにやり直す事だってあるよ。だから、同じ位置に毎回一発で決められる花菜さんは腕が良いんだよ」



給油ホースを肩へと担いだまま、誇らしげに返答した英二は、クレーン操作を終えた花菜へと向かって小さく手を上げる。

無事に敷地内へと入った英二達3人に対し、微笑みながら手を振った花菜は、エンジンを切り運転席から降りると、ゆっくりと彼等の元へと歩いてゆく。



「みんな無事で良かった。これで一先ずは安心だわ。それから、今日は本当にお疲れ様でし……。えっ?」



危険極まりない場所において悪戦苦闘した3人に対し、にこやかな表情で労いの言葉をかけた花菜ではあったが、着用しているタクティカルベストに細かな血液飛沫を付着させている和馬の姿を間近で見てしまった事で一瞬言葉が止まってしまう。



「和馬君。服や顔についているその赤い染みって、血じゃないの?大丈夫なの?どこか怪我をしてない?」



もしかすると、燃料調達の最中に何かしらの怪我を負ったのではないかと心配をしている花菜に対し、和馬は慌てて手を振りながら答える。



「いや、いや。大丈夫。これは返り血。全部、相手からの返り血ですよ。俺自身は、一つも怪我はしていません。あ~、とはいっても、耳鳴りだったらしてますけどね」



「耳鳴り?」



「ええ。耳鳴り。まあ、はなせば長くなります。詳しい事は後でお話ししますよ」



「わかったわ。取り敢えず怪我は無かったのね。あ~、良かった。ねえ、ところで、ねえ英二さん。雄太さんと何を担いでいるの?」



「ああ、これか。これは燃料ホースだよ。積載タンクから燃料を抜き取る時には、このホースを使うんだが、それにはちょっと加工が必要でね。それで雄太君とここまで運び込んで来たって訳さ」



「あ~、成る程ね。それじゃあ、今から作業場まで持っていくの?」



「ああ、そういう事だな。よし、雄太君。早くこいつを作業場まで運んでしまおう。そろそろ儂は、肩が痛くなってきた」



「よっしゃあ、それじゃいきましょう」



「それから、和馬君は先に家に入って中でくつろいでいてくれ。じゃあ、花菜さん、後を頼むな」



「わかったわ。それじゃ、私達は一足先に中へと入っていましょう」



「あ、はい」



英二と雄太は、給油用ホースを担いだまま、敷地の奥側へと向かって歩いてゆき、和馬は花菜と共に目の前に建つ平屋建て家屋の玄関前へと向かう。

最後まで、読んで頂きましてありがとうございます。

次回もお楽しみに!

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