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(72) 燃料調達13

読者の皆様、本年もよろしくお願いいたします。

さて、今回は英二の視点で話が進みます。

一方、ピックアップトラックを運転する英二は、群がる感染者達によって前進を阻まれながらも懸命に和馬への救援へと向かおうとしていた。

しかし、ピックアップトラック内の運転者を狙って、前方より次々と出現する感染者達が前進を阻止する形となり、どうしても思う様に進む事が出来ない。

ならば、いっその事、このまま一気にアクセルを踏んで、前方を塞ぐ感染者達を排除してしまいたくなる様な衝動にも駆られそうになる英二だったが、下手をすれば最悪、大切な命綱でもある車を大破させてしまう事を考えると、ここはやたらとアクセルを踏み込む訳にもいかなかった。

一見すると、車体がリフトアップされ、フロント部分には通称「カンガルー避け」とも呼ばれている厳ついフロントグリルが装着されているこのピックアップトラックならば、感染者集団の壁をも正面から難なく強行突破出来そうに感じられなくも無い。

しかし、勢い良く車両前部に人間が衝突してしまった場合の衝撃は、車両本体、特に動力系に深刻なダメージを与えてしまう可能性が高い。

仮にこのまま正面から感染者に激しく衝突したともなれば、車両フロント部分に収まっているラジエーターやエンジン本体をも損傷させてしまう事は免れないだろう。

もしも最悪、こんな場所でエンジントラブルを起こし、その結果、エンジン停止ともなれば、英二が生き残れる確率は格段に低くなる。

やはり、危険性と生存確率の点を考えた場合、このままスピードを上げて感染者集団の真っ只中を突っ切る事は自殺行為の何物でもなく、ならばここは正面からぶつかるのではなく、例え時間がかろうとも上手くかわすといった安全策を取るより他は無いだろう。

今の所、まるで思う様に前進出来ない事に対し苛立つ英二であったが、こうしている間にも次々と感染者達は集まって来ており、方々から伸ばして来る血塗れの手がピックアップトラックのフロント部分やサイドガラスを激しく叩き始めている。



「よくもまあ、こう次から次へと集まって来るもんだな。これじゃ、前へ進めやしない。チッ!どうしたもんかな」



感染者達によって、車体に次々と血の手形がつけられ、ガタガタと激しく揺さぶられている車内で苦々しい表情を浮かべながら舌打ちをした英二は何か、この場を上手く切り抜ける手段は無い物かと周囲を見回しながら考える。

現在、感染者達は車体のフロント部分と左右の両ドア部分に集中する形で集まっており、どうやら連中は外からガラス越しに運転者を目視確認した上で、この様な行動をとっている様であった。



『ん?まてよ。もしかしたら……』



フロントガラスやサイドガラスと比べ、比較的ガラス面積の小さなリアガラスなら外側から運転者の姿が見えずらく、結果的に後方へと群れが集まって来ないのではないかと考えた英二は脱出の可能性に期待し、善は急げと云わんばかりに身を乗り出し後ろを振り返る。



「やっぱり、後ろががら空きだな」



リアガラス越しに後方確認をした英二は、顎をしゃくる仕草をみせながらニヤリと笑う。

やはり、英二の予想通り、後方にはさほど感染者が集まってはおらず、これなら難なく突破出来ると確信した英二はシフトレバーを素早くリバース側へとチェンジするとピックアップトラックを勢い良くバックさせた。

この時、急にピックアップトラックが後方へと下がった事で、今まで車体のフロント部分へとのし掛かり激しくボンネットやガラス窓を叩いていた感染者達は突然、対象物を失ってしまい、そのまま前へとつんのめる様な形で次々と路上へと倒れ込んでゆく。

一斉に路上へと倒れる感染者達を一気に引き離し、トラックは更にバック走行を続ける。

もちろん、進行方向に放置車両が点在する中でのバック走行は危険度や運転難易度が高いのだが、そこは英二自身の持ち前である運転技術の高さにより、まるで車両間を縫う様に巧みに上手くかわしてゆく。

一方、狙っていた獲物をそのまま取り逃がしてしまう形となった感染者達は、叫び声を上げながら追い掛けてはくるが、感染者達とピックアップトラックとの距離は次第に開き始めていた。



「まあ、こんな所かな」



暫しの間、バック走行を続け、感染者達との距離を大きく引き離した英二は、一旦ここでトラックを停車させ、ギアをニュートラル側へと戻した後、再度、前方の道路状態を確認し始める。

現在、遥か前方には先程、引き離した感染者達がこちらへと向かって走って来る姿が小さく見えており、どうやら相手が道路中央にて密集隊形に固まっている状況から考えると、道路の端へと向かって大きく迂回さえすれば、集団相手でも何とか上手くかわす事が出来そうだ。



「これなら、何とか行けそうだな。よしっ、行くか!」



ピックアップトラックのシフトレバーをローギアへとシフトチェンジした英二は、これより和馬救援の為、再び前進を開始する。



「おう、おう。おいでなすった」



次々とシフトアップを行い、スピードが上がり始めたピックアップトラックの前には、叫び声を上げ続ける感染者の集団が再び迫って来る。





最後まで、読んで頂きましてありがとうございます。

次回も英二の視点で話が進行します。

お楽しみに!

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