(69) 燃料調達10
読者の皆様、お待たせ致しました。
今回は、何とか待避場所に辿り着いた和馬と獲物を狙って侵入しようとして来る感染者との攻防戦が展開します。
それでは、第69話の始まりです。
『どこか……。どこかに退避出来る場所は無いのか?このままでは、間違い無く奴等に捕まってしまう!』
次第に近づいて来る叫び声を耳にしつつ、必死に退避場所を探して走り続ける和馬の前方には、何十台もの車両が路上放置されたままになっているが、そのほとんどの車両のドアは閉まった状態となっており、迫って来る感染者達との距離を考えてみても、今からドアを開け車内へと退避する事はタイミング的にも難しい状況であった。
『くそっ!どれも、ドアが閉まってやがる。どれでも良い。ドアが開いている車は無いのか?』
荒い呼吸を繰り返しながら走り続ける和馬は、そのまま何台もの放置車両の横を通り過ぎるが、直ぐに逃げ込めそうなドアが開いた状態の車両はそう都合良くは見つからない。
『くそっ!くそっ!マジでヤバい!まずいぞ!ん?あっ!あったぞ!あれだ!』
命懸けの全力疾走を続けている為、次第に息が上がり始めていた和馬は、やっとの事で運転席側のドアが大きく開かれた1台のワゴン車を見つけ出す。
『あの車に上手く乗り込むしかない!』
感染者に追いつかれる前に何とかドアの開いた車両へと辿り着いた和馬は、右手にコルトM4カービンを持ったまま、ドア開口部から運転席へと勢い良く体を滑り込ませる。
『うっ!いてっ!』
勢い良く車内に乗り込んだ事により、ハンドルへと強かに体をぶつけながらも、何とか車内への滑り込み進入に成功した和馬は、開いているドアを閉める為、右手に持っているコルトM4を素早く左手へと持ち変える。
「あっ!なにっ!」
和馬はドアの取っ手を掴む為、急ぎ右手を伸ばそうとするが、残念ながらその前に大きく開いていたドアは、車両に辿り着いた感染者によって掴まれてしまう。
「あっ!くそっ!」
伸ばしかけていた右手を咄嗟に引いた和馬に対し、ドアを掴んでいる感染者は運転席にいる獲物へと襲い掛かるべく車内へと頭を潜り込ませてくる。
「うわあああっ!」
恐怖の余り、思わず大きな叫び声を上げた和馬は、咄嗟に左手に持った銃を外側へ向かって突き出すと、これ以上、車内へと潜り込まれない様、感染者の体にコルトM4のフラッシュハイダーを突き立てる。
まるで、つっかい棒の様に胸の位置へと銃口を突き立てられた感染者は、和馬に噛みつこうと身を乗り出しながら頭を振り回しているが、フラッシュハイダーが体を押さえる形となり、それ以上は車内へと侵入する事が出来ずにいる。
それでも感染者は、目の前の獲物を諦める筈も無く、今度は和馬の肩を掴み、そのまま体重を掛けながら、更に身を乗り出し始める。
今、感染者によって右肩を力一杯掴まれている和馬は、必死になって相手からの攻撃を防いではいるが、感染者の大きく開けられた口は次第に和馬の首元へと迫りつつあった。
『ぐうううっ!まずい!こいつ、何て力を出しやがるんだ!』
がっちりと掴まれている肩の痛みに耐えつつ、ありったけの力を出しながら抵抗を続けている和馬よりも感染者の力は遥かに強く、その口からは泡だった唾液が流れ、赤黒い血で染まった歯は徐々に和馬へと近づいて来る。
「うううっ!くそっ!これでも喰らいやがれ!」
迫って来る感染者を睨んだ和馬は、大声で叫びつつも相手の胸に突き立てているコルトM4のトリガーを引く。
直ぐ様、激しい射撃音が車内に響き渡ると共に感染者の胸部を数発のライフル弾が連続して貫通する。
ゼロ距離からの銃弾直撃によるダメージによって、急に動きの鈍くなった感染者に対し、和馬はそれでも攻撃の手を緩める事は無く、再びトリガーを引き続ける事で更なるライフル弾を相手の身体へと撃ち込んでゆく。
数回に渡る銃撃により胸部を血塗れにし、体をぐったりとさせたまま動かなくなった感染者を和馬はコルトM4のフラッシュハイダーで突きながら、直ぐに車外へと押し出す。
『こいつは、何とか外に追い出したが、また直ぐに次の奴が来るな』
もう、ドアを閉めている余裕など残されてはいないと判断した和馬は、直ぐに次の行動へと移る為、運転席から腰を浮かせて体の向きを変え、助手席側への移動を開始する。
狭い車内を移動し、助手席へと座る和馬の目には車両に辿り着き、ドア開口部から運転席へ侵入しようとする新たな感染者の姿が映っていた……。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
次回は、車内での攻防戦が更に激化します。
映画ドーン・オブ・ザ・デッドのラストシーン、バス内でのCJとゾンビとの攻防戦をイメージして頂ければ幸いです。
それでは、次回をお楽しみに!




