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(51) 接近戦4

読者の皆様、お待たせいたしました。

今回の話は、襲い掛かる感染者と雄太との間にて再び死闘が繰り広げられます。

一体、彼は身に降りかかるこの危機をどう切り抜けるのでしょうか?

それでは、第51話「接近戦4」の始まりです。

もはや、感染者による執拗な追跡から逃げ切る事自体、無理だと悟り、逆に相手を迎え撃つ事を決意した雄太は、立ち止まりつつ、掴んでいたプレートキャリアを投げ捨てると直ぐ様、振り向きながら右手に握ったベレッタM9を構える。



「はあっ、はあっ。くそっ!数が多いな!」



しきりに荒く呼吸を繰り返す雄太の目の前には、もう既に上半身を血塗れにした4人の感染者が迫って来ており、ここまで相手に接近されてしまっては、銃のアイアンサイトを見ながら正確に狙いを定めている余裕など全く残されてはいなかった。

ならば、今の雄太に残された最善の策は少しでも多くの弾丸を感染者の体へと撃ち込み、出来るだけ相手の接近を阻止する事のみであった。



「近づくんじゃねえ!くそっ!くそっ!くそおっ!」



雄太は、大声で叫び声を上げつつ、感染者に向かって必死にベレッタM9のトリガーを幾度も繰り返し引き続ける。

黒い銃口より放たれた9mmパラべラム弾は、迫り来る感染者の体を抉りながら幾つもの穴を穿ち、受けたダメージによって行動不能となった感染者達は銃痕から鮮血を噴き出させながら次々と道路上へと倒れてゆく。




『迫って来る感染者はあと1人!』




だが、残る最接近中の感染者へと銃口を向けトリガーを引いても来るべき筈の反動は無く、何故か銃は沈黙したままであった。




「ん?何だ?くそっ!よりにもよってこんな時に!」



出るべき筈の弾丸が出ない……。

この最悪ともいえる危機的状況に対し焦る雄太は、直ぐにその手に構えている銃を確認するが、残念ながらベレッタM9のスライドは大きく後退し、バレルはホールドオープンしたままの状態になっている。

これは、明らかにマガジン内の弾丸15発全弾を撃ち尽くしてしまった事を意味しており、迫り来る感染者へ対抗する為に必要な肝心の弾が、よりにもよってこのタイミングで無いという最悪ともいえる危機的状況へと雄太は追い込まれてしまっていた。

この状況下で、前方から血塗れ姿で走って来る感染者との距離を考えてみても、今更、ベレッタへのマガジン交換をする事も、更には肩へと掛けたコルトM4を手に取って構え直している余裕さえも、今の雄太にはもう既に残されてはいない。



「くそっ!ここまでかよ!」



血に塗れた両腕を大きく突き出し、目前へと迫って来る感染者の姿を睨みつけながら、自らの終わりを悟った雄太が吐き捨てる様に呟いたその時、突然、後方から数回の銃声が鳴り響き次の瞬間、感染者の体は大きく揺らぎ、そのまま前のめりとなる形で路上へと勢い良く倒れ込んでいった。



「えっ?」



この時、自分の死を覚悟し、もう絶対にどうにもならないと諦めていた雄太であったが、この絶体絶命の窮地を脱する幸運が突然、自分の身に訪れた事に対し驚きを隠せぬ様子で後ろを振り返った。

何とか命を落とさずに済んだ事を感謝しつつ、慌てて雄太が振り返った先にはACOGを覗き込んだ状態で銃口からガンスモークをたなびかせたコルトM4を構えて立つ和馬の姿があった。



「ふ〜う、無事で良かった。さあ、雄太さん行きましょう」



「ありがとう和馬君。本当に助かったよ。それにしても、すっかり銃の扱いに慣れたねえ」



「そうですか?」



「いやあ、今の射撃はお見事だったよ」



「前にやっていたサバゲーの経験によるおかげなのかな?まあ、いいや。さあ、雄太さん急ぎましょう」



「了解」


急ぎ、この場を離れトラックへと戻った和馬と雄太は、トラックのドアを勢い良く開けると先程、拾い上げ手に持っていたプレートキャリアとコルトM4を車内後部収納スペースへと放り込み、直ぐ様、車内へと乗り込んだ。

運転席へと座った和馬はクラッチを踏み込み、シフトレバーをバックギアへと入れるとアクセルを踏んで後退を開始し、接近して来る感染者達との距離を取り始める。




『よし、ここまで引き離せば大丈夫だな』




少しの間ではあるが、後退を続けた事により充分に感染者達を引き離した和馬は、徐々にアクセルを緩めつつ、今度は右側へとステアリングを切り方向転換を開始する。

切り返しを繰り返す事で、反対方向へと転換を終えたトラックの後方からは、叫び声を上げ続ける感染者達が怒濤のごとく迫って来ており、その様子をドアミラー越しにチラリと確認した和馬は早急にこの場を離れる為、ギアチェンジ後に強めにアクセルを踏み込む。

このまま、和馬はガソリンスタンド前の交差点を右に曲がると、国道410号線へと入り、素早くギアのシフトアップを続けながら、更にアクセルを踏み込んでゆく。

追跡して来る感染者集団を振り切り、更に加速を続けるトラックの車内では、すっかり憔悴しきった様子で助手席にへたり込んでいた雄太が和馬に話し掛ける。



「いやあ、今回は本当に危なかった。でも、俺達はあの状況を何とか切り抜けたんだよな」



「ええ。但しあの時はマジでヤバかったですけどね。全く一時は、俺達どうなるのかと……。まさか、もう最終手段まで行使する事になるとは思いませんでしたよ」



「でも、さあ。あの時、直ぐに決断して相手を殺らなければ、こっちが殺られていたからな」



「ええ。判断に迷い、ためらっていたら今頃、俺達ここには……」



「こうして今、この場には2人共いなかっただろうな。だから、あれは適切な判断だったし、迅速な決断が自分自身の命を救う事にも繋がった。まあ、今回はかなり危ない目にはあったけど、そのお陰と言ってはなんだが、代わりに今後の行動に必要不可欠なアイテムを手に入れる事が出来たよ」



雄太はそう言いながら、後部収納スペースへと放り込んでいたコルトM4カービンを再び手に取り、ハンドガードに取り付けられたマウントレールを手の平で軽く叩いた。

確かに随分と命懸けにはなってしまったものの、その代わりとして、この世界で自分達の身を守り生き残ってゆく為に必要な銃器を和馬達は手に入れる事ができた。

今回、和馬達が所有する事となった装備品は、コルトM4カービンを2丁にベレッタM9を4丁、更にM84スタングレネード、M67破片手榴弾、40mmグレネード弾、ケミカルライト、ハンディー型無線機、予備弾薬多数……。

基本的には、銃の類いを入手する事が非常に困難な日本国内において、偶然とはいえ、この様な強力な軍用銃火器をまとめて手に入れられたという事は、和馬達にとっては非常に幸運であったといえそうだ。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

さて、次回は千葉市へと向かう車内での話となります。

では次回をお楽しみに!

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