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(4) 仲間

皆様、今年も本作品を何卒、ご贔屓に!


さて、今回の話は、同じ境遇である5人の男女の顔合わせと女性に優しい和馬君のちょっといい話です。


それでは、始まり、始まり。

登りの小道を歩く和馬と雄太は、ログハウスのある場所へと戻ると、早速、例の3人がいるという建物へと向かう事にした。

太いパイン材の丸太を交差させ、組み上げて作られた、美しい外観のログハウスの前まで来た和馬と雄太は、正面に見える玄関前へと歩いてゆく。

木製の玄関ドアの前へと立った雄太は、軽く数回ノックをした後に、ドアを開けて、中へと入り、その後に続いて和馬も入ってゆく。

屋内へと入り、周りを見回してみると、部屋の間取りや造りは、和馬のいたログハウスとほぼ同じであり、先を行く雄太は、奥にあるリビングへとたどり着くと、部屋の前で立ち止まった。



「和馬君、ここに3人がいるよ」




雄太は、そう言うと、ドアが開かれたままのリビング内を指差す。

ちらりと、和馬が覗いた部屋内には、大きなブラックウォルナットのテーブルと椅子が置かれ、そこに座って、何やら話をしている3人の男女の姿があった。



「それじゃあ、ちょっと失礼しますよ」



軽く一言かけた後、リビング内に入って来た和馬と雄太の姿を見た3人は、まだ和馬とは、初対面である事に気付くと、軽く会釈をし、それに気付いた和馬も慌てた様に頭を下げる。

お互いが、軽い会釈を交わした後、頭を上げた和馬は、今度は相手の容姿が気になり、さり気無く観察を始める。


3人の男女の内、1人は男性で、歳は50代位といった所だろうか。

体型的には、小柄な人物で、黒縁眼鏡に白髪混じりの頭、そして口髭、その口髭にも、白髪が混ざっている。

痩せ形の体型で、顎は細く、細い目に薄い唇といった顔立ちから、やや神経質といった印象にも感じられる。

他の2人については、どちらも女性であり、1人は、7、8歳位に見えるショートカットの髪型の女の子、もう1人は、20代後半に見える、長い黒髪とやや濃い目な眉毛が特徴の整った顔立ちの女性だ。

ここで、和馬と3人の男女の間に立っている雄太は、お互いが初対面だという事もあって、お互いの自己紹介をする様に勧めてくる。


「え〜と、まあ、お互いが初対面だという事もあるんで、お決まりではありますけど、自己紹介でもやりましょうか。俺自身の紹介は、前に済ませてあるんですけど、一応、もう一度という事で。自分の名前は川島雄太、歳は25歳です。この場所には、皆さんと同じく、訳もわからず連れて来られました。これから、どうなるのかは、わかりませんが、よろしくお願いします。え〜と、それじゃあ、次は和馬君、お願いします」


雄太の自己紹介の後、和馬が自己紹介を行い、続いて、3人の男女も、それぞれ自己紹介を済ませた事で、次の様な事がわかった。

まず、男性の名前は、大島純一朗といい、年齢は52歳、職業は、専業農家を営む農業従事者である。

次に、2人の女性の内、1人は、名前を沢山礼菜といい、年齢は28歳、職業は保育士である。

少しふっくらとした顔立ちをし、どこか、優しそうな雰囲気を持つ礼菜の腕を両手でしっかりと抱きしめている女の子、彼女の名前は、野島麻美といい、年齢は7歳、小学校1年生である。

以前、麻美が幼稚園に通っていた頃は、礼菜が担任しているクラスの園児だったらしく、礼菜と麻美は、その頃からの顔見知りである。

恐らく、今は、不安でたまらないのか、礼菜の腕を決して離そうとはしない麻美の姿を見て、和馬は少し微笑みながら、小さく手を振ると、麻美も同じ様に小さく手を振り返してくる。




『こんな小さな女の子まで、ここに連れて来られているのか。全く何もわからず、不安だろうに。くそっ、連中め、酷い事をしやがる』




もっともらしい事を言って騙した上に、5人もの人間を見ず知らずの土地に連れて行って、そのまま放置するという、政府の連中のやり方に和馬は憤りを感じずには、いられなかった。


こうして、お互いの自己紹介は終了し、次に5人は、この場所に連れて来られる迄の経緯について、話し始めたが、それについては、全員共に同じであり、特に新しい情報は何も得られ無かった。

結局、何もわからず、話も特に進展しない事から、次第に会話の内容は、各自が疑問に思っている事柄へと移ってゆく。



「俺達、ウイルスの陽性反応が出た事で、あの研究所へ行った訳ですよね。あの時は、まだ疑いの段階であって、感染した事が確定した訳では、無かったけれど、こんな場所に連れて来られたという事は、本当は、もう感染した事が確定していて、今、俺達は、隔離状態にあるんじゃないですかね」



「えっ!」



今の和馬の言葉に、麻美を除く3人は、思わず、ぎょっとした顔になり、眉をひそめたまま、和馬の顔をじっと見る。

「隔離」という言葉に対し、明らかに動揺した大島が、慌てた様子で和馬に問う。



「ちょっ、ちょっと、待ってくれ、和馬君。隔離って、一体どういう事だ?」



「あ、いえ、もしもですよ。俺達の感染が確定しているのだとしたら、相手も感染する事を恐れて、こんな場所に隔離するとは思いませんか?」



「う〜ん、まあ、感染が確定しているのであれば、それもあり得ない話では無いけどな。その昔、病気の患者を集めて、隔離していた島もあったと聞くしな。しかし、何も説明もせずに、いきなり隔離なんて、するものかねえ」



「いえ、大島さん。俺達を騙して睡眠薬を注射する様な奴らですからね。わかりませんよ」



ここで、和馬と大島の会話を横で聞いていた雄太も話に加わってくる。



「という事は、俺達は、もう既に隔離されていて、更に、ここが島である可能性が高いという事なのかい?」



「いえ、雄太さん。まだ、ここが島なのか、どうかはわかりませんけど、それも可能性の1つとして、考えておいた方がいいとは思いますよ」



3人が、疑問点について意見を交わす中、唇と顎に指先を当てたまま、何やら考え事をしていた礼菜が、和馬に疑問を投げ掛ける。



「ねえ、ちょっと待って、和馬君。今、話していた隔離について、気になるんだけど、何か、おかしいのよね。ほら、ここには、医者もいないし、治療する為に必要な医療設備も見当たら無いわ。もしも、私達が病気に感染しているのなら、絶対に治療しようとすると思うのだけど」


確かに、礼菜の言う通りである。

もしも、この場所が、隔離施設だというのなら、治療する事も考えて医療スタッフを常駐させ、医療設備も整えておく筈だ。

しかし、この場所には、医療スタッフがいないばかりか、医療設備すら何も無く、やはり何かおかしい。

この礼菜の疑問点には、和馬も同意する。



「礼菜さんの言う事も一理ありますね。確かに、ここが隔離施設なのだとしたら、当然、医療スタッフは置くだろうし、設備だってある筈ですよね。もし、感染しているのだとしたら、病気のまま、放っておかれたんじゃ、見殺しにされたのと変わらないし、それじゃあ、余りに非人道的過ぎますからね」


「なる程ね。だとしたら、ここは、一体、何の施設何だろう?我々以外に人が誰もいない事も気になるし、そもそも、相手の目的とは何だ?」



ここで、大島は、疑問を投げ掛けた後、4人の顔を見るが、この質問には、皆、考え込んでおり、流石に答えが出せないでいる。



「わからない…。それが答えですね」



やっと返ってきた、雄太の答えに対し、大島も相槌を打つ。



「う〜ん。やっぱり、そうだよな。誰もわからないよな」



「う〜ん」



ここで、両腕を組んだ和馬が大きな溜め息をつき、何も意見が出なくなった5人の間に何やら重苦しい空気が流れ始めていた時、思わず拍子抜けする様な、誰かの空腹を知らせる音が聞こえてくる。



「あっ!お腹の鳴る音だ!もしかして礼菜先生?」



相変わらず、礼菜の腕を抱きしめていた麻美が礼菜の顔を見ると、何やら、頬を赤らめている。



「あのう、ごめんなさい。どうも、お腹が空いちゃったみたいで」



顔を赤くしながら、恥ずかしがっている礼菜を見て、和馬も同意し答える。



「そういえば、腹が減りましたね。皆さんは、どうです?」



「私も減ったなあ。朝から何も食べてないし」



「不安でもさあ、腹はちゃんと減るんだよなあ。そういえば、向こう側にキッチンがあったけど、もしかしたら、食べ物があるかも」



「それじゃ、見てみるか」ここで、5人は、今夜の夕食となる食材を探す為に、キッチンへと行ってみる事にした。

5人が、中へと入って行ったキッチンは、広々としたダイニングキッチンとなっており、コンロ、シンクの他にオーブンレンジ、大型冷蔵庫、ダイニングテーブル、椅子などが備え付けられている。

ここで、真っ先に気になるのが、冷蔵庫の存在で、早速、冷蔵庫の前へと立った大島が扉を開いてみると、中には良く冷えたワインやジュース類のボトルがぎっしりと入っており、更に冷凍庫側には、袋入りの冷凍食品が多めに収納されている。

また、この冷蔵庫の側には、大きな戸棚が置かれており、何が収納されているのかが気になった礼菜が、扉を開けてみると、各棚一面に缶詰類が積み重ねられ、更に戸棚の隣に積まれた段ボール箱の中にも、缶詰がぎっしりと詰め込まれていた。



「サバ缶にサンマ缶に牛大和煮缶。あらあら、色んな缶詰があるわね」



段ボール箱の中から、幾つかの缶詰を取り出した礼菜が、箱の上へと缶詰を置いて見比べ始め、その隣では、和馬が両手に缶詰を持って、何やら品定めをしている。



「缶詰かあ。腹が減っているし、食べちゃおうかなあ」



「でも、和馬君。勝手に食べて大丈夫なのなしら?」



「さあ、どうですかね。食べていいのかどうかは、わかりませんけど、今、これを食べておかないと、今夜は晩メシ抜きって事になりますよ」



「う〜ん。それも困るわね。もう、お腹空いちゃってるし」



「俺は、やっぱり食べちゃおうかな」



並べられた缶詰を前にして話をしている和馬と礼菜の両隣には、雄太と大島が立っており、やはり気になるのか、缶詰をじっと見つめている。



「ああ〜、腹が減ったな。もし、誰かに何か言われたら、誤ってお金を払うとして、やっぱり、私も食べるとするかな」



「その前に、文句を言ってくる誰かがいればいいんですけどね。よしっ、決めた。大島さん、俺も食べますよ」



「それなら、私も!」



ここからの4人の行動は速く、それぞれ、幾つかの缶詰を手に取った後、ダイニングテーブルの上へと並べてゆく。

更に、その並びの中には、ジュース、お茶類のボトルも追加され、テーブルの上は、さながら非常用食料の見本市の様な状態になった。

ここで、5人はそれぞれ席へと着き、少し早目の夕食をとる事にした。

4人、それぞれが缶詰の蓋を開けて、早速、食べ始める中、何故か麻美だけが、缶詰に全く手をつけては、いない事に和馬は気付く。



「麻美ちゃん、お腹空いていないのかい?」



「ううん」



和馬の問いかけに麻美は首を横に振る。



「じゃあ、缶詰が苦手かい?」



「ううん。麻美ね、お魚、あんまり好きじゃないの」



「そうかあ。魚が苦手なのかあ」



空腹ではあるのに、食事に全く手を付けられずにいる麻美の表情は、とても悲しげだ。

何しろ、テーブルの上には、魚嫌いの麻美が、がっかりしてしまう程、魚の缶詰ばかりが並べられているのだ。

これでは、魚嫌いの人にとっては辛いとしか、いい様が無いだろう。



「でも、残すと怒られちゃうから…」



小さな、悲しげな声で呟くと麻美はうつむいた。

しょんぼりとしている麻美を見ながら、和馬は以前、自分も学校給食で苦手な食べ物を食べ終わるまで残された、嫌な経験を思い出した。




『本当なら、食べる事って楽しい筈なのに、こんなのって辛いよな。よし、それなら、いっちょ俺が何とかしてみるか』




「麻美ちゃん、俺に考えがあるから、ちょっと待っててね」



ここで、立ち上がった和馬は、麻美にそう言い残すと、先程の戸棚へと歩いて行き、収納されている缶詰を手に取りながら、何やら選び出し始めた。

やがて、探していた、お目当ての缶詰や瓶詰めを手に持つとキッチン台の所へと行き、用意した、まな板の上へそれらを並べてゆく。

今、まな板の上は、ウインナー缶やマッシュルーム缶、ケチャップ瓶が置かれ、その中から和馬はウインナー缶を手に取ると開封して中身を取り出し、用意した包丁でウインナーソーセージを手早く刻み始めた。

次に、和馬は戸棚からフライパンを取り出し、刻んだウインナーソーセージとスライスマッシュルームを中へと入れると、ガスコンロの火へとかけ、手早く炒め始めた。

和馬は、菜箸を使いながら、もう片方の手による、手慣れたフライパンさばきで材料に火を通し、最後にケチャップで味をつけると火を止めた。

用意した小皿に、お手製ウインナーソーセージ炒めを盛り付けると、先程、別に見つけておいたパンケーキの缶詰と一緒に麻美の前へとそっと置いた。



「これなら、大丈夫かな?」



麻美は、手際よく作られた、和馬お手製料理の1品を前にして、目を丸くしながら、和馬を見ている。



「いいの?お兄ちゃん」



「ああ、いいよ。本当なら、インゲン豆やら、ピーマンを入れた方が美味しいし、パスタがあれば、絡めたい所なんだけど、見当たら無いから、取り敢えずは、これで勘弁ね」



「あのね、お兄ちゃん。麻美がお魚、食べ無いのを怒ったりしないの?」



「麻美ちゃん、そんなの気にしなくても良いんだよ。今は、魚が苦手でも、少しずつ慣れていけば良いんだし、いずれは好みも変わって、食べれる様になるさ。さあ、お嬢さん、気にしないで、冷めない内に召し上がれ」



「ありがとう、お兄ちゃん」



「どういたしまして」



やっと、笑顔を見せながら、料理を食べ始めた麻美を見て、和馬は何やら満足気な表情を浮かべる。

その表情を横で見ていた礼菜が、にやっと笑いながら和馬に言う。



「和馬くう〜ん。君、いいとこ、あるわね」



「え?いや別に、それ程でも」



顔を赤くし、若干、照れている和馬に対し、更に礼菜が茶化す。



「和馬くう〜ん。君、麻美ちゃんのハートをしっかり掴んだわよ」



「ええっ?そんな事ありませんよ」



「ふふふっ。照れない。照れない」



和馬と礼菜のやり取りを横で見ながら、料理を美味しそう食べていた麻美が、もじもじしながら、和馬にこんな事を言ってくる。



「麻美は、和馬お兄ちゃんの事、大好きになったよ」



「ほ〜ら、ほら、和馬くう〜ん。麻美ちゃんが大好きだって」



「もう!礼菜さん。俺をからかって!まいったなあ」



赤面し、慌てる和馬を見て、4人はどっと笑う。

こうして、和やかな雰囲気のまま、食事を続け、食後に礼菜の入れてくれたコーヒーを飲みながら、皆がくつろいでいた時、突然、和馬がこんな提案をしてきた。



「明日は、みんなで、ここの施設一帯を調べてみませんか?」



今の和馬の提案に雄太も賛成する。



「そうだな。俺も調べたいと思っていたんだ。もしかすると、誰か他の人も見つかるかも知れないしね。早速、明日、調べてみよう」



「そうね。あとは、この場所が、一体どこなのかを知るのと、連絡を取る為の手段を見つけておきたいわね」



「礼菜さんの言う通りだな。その辺りについても調べておかないとな」



礼菜の意見に大島が賛成したその時、急に麻美が、礼菜の腕を強く抱きしめ、驚いた礼菜は、麻美の小さな肩に手を当てながら、優しく尋ねた。



「どうしたの?麻美ちゃん」



「礼菜先生。麻美、おうちに帰りたい。お母さん、お父さんに会いたい」



じっと、礼菜を見つめている麻美の顔は、もう今にも、泣き出しそうな表情だ。

そんな、麻美の肩を礼菜は、そっと優しく抱きよせる。



「先生も家に帰りたいわ。だって、先生にも、両親がいるもの。でもね、大丈夫よ。麻美ちゃん。必ず、おうちに帰れるから」



麻美は、円らな瞳で礼菜をじっと見つめる。



「礼菜先生、本当?」



「ええ、麻美ちゃんの為にも、みんな、頑張るって」



礼菜の言葉に安心した麻美は、顔を礼菜の胸へとうずめ、礼菜も、甘えてくる麻美の頭の上にそっと手を置く。



「礼菜先生」



「うん、うん。大丈夫よ。明日は、みんなで、ここを調べましょう。そして、みんな一緒に家へと帰るの」



礼菜の言葉に4人も賛成する。



「そうですね。こんな時こそ、みんなで力を合わせましょう」



5人の意見は一致し、明日は一日かけて、この施設一帯を調べてみる事になった。

今の話で不安が少しだけ解消した事により、ほっとしたのか、口に手を当てて、欠伸をしている麻美を見て、礼菜が優しく尋ねる。



「麻美ちゃん、眠い?」


「うん」



眠そうに目を擦る麻美を見つめていた礼菜が、何気に、壁に掛けられた時計へと目をやると、針は、もう既に9時を差している。



「あら、もう、こんな時間ね。皆さん、そろそろ休みませんか?」



「そうですね。でも、あれだけ眠らされたというのに、また眠くなるなんて、おかしな話ですよね」



「ふふふっ。それもそうね。あんなに眠ったのにね」



和馬の言葉を聞いて、礼菜が思わず笑う。

すると、礼菜に抱きついていた麻美が顔を上げて、こんな事を聞いてくる。



「礼菜先生、麻美も一緒に寝てもいい?」



「ええ、もちろん、良いわよ」



礼菜は、微笑みながら、優しく麻美の頭を撫でる。

どうやら、今夜は礼菜と麻美は、一緒の部屋で眠る事となり、他の3人も、それぞれ各部屋へと戻って休む事となった。

ダイニングキッチンを出て、自分達のいたログハウスへと戻ろうとしていた和馬と雄太を見た大島が、ここで彼らを引き留める。



「君達も、ここで休まないか?部屋はまだあるし、みんな、固まっていた方が何かと安心だろう」



「それも、そうだなあ。和馬君はどうだい?」



「そうですねえ。今夜はここで休むとしますか」



大島の言葉に和馬と雄太も頷く。



「じゃあ、俺、ちょっと戸締まりをしてきます」



玄関へと向かった和馬が玄関ドアをロックして戸締まりを済ませると、和馬、雄太、大島の3人は、それぞれの部屋で休む事にした。



「それでは、また明日」



「皆さん、おやすみなさい」



照明を点け、部屋へと入っていった和馬は、ドアを静かに閉めて、ベッドの前へと立つと、流石に疲れていたのか、そのままベッドの上へと倒れ込んだ。

気だるい体を寝転がせ、そのまま、仰向けになると、天井の木目模様を見つめながら、和馬は両親の事を考える。




『まさか、こんな事になってしまうとはなあ。

今頃、父さんも母さんも心配しているだろうなあ。これから、俺は、一体どうなるのだろう』




今、自分が置かれた状況、更には、これから先の事など、頭に思い浮かぶ不安の種は尽きる事がない。




『いや、いや。マイナス方向にばかり考えていても仕方がないな。そうさ、明日にはきっと…。そう、明日にはきっと事態が好転するさ。そうでも思わないと、やってられないしな。ん?そういえば、何だか、窓の方から音がするな』




外では、海からの風が吹き始めたのだろう。

ガラス窓が風で揺れて音をたてている。


和馬は、ガラス窓がたてる音を聞きながら、いつしか深い眠りへと落ちていった…。

最後迄、読んで頂きましてありがとうございます。

さて、次回は、いよいよ和馬達5人が施設内の探索を開始します。

果たして、何か新たな発見はあるのでしょうか?

更に、脱出への望みは?

次回、第5話「施設」お楽しみに!

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