表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/86

(42) 墜落機体

読者の皆様お待たせいたしました。

今回は、道路上にて鎮座する謎の物体の正体が明らかになります。

それでは、どうぞ!

道路上に見える白い物体を確認すべく、雄太が首に掛けていた双眼鏡を手に取り、レンズを覗き込む。



「ええっ!こいつは驚いたな。和馬君。あれは、ヘリコプターだ。ヘリコプターが墜落している!」



「えっ?ヘリコプターですって!」



「和馬君。ほら、見てみるといい」



雄太から手渡された双眼鏡を受け取った和馬は、早速、レンズを覗き込み、確認を行う。




『本当だ。あれは、確かに墜落したヘリコプターだな。故障か何かで墜ちたんだろうか?』




「どうだい?和馬君。行ってみないか?」


ここで、雄太は、ヘリコプターの墜落地点まで接近してみる事を提案し、墜落地点周辺に脅威対象となる物が徘徊していない事を確認した和馬も、この提案に賛成する。



「そうですね。今の所、周りには感染者の姿も無いみたいですし、行ってみますか」



「よし、決まりだな」



和馬達は、すぐにトラックへと乗り、ガソリンスタンドを出発すると、ヘリコプターの墜落地点へと向かう。

県道長狭線を鴨川市街地方面へと進み、墜落地点へと近づくにつれて、路上には、地面への激突時に大きく破損したと思われる部品類が細かな金属片となって散乱しており、更には横倒しとなり、機体下部を露にした無残な事故機体の姿が間近に見えてくる。



「ああ〜。こいつは酷いな」



「雄太さん。路上は、金属片が凄いですよ。パンクには、気をつけて」



「そうだな。安全の為、ここで車を停めるとするか」



和馬からの警告もあり、タイヤをパンクさせてしまう危険性について警戒した雄太は、事故機体より少し離れた位置にトラックを停車させ、アイドリング状態のまま、運転席側のドアを開ける。



「和馬君。燃料の残りが心配ではあるけど、緊急時の出発に備えて一応、エンジンは掛けたままにしておくよ」



「そうですね。またエンジンが掛からなくなったりしたら困りますしね」



周囲を警戒しつつ、道路上へと降り立った2人は、緊急時に急発車できる様、エンジンをアイドリング状態にしたまま、トラックをその場に残し、事故機体へと向かって歩き出す。

今の所、道路上には特に脅威となる存在は見当たらず、道路周辺にも二、三軒の民家が点在する他は、建物も無く、田畑が広範囲に渡って広がるのみである。

念の為、マチェットを構え、警戒しつつ前進を続ける和馬達は、次第に事故機体へと近づいてゆく。



「遠くから見た時は、白い機体に見えたけれど、近づいて見てみると、色はグレーなんだなあ」



「あ〜、そうですねえ。しかし、それにしても、こうして間近で見ると、酷い有り様ですね」



「そうだねえ。それにしても乗員は、大丈夫なのかなあ?」



目の前でランディングギア(降着装置)を突き出し、横倒し状態となった機体は、墜落時の激しい衝撃を物語るかの様に上部のメインローターは折れ、キャノピーのウインドシールドはフレームから外れ、機外へと飛び出してしまっている。

ただし、酷い損傷の割には、墜落事故に付き物の事故火災は発生しておらず、どうやら燃料タンク破損による燃料漏れは起こしてはいない様だ。



「随分と酷い有り様だけど、こいつは一体、どこのヘリコプターなんだろう?ん?あれっ?待てよ。和馬君、あれ見てみろよ。何か書いてあるぞ」



「ああ、確かにテールブームの部分に何か書かれていますね。このマークはアメリカ軍の物だな」



「アメリカ軍だって?和馬君、このヘリコプターは、一体どこの所属なんだい?」



「う〜ん。機体にUS MARINSと書かれていますから、アメリカ海兵隊の所属機ですね。機種については、ベルUHー1みたいだな」



「しかし、さあ。こいつは、何で墜落したんだろうねえ。やっぱり故障かな」



「ええ。多分、そういったトラブルが発生したんでしょうね。それから、どうやら、この機体は、低空飛行中に墜ちたみたいですよ。ほら、機体自体が折れ曲がっていないし、炎上もしていない」



「確かにそうだね。もしも、高い高度で墜ちたのなら、もっと原型を留めてはいないだろうし、機体がバラバラになっていても、おかしくは無いものな。なあ、和馬君。このヘリコプターが低空飛行中に墜ちたのなら、機内には、まだ生き残っている乗員もいるんじゃないのか?」



「その可能性は、ありますね。まずは、中を調べてみましょう」



ここで、事故機体の前へと立った和馬達は、目の前に突き出しているランディングギアへと手を掛けると、そのまま、よじ登り、横倒しになった機体の胴体部分へと立ち上がる。

大きく開かれたままとなった胴体側面のスライドドアの上へと立ち、ぽっかりと開いた開口部へ向かって首を伸ばした和馬は、機内の状況を確認をする為、中を覗き込む。



「うわっ!こいつは、酷い!」



「どうした?和馬君。何か見つけたのか?」



機内を覗いた瞬間、大声を出した和馬に驚いた雄太は、何事かと思いつつ、後ろから首を伸ばす。



「あっ!これは……」



「雄太さん。この有り様では、流石に乗員は駄目なんじゃ……」



「ああ、これじゃあ、駄目だろうねえ」



思わず、顔をしかめながら機内を覗き込む和馬達の視線の先には、目をかっと見開いた状態の2名の兵士が口から血を流し、仰向けのまま、首が有らぬ方向へと折れ曲がった状態で倒れていた。

更に前方のコックピットルームでは、2名の操縦士が頭を垂れた状態でコックピットシートへと座っており、その内の1人は、首から肩にかけて深い傷を負ったらしく、吹き出した血液によって、上半身が血塗れの姿であった。



「多分、この有り様じゃ、全員死んでいる様だし、余り気は進まないけど、念の為、降りて機内を調べてみます」



「わかった。和馬君、降りる時は、足元に気をつけてな」



「了解です。じゃあ、先に行きます」



ここで、身を屈め、開口部の縁を掴んだ和馬は、足元への注意をしつつ、ゆっくりと慎重に機内へと降り始めた……。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

次回は墜落ヘリコプターの内部へと和馬が潜入します。

では、次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ