3 拠点への道のり
先ほどの出来事を受けて、私たちはしばらく無言のまま歩き続けていた。
未知の生物との交流が楽ではないことは覚悟の上だが、あからさまに拒絶されると心にくるものがある。
いつもは呑気な先輩も、さっきのは効いたのか、虚ろな目で遠くを見ていた。
その後、何とか気を持ち直して、次こそはと意気込んだのだが、変わらずニンゲンの調査は困難を極めた。
最初に、対話は後ほどにして観察に専念しようと方針を固めてみたのだが、対面から歩いてくるニンゲンをじっと見ていると、じろじろ見られるのが不気味だったのか、すれ違う前に逃げるような足取りで横道に行ってしまった。
確かに、私も逆の立場なら見知らぬ者にじっと見つめられると不審に思うだろうと反省した。
なので、物陰に隠れて観察をしてみようかと思ったが、そうしている自分を想像すると、いよいよ怪しい存在に思えたのでやめておいた。
もういっそ観察も諦め、ひとまず拠点へと急ごうとしたが、ワープ直後と打って変わって多くのニンゲンと出会ってしまう。
目に入ると見ようとしなくても見てしまう。
何せほとんど知見のない生物が間近にいるのだから反応してしまうのだ。
何事もないようにしているつもりでも、明らかに挙動不審な私たちは怪しまれ、まともにニンゲンとすれ違うことすらできないでいた。
避けられ続けて5人目というところで、耐え切れず先輩に助けを求める。
「どうしますこれ……」
先輩は「うーん」と考え込む。
さすがにこれ以上悪目立ちするのはマズイ気がする。
「もうニンゲンを避けて行くしかないかな」
かくして、積極的に接触すべき対象から逃げ回ることになってしまった私たちは、ニンゲンを見つけ次第迂回するという苦肉の策で目的地に進んでいった。
しかし、ニンゲンを避けても、ニンゲンの世界からは逃げられない。
迂回しての道中は、ニンゲン以外のものにも苦しめられた。
正面からすごいスピードでやってきた箱型の機械に大きな音を鳴らされたり、紐で拘束された危険生物と思われる4足歩行の生物に吠えられたりと散々な目にあった。
その後もニンゲンやニンゲン世界に悩まされたが、進路を変えながら進み続け、何とか目的地である私たちの拠点”あさひコーポ”に到着した。
ずいぶん時間がかかったので、空の色が青から橙色に変化していた。
「そういえば、空は地球の動きに合わせて模様を変えるんだっけ」
なんてことを考えながら空を見上げる。
優しい明るさが哀愁を誘い、色々ありすぎた道中を思い起こさせる。
公園でわいわいとはしゃいでいたのがずいぶん昔のように感じた。
「やっと着きましたね先輩……」
疲れと安堵の気持ちが口から洩れる。
「長かったなぁ……」
先輩も大分疲弊しているようで、ため息交じりに答えた。
あさひコーポは横長の集合住宅でその1室が私たちの拠点となる。
早速その部屋へ行きたいところだが、最後の関門が存在する。
部屋へ入るには鍵が必要で、その鍵はこの施設の管理人が持っているので、挨拶と鍵の受け取りが必要となる。
つまり、その管理人との接触および対話が必要だ。
「あと一仕事頑張りますか」
先輩に鼓舞され管理人のもとへ向かう。
ニンゲンとの接触、それも対話が必要とあっては、あの嫌な出来事が脳裏に浮かぶ。
また、キモイだのナンパがどうだなどどならなければいいがと願わずにはいられなかった。




