森の家
夏の合宿で学年全員で、森の家に行くことになった。
森の家とは、自然と触れ合って遊んだり、学んだりする場所である。
例えば、冬ならスノーシューといって、スキーの短いヴァージョンで雪の中を歩いたりするのである。
「私達、何するんだろうね?」
バスが到着し、彼女が不安そうに言う。
それに対し、俺は平然と言う。
「自然と遊ぶなら、狭い教室で過ごすよりも、楽しみだ。お前は勉強していたいのか?」
「そんなわけないわよ!! 私だって…、その、何するのか気になって聞いただけなんだから」
「そうか。よし、行こう」
手を取られて、バスから降りる。
荷物を手に持ち、森の家の玄関前に並ぶ。
「よろしくお願いいたします」
引率の先生が挨拶したので、俺達も挨拶を口にする。
「私、森の家の支配人の木村と申します。よろしくお願いいたします」
硬派なイメージの男性が挨拶してくる。
見た目は怖そうな感じだけれども、俺は平気だった。
どちらかというと、頭の回転が速そうなタイプで、兄貴分みたいな感じといえばいいだろうか。
「荷物はコテージに運んでください!! よろしくお願いいたします」
木村さんの指示で、皆、動き出す。
バスの中は涼しくて快適だったが、外は少し暑く感じる。
しかし地元よりも山の中にあるから、爽やかな風がふいてくる。
鳥の鳴き声も明るく、出迎えられているのが分かる。
「では、早速、そば打ちをしましょう」
木村さんが手を1つ叩き、言ってくる。
俺はそばを作るのかと思い、彼女を肘でつつく。
「お前、大丈夫か?」
「何が?」
「その、そばなんて作ったことがないよな」
「そうだね。でも楽しそう!!」
場所を移動し、広間のところへ集まる。
和紙のデザインされた灯籠や、モニュメントがあり、柔らかな感じを受ける。
それぞれの班に分かれることになり、俺と彼女はばらばらだった。
桶みたいなものに粉がのっており、1班につき1人、スタッフがつき、やり方を教えてくれる。
「まずはそば粉を水でなめらかにしていかないと」
言われた通り、俺はそば粉に触れる。
まるでさらさらした砂漠みたいな感じで、気持ちいいと思う。
そのうち、水を加えていくと、固まりだし、練っていく。
「そこはこうしたほうがいいよ」
スタッフに言われ、別の人と交代する。
俺は彼女のほうを見ると、真剣な面持ちでそば打ちをしていた。
こっちを見ろと念を送ると、ふと振り返ってきた。、
おーいと、手を振ってきたので、俺も手を振り返す。
楽しんでいるようなので、放っておこうと決める。
「さて、丸めたら、次は伸ばします」
板と棒が用意され、皆、初体験のことに緊張する。
俺は誰も動かないので、率先して
「どうやればいいんですか?」
と質問する。
「なるべく破けないように、伸ばして…」
スタッフが手を貸してくれ、作業を進めていく。
そば粉は妖怪ぬりかべみたいに広がり、綺麗なほうじゃないかと、ふんと鼻を鳴らす。
「じゃあ包丁で、切りましょう」
包丁で切る役目は俺は辞退したのだが、何故か俺にやれとおしつけてくるのだった。
全くと思いつつ、包丁を使い、そばを切っていく。
なるべく細く、細くと意識し、切っていく。
「よくできました。あと茹でるのは、私達がやるので」
スタッフがそばを回収し、奥へ行ってしまう。
そば、楽しみだなと腰に手を当てていると、彼女が親指を立ててくる。
どうやら彼女の班も納得のいくものができたらしい。
「茹で上がりましたよ!!」
スタッフが手にざるを持ってきて、そばを置いていく。
その素晴らしさといったら。
そばつゆが届いたので、俺はごくりと唾を飲む。
木村さんが手を叩き、皆の注目を集める。
「皆さん、自分で作ったそばです。努力して手に入れるものは、何でも美味しい。普段と違うそばを五感で楽しんでください」
その言葉が終わると、
「いただきます」
とそれぞれのスタッフが言う。
俺もそばを口に入れると、目を丸くする。
うちで茹でて食べるそばとは全然、違って、風味があり、しっかりしたのど越しだった。
皆、オーケストラのように、すする音が響く。
大半は笑顔で、食べながら喋っている。
俺の彼女も満足そうで、一生懸命、そばをすすっている。
俺はなるべく五感を楽しみたいので、ゆっくりと食べていると、もう食べ終わった人達がいた。
しかし気にせす、マイペースを通すと、
「あー、美味しいかった!!」
俺は心の底から言い、伸びをする。
お腹が満たされると、眠くなるのだが、木村さんが「次は少し休んでから、外に出ましょう」
と告げたのだった。
何をするんだろうと、わくわくする俺。
彼女がこそっとこちらにやって来て、腕を叩いてくる。
「そば、美味しかったね」
「そうだな。味が全然、違う」
「うん!! 次も楽しみだね」
「おう」
俺と彼女は笑うと、リラックスしたのだった。




