表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/86

(54) コンテナフェンス

読者の皆様、お待たせいたしました。

今回は、ボーンヤードの所有者が居ると思われるコンテナフェンスへと接近する話です。

それでは、第54話の始まりです。

こうした中、ここで気になるのが、ジャンクヤードの左側に置かれた大型コンテナの存在だ。

まるで何かを囲むかの様に隙間無く設置された、この貨物用大型コンテナは配置的に考えてみても防御用フェンスとして組まれたとしか思えず、もし廃車両の所有者が現在も生存しているのだとすれば、このコンテナフェンスエリア内に立て籠もっている可能性がかなり高いとみて間違い無いだろう。



「雄太さん。もしかしたら廃車両の所有者は、あのコンテナフェンスの向こう側にいるのかもしれませんね」



「う〜ん。そうだな。その可能性は高そうだな。しかしさあ、和馬君。あそこに所有者がいるとなると交渉についてはどうする?恐らく相手は、軽油をタダで譲ってくれはしないだろう」



「確かにそこなんですよね。問題は。う〜ん、どう交渉するかな?」



何とか、ここで軽油が手に入るかも知れないという可能性は出て来たものの、今度は所有者とどう交渉するかで和馬は悩む。

何しろ、今では危険なリスクを負わない事には入手が難しく、貴重な物資となった燃料を相手がそう簡単に見ず知らずの者にタダで譲るとはとても思えず、高確率で拒否されてしまう可能性が高い。

ならば、上手く相手との交渉を進める為の有力な手段として、何か手持ちの物資での物々交換が考えられる訳だが、ここで心配なのは、相手が一体どんな物資を交換条件として望み、尚且つ此方の足元をみて一方的に有利な条件を提示して来るのではないかという点だ。

一応、彼らは状況次第によっては相手に多少は有利な条件でも物々交換には応じるつもりではいるものの、何せ今、和馬達が交換に出せる物資と言えば食料か、もしくは銃のどちらかであり、特に身を守る為の必須アイテムである銃器を相手の望み通りに手放してしまうのは非常にまずいとも言える。

ならば、代わりの交換条件として食料を提示するしかない訳だが、その食料にしてみても、手持ちはせいぜい数日分といった心許ない量しか無く、それに対して相手が納得してくれるのかどうかは甚だ心配ではある。

勿論、和馬達にしてみてもこの先、手に入るのかどうかも分からない食料をここで一気に失ってしまう事はかなりの痛手ではあるが、他に燃料入手の当てが無い以上、ここは食料を手離してでも燃料を手に入れておかなければならないだろう。



また、ガス欠寸前状態のまま下手に感染者集団のど真ん中でエンストを起こす様な事態だけは絶対に避けなければならず、ここは不利な条件を提示されたとしても何とか交渉だけは試みてみるべきであろう。



「よしっ!決めた!雄太さん。燃料を譲って貰える様に俺は、これから相手と交渉してみます」



「うん。そうだな。やってみよう」



どうやら、雄太も同じ事を考えていたらしく、和馬の意見に賛成した後、コンテナフェンスへと向けて指を差した。



「あのコンテナフェンスの内側エリア内に所有者がいる可能性が高いのなら、ここは何とかしてでも中へ入らないとならない訳だな」



「そうですね。それには……。う〜ん、まずはもっと近づいてみるとしますか」



「そうだな」



ここで和馬は、ハンドルを左側へ切りながら微速でコンテナフェンス側へと車体を接近させ、トラックのフロント側をコンテナフェンス側面へと向ける形で停車させた。

今、少しでもコンテナフェンスエリア内の状況を知りたい雄太は、シートから身を乗り出し、並べられているコンテナの向こう側を確認しようとするが、これらのコンテナは4m近くの高さがある為、この位置からではどうしても状況を掴む事は出来なかった。



「あ〜、ここからじゃ全く向こう側が見えないなあ。このコンテナは、やっぱり邪魔だわ」



「ここの住人は、随分とコンテナを集めたんですねえ。これ一体、何のコンテナだろう?」



目の前のコンテナが気になる和馬が注意深く観察してみると、どうやらこれらのコンテナは貨物船へと荷を積載する際に使用されている大型コンテナの類いであり、こうして住居の周囲へとぐるりと設置しておく事で現在の危険極まりない外界から身を守る為の安全エリアを構築し、尚且つカモフラージュの役割も果たしてくれている様である。

更にこのコンテナは、高さ的にみても4m近くの高さがあり、仮に乗り越え様と試みてたとしてもよじ登る為の足掛かりになる様な物すら無く、これだけの高さがあれば感染者側に何か道具でも使う知恵でもない限りは、内側へと侵入する事は先ず無理であろう。



「なかなか良く考えられているな。これなら感染者対策もバッチリなんじゃないか」



「そうですね。確かにあれだけのコンテナでがっちりと隙間無く固められていますからね。まるっきり感染者に対しての鉄壁の守りって奴じゃないですか。でも雄太さん。俺、気になるんですけど、ここって一体何処から中に入るんですかね?見た所、入口らしき物が見当たらないですよ」



「そう言われてみれば、確かにそうだねえ。う〜ん、もしかしたら隠し扉的な物を何処かに作ってあるのか、もしくはコンテナに縄ばしごを掛けて、そこから出入りをしているのかも知れないな」



「縄ばしごか。なるほどね」



確かに雄太の言う様に縄ばしごを使って出入りをしているのだとしたら、わざわざコンテナに出入口を作る必要も無く、人の出入り程度であれば、それだけでも大丈夫な様にも思える。

しかし、ここで疑問なのは生活に必要な物資を手に入れた場合は一体何処から搬入しているのだろうか?その辺りを考えてみると、雄太の言う様にもしかしたら何処かに隠し扉があるのではないかと考えた和馬は、搬入用の扉か何かが設置されてはいないかコンテナ壁面をじっと見つめて観察をする。



「う〜ん。搬入口らしき物は見当たらないな。さてと、それならどうするかな。一応、ここの裏手の方も確認してみるか?」



「和馬君、それならトラック前面をコンテナフェンスぎりぎりまで近づけて、その後、キャビンの屋根へとよじ登って、そこからコンテナ上へと飛び移るってのはどうかな?」



「あ〜、なるほど。それ良いですね。よし、その案でいきますか」



「よし、決まりだな」



今、雄太が提案した方法は、明らかに「進入」では無く「侵入」である為、相手から警戒される事はもう確実ではあるが、それでも相手と直に顔を合わせ交渉する為には何よりも先ずコンテナフェンス上部から直接敷地内を確認してみるより他はない。



「それじゃ雄太さん、行きますよ」



ここで和馬は、トラックをコンテナへと近づける為、微速で接近を開始し、フロントバンパーがコンテナ側面へと当たるか当たらないかのぎりぎりの位置でブレーキを掛けサイドブレーキを引いた……。




最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

次回は、コンテナフェンスへと接近した和馬達の前に所有者が姿を現します。

それでは、次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ