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2)推し

「マフィアクター……? あの伝説のクソ乙女ゲーと言われた、マフィアクター?」


 そしてチャイナ服の男は頷いた。


「クソゲーとか本当のこと言うナ。そうだヨ。オマエが転生したの、社畜のオマエが死ぬ寸前までヤッてたクソゲー【マフィアクター】の中だヨ」


 へ~……転生って、本当にあるんだ~……って、ちょ、まっ、えっ!? 


「えっ!? あ、あの! 私、死んだんですか!? どうして!? まだアラサーなのに!」


 重要な情報が雑に挟み込まれてない!? とチャイナ男に縋りつくと、男は冷静に腕を振り払いつつ、呆れたように応えた。


「だってオマエ、難易度最凶のワタシルートを制覇する為に、仕事でデスマーチしながら睡眠時間を削ってエナドリ主食にしてたダロ。常識的に考えて死ぬっつーノ」


 ワタシルート!? そう言われ、私はチャイナ男に見覚えがあったので、震えながら名前を呼ぶ。


「も、もしかして貴方は……、マフィアクター最凶難易度のキャラっていうかラスボスで私の最推しの(ウー) 紅龍(ホンロン)様!?」

 叫ぶ私に紅龍様は頷いた。


「そうだヨ。【マフィアクター】の世界の裏社会のボスであり、全キャラ落とさねーと攻略ルートが出てこねー、隠しキャラの紅龍様だヨ。難易度がゴミな所為で、ほとんど落とされたこと無ぇ紅龍様だヨ」


 ご、語尾に愚痴が……!!


 紅龍様が言うには、ゲームの難易度が鬼畜すぎて大半のユーザーから落とされることがなく、かろうじて落とせたユーザーからは『しんどさの割に糖度がゼロすぎる』『モブとの方がフラグ立ってた』『シナリオとシステムの最大の被害者』とボロクソ言われる上に、自分を熱烈に落とそうとするユーザーがいなさすぎて、拗ねていたという。


 紅龍様は拳を握りしめて、激怒する。


「ワタシより弱い青二才どもが人気で、ワタシが不人気とか有り得ねーよナ!」

「そんな付喪神みたいな事態になる程に悩んでおられたなんて……おいたわしや……。あ、あのっ、私の中では紅龍様、最推しですから! 落とせてないけど!」


 私がホロリとしていると、紅龍様はウンウンと頷く。


「それナ! オマエみたいにゲーム下手な癖に諦めきれずにトライ&デスしてるヤツ、見たことなかったからナ~」

「そんなトライ&エラーみたいな言い方!」

 ツッコむ私に紅龍様が人差し指を立てて告げる。


「だからワタシ感動して、死に逝くオマエに新たな生をプレゼントしてやったヨ。それだけ根性あるなら、この世界でもやっていけるだろってナ」


 それで転生かぁ……と納得はいった。(転生できた理屈は、よくわからないけど)

 ゲームのラスボスに気に入られて(?)ゲーム内に転生なんて、ちょっと漫画みたいだ。

 現世でカレシも友達も家族もいなかった私は特に異論なく事態を受け入れていた。


「紅龍様、まさか乙女ゲームのヒロインに転生できるなんて驚きです~!」

「……」


 紅龍様がスッ……と目を逸らした。


 えっ……?


 どういうことなのかと思って自分の衣装を見てみると、私は漆黒のワンピースを着ていた。

 しかも、かなりグラマラスな体型になってる……?


 確か【マフィアクター】のヒロインである聖女ユリは純白の服で貧乳だったような……?


 他に立ち絵ありの女キャラは……と考えて、私は血の気が引いた。


「あ、悪女ディディ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?!?!?」


 叫んでから、自分が殺されまくった展開を納得した!


 悪女ディディ・ヴィッチ。

 ゲーム内で『福音教』と呼ばれる宗教のシスターをしているけれど、聖職者でありながら性悪で好色でお金好き、この世の女の汚いところを煮詰めて固めたようなキャラだった。


 で、最初に私を銃で殺した攻略キャラはルー・ガルー。

 その次にナイフで刺してきたのはサングレ・カミーオ。

 最後に、私をついでみたいに殺したのはアリアだと思い出す。

 その三人とディディの関係について……。


「た、確かガルーはお母さんが出稼ぎに行く間、教会に預けられていたけれど、ディディが司教とグルになって、ガルーのお母さんに嘘をついて過剰な送金を促した所為で、娼婦になるしかなくて……。それが原因でガルーのお母さんは死去。真実を知ったガルーにディディは殺される……」


 更にサングレに関しては……。


「サングレは美少年だから、ディディが福音教のモブおばさんにサングレをあてがって、女性恐怖症にしちゃったのよね……。そりゃあ殺されるわぁ……」


 二人共ディディに幼い頃から虐待されてきてたから、あの連続死にも納得だった。


 ちなみにアリアは子供の頃は無感情の極みで、ディディに何をされても恨みに思っていないかわりに『ついでに殺す』と、モブを殺す時にディディも殺してくるのだ。


 そんな傷ついたガルーとサングレとアリアを聖女ユリが癒してハピエンになるのだけど、その過程でディディは過去との決着をつけるとかいう名目で、大 概 死 ぬ。


 ガルーに射殺されたり、サングレに刺殺されたり、アリアによってナレ死に追い込まれたりと、もう毎 回 死 ぬ。


 ディディが死ぬ度にネットでは『ディディが死んでからが本編』『ようやく本編キタ』とフラグ代わりにされているくらいなのだ。


「イヤーッ! そんなキャラに転生しても、死を繰り返すだけではーーッッ!?」

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