(67) 燃料調達8
読者の皆様、お待たせいたしました。
今回は、感染者による追跡が始まります。一体、和馬と英二は上手く逃げ切る事が出来るのでしょうか?それでは、第67話のスタートです。
一方、緊急退避の為、先行してピックアップトラックを目指す英二を追う和馬は、両手でコルトM4のハンドガードとグリップを握り締めながら全力疾走を続けていた。
少しでも早く感染者の追跡から逃れる為、必死に走る和馬の前には肩を揺らしながら懸命に走り続ける英二の姿が見えるが、年齢や体力的な衰えにより走りが遅い英二に直ぐに追いつき並走を始める。
「英二さん!奴らに追いつかれる!もっと急いで!」
「はあっ、はあっ」
「頑張って!トラックまでは、後もう一息だから!」
「はあっ、はあっ。お、おう!」
「後もう少し!英二さん頑張れ!」
ぜいぜいと苦しそうに息を切らしながら必死に走り続ける英二と並走を続ける和馬は、目前まで近づいたピックアップトラックを指差しながらも励まし続ける。
「よしっ!何とか辿り着いたぞ!」
やっとの事で安全地帯であるピックアップトラックへと辿り着いた和馬は、運転席側へと向かう英二を守る為、後ろを振り向きながら直ぐ様、両手で銃を構え、追い掛けて来る感染者達からの襲撃に備える。
「はあっ、はあっ、和馬君。直ぐ車に乗り込もう」
「ええ。了解!」
膝に両手をつき、下を向いたまま苦しそうに息を切らす英二は、車に乗り込む前に今持っているクロスボウを放り込もうと荷台側へと振り向くが、もうこの時、既に感染者が彼等の目前へと迫って来ていた。
「くそっ!もう来やがった!」
「車に乗り込む間がない!」
この状況では、車に乗り込む際に間違い無く襲われてしまうと判断した英二は、荒い呼吸により肩を上下させながらもこれより応戦体勢へと入る為、クロスボウを持ち上げ、接近中の感染者に向けて構える。
「英二さん!そんなのじゃ、奴らを止められない!俺が援護するから、とにかく早く車に乗って!」
両手でクロスボウを構える英二の姿を見た和馬は、今から発射しようとしているボルト(矢)1本の威力程度では、まず感染者の勢いを食い止められる程のストッピングパワーが足りないと判断し、ここはまず応戦するよりも今すぐに車内へと避難する様、英二に向かって叫ぶ。
確かにこのクロスボウの威力は別として、実際の所、英二の弓矢の腕前がどれ程の物なのかについては解らないが、はっきり言って走って来る相手に対し正確に弓矢を当てる事はかなり至難の技である上、構造上一本のボルトしかセットする事が出来ないクロスボウでは1度狙いを外してしまえば、もうその時点で射撃は終わりなのである。
当然、射撃終了ともなれば、早急に次のボルトを再装填する事になる訳だが、今の状況では弓のコッキングの最中に感染者によって体を掴まれ、そのまま押し倒されてしまうのは間違いないだろう。
『クロスボウじゃ、余りに分が悪すぎる。ここは銃を持っている俺が何とか英二さんを守らないと……』
今から英二が車内へと入る迄の時間稼ぎをする為、直ぐに和馬は射撃セレクターを3点バーストにセットしたコルトM4カービンのACOGを覗き込もうとするが、この時もう既に感染者の1人が和馬の目と鼻の先に姿を現しており、もうドットサイトを使って対象物への照準を合わせている暇など残されてはいなかった。
『くそっ!間に合わない!』
最早、正確に照準合わせをしている余裕など、全く残されてはいないと判断した和馬は、おおよその勘で相手に対し狙いを合わせると、そのままためらう事無くトリガーを引いた……。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
いよいよ次回は、感染者との死闘が始まります。それでは次回をお楽しみに!