龍装、瞬間、大勝利!
走る。
(先客がある)
(青龍だ。お互い、影に殺されたものとしてよろしく頼む)
あの村にいた獣には、影がついていたらしい。
(リンについていけば、あの影に会えるような気がした。勘違いでも、探してみるよう頼むつもりだった)
「そうなんですか」
岩と岩の間を跳ねる。
(が、現にこうなってしまうのだから、やはり運命めいたものはあるのかもしれない)
そうかもね。
遠くから向かう影を見れば、私は足を止める。
「赤龍は、残心を使って私のところへ来てくれた。だからここにいるよ」
「そうか」
「何が目的なのかはどうでもいいけど、青龍に負け、赤龍に負け、ただ一人の男の体に縋るしかないのなら、諦めるのも一つの手だと思うよ」
「負けてない、相打ちだよ!」
「そっちの方が、情けなくないかな!」
軽々しく振りまわされる大剣を、体の捻りで避ける。
側転、バク転、跳躍。
着地の衝撃を加速に変え、接近して蹴る。
(いい!効いている!)
ダメージがあるのだ。
(取り込めているから、奪えていなかった痛覚も奪えてしまっている!)
カウンターをしゃがんで避け、ムーンサルト。
顎にヒットしたから、立てないはず!
行ける、出せる、一撃で沈められる!
(魔法!?)
繰り出す一撃が、炎を纏って弾けた。
(魔法を使える才能があるんだ!お前!)
爆発が互いを隠す。
開けた煙の中には、無傷の私に焦げついた影。
「勝つ目的が違う、けれど、負ける条件は同じだ」
影は唱える、魔法の契約を。
魔力を対価に神へ奇跡を乞うのが魔法であり、それが実現されればどんなことであろうとも起きる。
影が辺りを包み込み、そしてそれが概念で、回避できるものでないとわかるのなら、魔法使いとは奇跡の巫女だとわかるのであった。
概念の中に私がある。
そう、これから先何度も味わう、世界が存在しない時のこの感覚。
無となりて無を認識するこの感覚。
「初めまして」
世界色付き、それが心象風景だとわかれば、話は進む。
「話せぬというなら、違う方向で示せばいい」
問いかけ無言で返す男こそが、影の底にあるもの、ジエーデクライシス。
「生きるか、死ぬか。それを知るために私はいる、それを伝えるがために私は存在する」
死にたければ死ねばいい、死にたくないなら生きればいい。
そこに善悪も大義も理屈なんてものもないのだから、好きに選べばいい。
選べないのなら、生きるしかないのだし、選ぶしかないのだ。
生と死、人間の根拠を選ぶことでしか、人間の営みはできない。
「生きる資格なんて、あるわけないだろ」
「情けな」
帰ってきたのは、中途半端でつまらない答え。
「影の攻撃を守ることができなくて、沢山死んだ。親も友達も恋人も!神と奉るお方でさえ!村の守りてたる役割果たせぬ私に、誰が生きる価値があると判断できる!」
「つまんないこと言わないでよ。生きる価値、役割、そんなくだらない、後出しのものに惑わされて選べないのなら、ただの間抜けだよ」
「貴様にわかるのか!わかるものかよ!」
「辛いのはわかるけど、辛さだけに意味はないよ。私は知りたがっている、赤龍も、村に残る残留思念も。貴様が生きるか死ぬかを、尊重して送り出すために」
「人殺しが、生きて言い訳が!」
「人殺しに善悪はないよ。お前はまだ過程の最中。人を見殺しにすることしかできなかった、辛い、怒り、されら全てはただの感情、動機の根拠!それら糧にしてできた行動の結果こそが、本物の結論!」
「だとしてと、なら私は死ぬべきだ!殺せよ!」
「いいよ。どうせなら、村の連中と同じように殺してやるよ」
「なんだと」
「そっちの方が、酷い殺され方をされた方が、残留思念の幽霊となって先に死んだ奴らと話せるでしょ」
「きっ、さまあ」
ストレートが私のご尊顔に入るが、痛くはないのだ。
ここは精神世界だから、目に見えることに意味はない。
「怒る?怒ったねえ!だったらどうする!」
「殺す!お前も、あの影も!」
「いい、いいねえ!殺してどうする!復讐してどうする!」
「みんなを成仏させてやる!」
「じゃあ生きるしかないなあ!」
弾かれたような感覚、現実へ引き戻された感覚。
飛び起きて目覚めたかのような倦怠感は、先頭の最中であることを感じさせない。
(力が増してるぞお前のせいで!)
赤龍が叫びは事実。
(怒りの感情が、そのまま魔力になっているということかのう)
青龍の分析は冷静。
「お前、俺より酷いな」
影の叫びは当然の疑問。
「さあさあ、フィナーレだよ!」
私の叫びは誰よりも美しい!
決着はつけられる。
生きると言ったよな、生きてでしか、私は殺せないぞ。
昂る、感情!
魔力の回り早くなりて、脳がフルスロットルで回路を作る。
描くイメージを魔力を大金に神に作らせるのが魔法。
その分の魔力はある、それをできるという確信はある。
そう、魔法を使うものに必要なのは、信頼!
己が描く理想を、確実に実行できるという、自信!
そうでなければ魔法は発言しない!信じ込めなければ、人から炎は噴射しないし、影が精神世界を作ることもできないからだ。
ならば、叶う。
昂りと、死者の怨念が私に力をくれるからだ。
「龍、装!」
体全身から赤いオーラ立ち上り、それが固体の物質へと変わっていく。
私の髪の毛に赤いメッシュが入り、耳には赤い宝石のイヤリング。
目が赤く染まり、ネイルは当然赤。
王が纏うマントを纏い、王が証、龍の角を模した髪飾りが自動でつく。
黒の鎧が前肢を覆い、金の小手が右腕につく。
巨大な、人の拳の何倍もあるそれは、巨大な拳のようだった。
「紅き情熱見に纏って、火山をバックに馳せ参じたのは、この私!」
「貴様……」
「私の名前は光堂リン!凛と、林と、燐と、臨と!さあ、煌めくぜ!」
背後にブースター、加速装置がついて、そこから炎が沸き立つ。
加速加速加速。
音速はゆうに超えたスピードから出される、巨大な右腕による攻撃。
「いったあ!」
吹き飛ばす衝撃地面を更地に、受け取った人体は大きく吹き飛ぶ。
「嘘!」
影とジエーデが分離し、影だけが吹き飛ぶ羽目になったのだ。
そういう機能は、当然搭載してある。
「これがフィナーレ、煌めきの最高潮!」
火山の山頂、そこに見えるマグマ!
遥か上空から下に向かって思いっきり加速。
未だ動けぬ影に向かい、全てを込めた右足が突き出される。
そのまま底まで進み、溶岩に叩き落とす。
その衝撃が火山を擬似的に噴火させるが、まあ、いいだろう。
「私の、私たちの勝ち!」




