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70)【閑話】嫁に逃げられた夫状態の紅龍

 ※ディディが眠りについていた頃の話です

 ※ガルー達がショタです


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 ディディが茨鬼の能力を受け、その回復の為に眠り続ける日々。

 紅龍は憔悴していた。

 ディディの傍につきっきりで居たが、彼女が目覚める気配はない。


「ディディ……」


 呼びかける紅龍の周囲では、ガルーとサングレ、アリアが嘆き悲しんでいる。

 とりわけサングレの声は凄まじく、メソメソメソメソと泣いてばかりだ。


「うわぁん、シスター! 起きてよぉ! うわぁああああああぁぁぁああああん!」


 サングレの声に隠れるようにして、アリアも泣いていたし、ガルーは唇を強く噛み締めて血を滲ませていた。


「グスッ……」

「ディディ……」


 そんな嫁に逃げられて子供を抱えた夫状態の紅龍は、これでは駄目だと考えた。

 全員が食事も睡眠もマトモにとらず、ディディの棺の前で嘆いているのだ。

 これではディディが目覚めた時に彼女に心配をかけてしまうだろう。

 そこで紅龍は立ち上がった。



「オイ! ガキども! メシにするゾ!」



 しかしチビーズは首を振る。

 ガルー、サングレ、アリアが反論してきた。


「ハラへってねぇ」

「シスターがめざめないのに、ごはんなんてたべてられないよ!」

「そうだ。なによりも、わたしのつまのそばにいたい」


 そんなチビーズの頭を順番に殴る。

 ガン、ゴン、ガンと小気味よい音がした。

 紅龍は頭を抱えている子供達を前に拳を握りしめたまま怒鳴りつける。


「馬鹿野郎! ワタシだって、オマエらみたいなクソガキの世話とかしたくねーんだヨ! でもオマエらに何かあるとディディが心配するだろうガ! ちったぁ頭使えガキどもガ!」


 そう叫ぶと、紅龍が背負っていた茨鬼(赤子)が、泣きだした。


「ふにゃああ~! ふにゃあああ~!!」


 そんな赤子にまで紅龍は鬼の形相で激昂する。


「ウルセー赤! 泣くな! テメーの所為でディディが眠れる森の美女状態になってんだヨ! ディディにワビ入れるまでは殺さねーからナ!」



 そんなわけで紅龍は乳飲み子を抱えた上に、チビーズまで置いてかれた状態だったが、子供達を育てる為に奮起するのだった。


 まずは食事作りだと、教会の厨房で中華鍋を軽々と振るう。

 それをガルー、サングレ、アリアは恐る恐る見ていた。


「オッサン、メシつくれんのかよ……」

「マフィアのおじさんが、おなべふってる……だいじょうぶかな……」

「シスター・ディディよりかは、てぎわがいいな……」


 ジト目の子供達に、紅龍は赤子(茨鬼)を背負ったまま叱りつけた。


「ウルセー! オッサン呼ばわりするんじゃねェ! 殺すゾ! ワタシ、これでも調理師免許持ってんだヨ! クソッ、マフィア引退したら店でも構えようと思ったのに、ガキどものメシ役で発揮するとはヨー!」


 そうして手早くチャーハンを作り終えると、今度は茨鬼が泣きだした。


「ふにゃぁああ! ふにゃああぁああああ!」

「だ――ッ! オムツはさっき交換しただろうガ! 次は何だヨ!? ミルクカ!?」


 チビーズに食事をとらせている間に、今度は人肌にしたミルクを茨鬼に飲ませる。

 そうしていると、サングレがポロリと泣きだした。


 自分の料理には絶対の自信がある紅龍だったが、まさか口に合わなかったのか?

 しかしサングレは首を振る。


「うぅ、シスターがタイヘンなことになってるのに、ゴハンがおいしいよう……。シスターにも、たべさせてあげたいよお。えぇええん! うええええん!」


 泣き虫のサングレはディディを想って泣きっぱなしだ。

 それを見たアリアがチャーハンを持ってディディの元に近づく。

 と、彼女の口にアツアツのチャーハンを入れ出した。モリモリと……。


「ゴフォッ! オベッ! ゴファオラァッ!」


 ディディが危ない感じに咽ていたので(でも目は覚まさない)紅龍はアリアをぶん殴って止める。


「テメー! ナニしてんだヨ! ディディがオッサンみたいな咳きこみ方してんだロ!」


 しかしアリアは涙目でチャーハンを口に詰め込もうとし続けた。


「シスター・ディディは、いつもわたしたちにたべさせてばかりだった……。こんなうまいもの、きっとかのじょは、たべたことがない……」


 しんみりとする空気の中、ガルーは空になった皿を流し場に持って行くと、呟いた。


「……なら、そいつのめがさめたとき、うまいモンをたらふく、くわせてやらねーとな」


 そう口にして皿を洗うガルー。


 ガルーはディディが目覚めるのを確信しているようだった。

 そんな彼に全員が意識を新たにする。


 いつかきっと彼女は目覚める。


 そして、色気のない振る舞いで皆を驚かせながらも、周囲を魅了してゆくのだ。

 懸命に生きている彼女は、誰よりも美しく魅力的なのだから。


 そう考えた紅龍は、フッと微笑みながら子供達を見守るのだった。

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― 新着の感想 ―
お、ぉおお父さん!嫁に逃げられて悲しみにくれながらも息子たち(嫁)のために頑張る健気なお父さんだ!!すごい!いつもの姿では考えられないくらい家庭的だ!!茨鬼くんを気にかけてるのはすごく優しいし素敵なん…
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