(59) 行動開始
読書の皆様、お待たせいたしました。
今回は、目指す目的地へと出発する迄のお話です。
後、話の中で英二さんが所有するカッコいいスポーツピックアップトラックも登場します。(昔のダットラのイメージです)
それでは、第59話のスタートです。
「では、この手筈で燃料調達を行いたいと思う」
「解りました。それでいきましょう」
「了解しました。それで森川さん。現場迄の足についてはどうします?」
「ああ、それについては儂のトラックで行こうと思う。それから、花菜さんは儂らが戻って来た時、正面ゲートの開閉の方を頼む。燃料抜き取り作業が終了して、ここに戻って来たら直ぐに無線連絡を入れるから、無線の電源スイッチだけは切らないでおいてくれ」
「解ったわ。だけど、みんな絶対に無理だけはしないでね。それと、周りには充分に気をつけて」
「解りました」
「了解です。それじゃあ、行ってきます」
「花菜さん、留守を頼むな。それじゃ、行ってくる」
「みんな、本当に気をつけて……」
英二から留守を任された花菜を残し、和馬達3人はコンテナ上に用意された縄ばしごの元へと足早に進んでゆく。
「これを使って下へ降りよう」
きちんと丸めた状態でまとめられ、接続フックを使ってコンテナへとセッティングしてある縄ばしごへと足を乗せた英二は、そのまま足で押した後、今度は地面へと向かって勢い良くはしごを蹴り落とす。
「さあ、ここから行こう。すまんが花菜さん。後で縄ばしごを引き上げておいてくれ」
「解ったわ」
「頼んだよ。よし、今の所、感染者の姿も無い様だし、行くとするか」
再度、コンテナ下を見回し安全を確認した英二は、縄ばしごを掴むとステップへと足を掛け、慎重に下へと降り始める。
少々時間が掛かったものの、まずは英二が地面へと降り立った事を確認した和馬は続いて縄ばしごを降り始め、更に雄太もその後に続いて降りてゆく。
最後に雄太が降りて来た事を確認した英二は、肩へと掛けていたクロスボウを降ろし片手へと持つと、廃車両が並べて停められている近くのエリアを指差した。
「和馬君、雄太君。ちょっと、ここで待っていてくれ。儂は、向こうに停めてある車を取って来るから」
「解りました」
不意に感染者が襲撃して来る可能性も考え、自衛の為にホルスターからベレッタM9を抜き出し始めた和馬達を残し、英二はクロスボウを構えたままボーンヤード(廃車置場)の方へと歩いてゆく。
「もしかして、廃車を足がわりに使うのかな?」
「多分、そうでしょうね」
銃口を下げたベレッタM9を握り締め、周囲の警戒を怠らずにいる和馬達の頭上からは、コンテナ上で待つ花菜からの気遣いの声が聞こえて来る。
「2人共、くれぐれも気をつけてね」
「はい」
「了解です」
「あっ、そうだ。和馬君。ちょっと俺は、トラックをコンテナフェンスから退かしてくるよ。流石にキャビンをくっ付けたままじゃ、まずいだろうからね」
「解りました。そうだ。あと、それから……」
「あっ!武器だろ。大丈夫。行ったついでにライフルも取ってくるよ」
「お願いします」
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
急ぎ足でトラックの元へと向かい、後方の空き地へと車を後退させた雄太は、エンジンを停止後、アサルトライフル2丁を携えて車内から降りてきた。
「和馬君、お待たせ」
コルトM4カービンを肩へと掛け、もう1丁のライフルを手に持って戻って来た雄太は、ハンドガードを掴んだ左手を前へと突き出し、和馬へと銃を手渡す。
「はい。大事な相棒だよ」
「ありがとう、雄太さん」
「なあ、和馬君。今更、こんな事を言うのも何だけど、これから行こうとしている現場にもう既に感染者の奴らが集まっていたというのが、俺にはどうにも気掛かりなんだよね」
「感染者の群れか……。そうですね。確かに俺達、ヤバい状況に陥りましたからね」
和馬と雄太は、ほんの1時間前に海兵隊ヘリコプター墜落現場における感染者遭遇戦で命懸けの体験をした事を思い出し、思わず身震いをする。
「ああ。あれは、確かにヤバかったな」
「銃があったとはいえ、あの状況で生き残れたのはラッキーでしたよ」
「今度もさあ、上手くいけばいいんだけど」
「そうですね。英二さんの言っていた陽動作戦に感染者達が上手く引っ掛かってくれる事を祈りましょう」
「そうだな。おっ!英二さんが戻って来たぞ」
少し離れた位置からガソリン車が発する排気音が聞こえ、やがて和馬達の前に英二が運転する白いピックアップトラックがその姿を現した。
「へえ。4WDのスポーツピックアップかあ。良いねえ」
「カッコいいですよね」
今、和馬達の目の前で停車したピックアップトラックは、5人乗車が可能なダブルキャブ仕様のスポーツピックアップであり、フロント部分にはパイプフレームによるグリルガードや大型フォグランプが取り付けられ、足回りにはサスペンション部分のロングストローク化と大径マッドタイヤによる車体の大幅リフトアップ化がなされている。
「お待たせ、和馬君、雄太君。さあ、こいつに乗って行こう」
ピックアップトラックの窓から手を出した英二は、トラックの白いドアを手の平で軽く叩く。
「さあ、乗って、乗って」
「それじゃあ、失礼します」
コルトM4カービンを手に持った和馬達は、トラックのドアを開けると、それぞれ車内へと乗り込んでゆく。
「そうだ、英二さん。今の内に俺達で何か準備しておく事はありますか?」
「いや、別に無いなあ。軽油抜き出し用の手動ポンプと燃料携行缶はもう荷台に置いてあるし、後はこのまま現場に向かうだけだよ」
「そうですか。解りました。また、何かあったら遠慮無く言って下さい」
「うん。その時は宜しく頼むよ。さあて、それじゃ行くぞ」
今、握っているシフトレバーをローギアへと入れた英二は、コンテナ上から心配そうに見つめている花菜に気付くと小さく手を上げて頷いた後、目的地へ向けて、ゆっくりと車を走らせた……。
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。
今回のお話は、いかがだったでしょうか。
次回は、いよいよ和馬達一行が目的地へと到着します。
果たして、現場には目的のタンクローリーは残されているのでしょうか?
更には懸念される感染者達の存在については?
気になる続きは次回にて!
それでは、次回をお楽しみに!