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(52) 車中にて

読書の皆様、お待たせいたしました。

今回は、千葉市を目指している和馬達の車内での会話がメインの話となります。

それでは、どうぞ!

他に何もする事が無くなり、暇潰しにコルトM4カービンのマウントレール上にセッティングされた高輝度LEDフラッシュライトの作動確認をしていた雄太は、ふとセンターコンソール内のAM・FMラジオの存在に気付くと、手を伸ばして電源スイッチを入れ、選局ボタンを押し始めた。

しかし、選局を変えた所でラジオのスピーカーから聞こえて来る音といえば、番組パーソナリティーのトークでも気のきいた軽快な音楽でも無く、耳障りなノイズ音がただひたすら流れて来るばかりであった。



「ありゃ〜。AM・FM全局全滅かあ。やっぱり、放送局も無事では済まなかったんだな」



「恐らく、感染者による襲撃を受けて壊滅したのか、もしくは停電による影響をもろに受けているのか、そのどちらかでしょうね」



「あ〜、やれやれだな。ラジオ放送全局がこの有り様なら、もしここにテレビがあったとしても、ほぼ同じ様な状態という訳か」



「ええ。多分、同じでしょうね。あ〜あ、島流しのお陰でしばらくテレビを観る事が出来なかったというのに、結局もうこのまま見納めになってしまうのかあ」



北神島へと連れて行かれる前は、毎日、当たり前の様にテレビ放送を視聴し、今となっては案外、満喫した生活を送っていた事を思い出した和馬は、どこか寂しげな表情で呟いた。



「そうだ。そういえば雄太さん。放送の方は駄目だとしても、無線の方はどうです?ほら、さっき手に入れた無線機を使えば何か受信出来るんじゃ……」



「ああ、そうだった。そうだった。こいつがあったよなあ」



和馬に言われ、ウエストポーチ内に収納されていたハンディ型無線機の存在を思い出した雄太は、早速、ポーチのマジックテープを剥がし、中から黒い小型無線機を取り出した。

ここで雄太は、本体上部に取り付けられた電源スイッチ兼ボリュームダイヤルを回し、次に正面側のチャンネルスイッチを押してはみるが、残念ながら通信による音声は全く聞こえては来ず、代わりにスピーカーから聞こえて来るのは小さなノイズ音だけであった。



「あ〜、こいつも駄目かあ。どのチャンネルを選択しても何も入って来ない」



「雄太さん。これ、もしかして小出力型短距離無線機なのかも知れませんよ」



「短距離無線?という事は、これってトランシーバーの様な感じなのかな?」



「ええ。そんな所ですね。恐らく、電波が届く範囲もせいぜい500〜800m位といった所かな。いやあ〜、もしかしたら、今もアメリカ軍が展開中なのかどうか、これで解るかも知れないかと期待したんですけど駄目みたいですね」



「しかしさあ、この無線機による傍受が駄目だとしても、もし他の無線電波の届く範囲にアメリカ軍が展開していたのなら、ヘリコプターの墜落ポイントにもとっくにアメリカ軍の部隊が救助に来ている筈だよね?」



「う〜ん。確かにそれもそうですね。普通、あんな非常事態が発生したのなら、救難信号を出している筈なんだけど、あの時、墜落現場には救援部隊は来ていなかった。これは、もしかしたら、あのヘリコプターが無線電波のエリア外を飛行中だったのか?それとも、アメリカ軍そのものが、もう既に機能していないのか?」



「つまり、在日アメリカ軍は、もう作戦行動出来る状態では無いかも知れないという事か。う〜ん。なるほどなあ」



「まあ、無線電波が受信出来なかったのは残念ですけど、これはこれで俺達の通信用として使わせてもらいましょうよ」



「そうだな」



相変わらず、ノイズを発し続けている無線機のスイッチを切った雄太は、そのまま無線機をポーチ内へと収納し、同じくノイズ音しか出さないラジオのスイッチを切った和馬は、最初の目的地である木更津市の研究所を目指してアクセルを踏み込んだ……。


最後まで、読んで頂きましてありがとうございます。

第52話「車内にて」はいかがだったでしょうか。

次回の53話では、和馬達が謎の構造物を発見します。

では、次回をお楽しみに!

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