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神の再誕

「光堂、リン!」


キリツグが私を襲う、けれどそれは届かない。


「ジエーデか!私に復讐でもするかい!?」


「そんな狭いことをするほど愚かしくない!」


「なら、素直に死ね!」


剣と剣の鍔迫り合いが終わり、負けたジエーデが私の元に落ちてくる。


「大丈夫?」


「あとは、あれを倒すだけでしょ?」


「うん。手伝ってくれる?」


「旅して作った力、見せてあげます」


リレイドの魔力が全部尽きて、その魔力のいくつか、彼女の奪う力を元に作られたもはや誰のものでもない、かつ少なくとも世界が破壊できるレベルのそれが、帰る場所を無くして、空中へ彷徨っている。


「これが、この世界の魔力の9割だっていうのはわかってあるんだ」


「ジエーデ、何してたの」


「貴様の知らないこと!」


変わった、自分の知らないものに彼は変わった。


知らぬところで世界は回る、それはもう理解している。


けれどそれには必ず起源があって、その起源を作ったのは私!


どんな時も、どんなところでも世界はいずれ私を軸に右にまわっている。


「この場にいるもの、世界にあるものよ、聞け!」


濃密な魔力が我が声全世界に、世界を飛び越え存在する全てのものに響く。


「世界が揺れ動いたのはわかるだろう!世界が安定しないのがわかるだろう!そしてその中で、存続を、揺れ動く常に不安定な世界で生きることを望むものよ、我に力を貸せ!不安定を捨て、安定を望むものよ、彼に力を貸せ!世界は神を望んでいる!その神は貴様らが決めるのだ!」


アリスト、ヒヨドリィナ、ジエーデが私に力を貸す。


魔王、アカリガが、キリツグに力を貸す。


今いるのは最終駅、誰かの思考が誰かを動かす。


星の引力が月を回し、太陽の力が星を回し、引き合う力が銀河を作る。


それと同じように、世界は変わっている。


誰も知らない、しかし誰かが回しているこの世界の変化を、果てを、未来を今決める。


「私の全てを取り戻し、私は進む!世界を壊し、新たな世界を私は作る!」


リレイドと同じ、けれど覚悟が違う!


「私は全てを手に入れて、私を作る!世界を守り、既知が創る未来を見る!」


私は進む、我が野望、私の存在根源の奥深くまで!


「龍装、超越!虹色纏って世界を魅せる!オールドラゴン!」


龍装で纏うのは、虹色。


王者の証たる鋭利なツノが生え、雄大な翼が存在を語る。


地へ這う尾が構える様が、男の器を表すようで、溢れ出る虹色の光が男の力量を表している。


「私の名前は光堂リン!リンに臨席するものよ、私の君臨を見ろ!」


互いに相手を見つめ合い、世界を見る。


「行くぞ!」


ジエーデ、ヒヨドリィナと共に走り出す。


魔力を使い全員をバックアップ、それにより、出力の平均値が上がる。


「それは相手とて同じ!」


奪う力、それこそキリツグの持つ力。


それにより、私と同等の力を持つまで至った。


別の世界線の私と、この世界の9割を構成するものから奪った魔力は無限と同じ量を持つかもしれない。


「ジエーデとリィナはキリツグの足止め!私は取り巻き二人を倒す!」


白い悪魔、黒い魔王が我が前に対峙。


「嘘ついたな、貴様!」


「嘘はついてない」


魔王の斬撃。


私は龍装により得た籠手で受け止める。


そのまま手に爪を伸ばし、切り裂く。


「嘘ついたろアカリガ!」


「嘘は言ってない!キリツグに惚れたのはあの後なんですよ!」


「嘘!」


「いいや、語られればわかるでしょう!あの瞳、純粋なそのものの瞳で世界を滅ぼし、新たな世界を作ると言われれば、興味が湧く奴もいると!」


「そうかい!」


オールドラゴン、それは私の全て、今までの全て。


水龍剣による斬撃でアカリガの両腕を吹き飛ばす。


(再生はできない!)


氷龍の力による固定は、いかなる再生も受け付けない。


「魔王さんにはごめんなさい!」


迷惑しかかけてないから!


土のハンマー、黄龍さんの龍装武装によって吹き飛ばし、追撃に緑龍さんの時に使っている弓で何発か叩き込む。


「混合魔法、炎黒!」


黒い炎を乗せたストレートパンチが、アカリガに叩き込められる。


想像できぬ音が鳴り、爆発のような加速を貰ってアカリガは地面に叩き込まれる。


「炎光!」


発光、加速。


蹴られて、目の前が光る。


魔王がそう感じたように、光の速度を超えたキック、その後光が煌めいて、魔王にダメージが入る。


その加速が爆発を起こし、魔王をノックアウトする。


「リィナ、ジエーデ!」


急いで仲間の方を向けば、今まさに爆発が起きたところであった。


「リィナが怪我、私は大丈夫」


「そうなら、いい」


「リィナは、」


「お前の怪我を治すのが先!大丈夫という嘘をつくな!」


「直させるかよぉ!」


私に向かって爆撃、それは当然防ぐが。


「隙が潰されている!」


回復は、出来そうにない。


どうする、光堂リン。


「リン、力は貸してあげるから、構わなくていいよ」


「了解!」


「そういうことができるのなら、私たちだって」


魔王の力、アカリガの力がキリツグに。


私が繋いだ力は私に集う。


それは大きなうねりが集うこと、世界の傾きが二極化すること。


二人が余波を考えて宇宙へ飛び立つ。


「もうここまで来れば、戦いは銀河レベルになってしまう」


「だから何もない、銀河団と銀河団の合間に移動する必要がある」


ここなら余波も大丈夫なはずだ。












そんなことはなかった。


余波は星を軽々しく壊し、まともに当たればそこの銀河は半壊する。


世界が揺れる、自分たちがしでかしていることを理解させる。


世に存在するもの全てを滅ぼそうとしている、それもただの巻き添えで。


私が剣を横に一振りするだけで、その一直線上にあるもの全て真っ二つ。


目はもはや不要で、互いに光速を超えてしまっているのだから、視界に入る情報は全て過去だ。


水を放出すれば、銀河一つは易々と飲み込む程の量が出てしまう。


炎は太陽を焼き、風は銀河の回転速度を上げ、土は新たな星々を作り、氷は銀河の自転を止める。


光を放てば全てが白に、闇を使えば世は宇宙色に。


ああ、楽しい!


私の一挙手一投足が宇宙を壊せる!生命は億を超え兆も死ぬ!いやそれ以上に!


命が私を軸に輪廻転生、銀河が私を軸に銀河団!


楽しい!生きて、生きて、生きて!果てが私を誘っている!


光堂リン、そしてオールドラゴン。


培ったもの全てを使い、キリツグとぶつかり、世界を促す。


世界は見ている。世界は観念的なものだ。


つまり神が見ている。


わかる、私が神の器たることが。


それを決めるのが今なのだと、わかる。


「全世界が、私を認めた!」


右手掲げて私は叫ぶよこの世全ての名を!


「宝玉、オールライト!」


神が目覚める、神が再誕する。


失われたものが、この世全ての起源たるお方が、この世全てを生贄に蘇る。


虹色に輝く宝玉が、この世全てを光として、あまねく全てを手に入れた。


「あとは、貴様だけだあ!」


オールドラゴン最強の一撃、全魔力をリソースに、当たれば即死、道理もなくルールもなく言い訳も聞かない瞬間の即死攻撃を繰り出す。


水龍剣に込められた魔力が、キリツグを無に返した。


瞬間、光堂リンと龍達は死ぬ。


神の再誕にはこの世の全て、器の全ても捧げる必要がある。


虹の宝玉形を持って、その姿は光堂リンと瓜二つ。


けれど髪型目つき立ち姿が違う、骨格や肌の色は同じだというのに、明らかに別人だ。


暗闇の世界に神様一人。


厳密には暗闇ではなく、何もない、つまり色もないということなのだが、この世界を表現できる形はない。


何故ならば、ここは神の世界、人の知恵で理解できる場所ではなくて、かの者にしか知り得ぬ頂。


「蘇って、蘇れた」


ああ美しい、綺麗な音。


世を統べる、まさしくアイドルのような存在。


「だというのに、君は生きている」


光堂リンは生きている、光堂リンは立っている。


「自信確信あるはずもないが、神様でさえ私は殺せない!だから生きている」


龍装解け、魔力は失い、たかが人間の土俵に収まった存在が、なぜ神様に不遜な態度を取れるのか。


愚か愚か、貴様如きに何ができるのか。


腐って肥料になればよかったものを、なぜ酸素もないこの空間で生きようと思ったのか。


「奇跡が起きれば生きはできる、息もできる。けれどそれはいつか終わりを告げる」


だから死ぬのだ。


「その前に、あんたを倒す」


「何故それを望む、不遜な者よ」


「成るのは私、世界を作るのもこの私!その土台を作るためだけに、お前の如きの策に乗ったんだよ!」


「そうか死ね」


「死なない!来い!私の未来、私が作った先の、私だけの、私が故の、みんなが故の全ての可能性よ!」


究極的な我儘が、遥か存在しない未来を呼び寄せる。


それはスライムというのが語るに落ちて、大きさは人の頭の半分ぐらいだ。


生きている、そして世界が違う。デフォルメ調のその生命体は、光堂リンの味方をする。


「そう、それが、結末か」


「そうみたい」


「いつも、自分の過去のことを考えてしまう。神様はどうやって生まれたのか、と。私を知るものは私を崇め奉るけれど、私にとって、私とは矮小な存在なんだ」


「わかるよ。起源ありきの自己だと考えれば、結局自分は世界の一部であって、独立していない」


「未来だってわかるのに、その生物が現れることもわからなかった。私が完璧だというのは、設定で、実際はそうじゃないと、疑ってしまう」


「疑念は疑問に、疑問は思考に、けれど答えは出てくれない。だから自分に不安が宿り、百の幸福が得られない」


「そして私は死んだ。不老不死などと思っていたら、呆気なく、なぜか死んだ」


「不老不死なんて、永久機関なんて、証明不能なのに生き物は追い求めて確信して間違える」


「だからやはり、完璧じゃない。私が生まれた意味は、所詮貴様をこの域に到達させるための踏み台だったのかもしれない」


「そして私も、いつか誰かの踏み台になる」


「そして世界は進み続け、いつかの果てへ」


「それがなんなのかわからない、もしかしたらそれは今目の前にあるのかもしれない」


「だから思考をやめて、私は生きる」


「身の程にある、確かな幸せを信じ込んで」


「銀色の反射が、いつも眩しいけど」


「映るものを、取るに足らないものと決めつけ、目の前を見る」


「そうやって生きて、いつか死ぬ時がくる」


「その時に振り返ってみれば、どうだろうか」


「もっとやれることはあったかもしれない、満点ではないかもしれない」


「けれど幸せだと思えることはあったのなら」


「それを愛して、死ねばいい」


「それが出来れば、どんな存在でも否定はできない」


「生きたことを胸張れれば、誰も否定はできやしない」


「生きてみろ、死んでみろ」


「考え考え抜いたなら、それは貴様の幸福だと」


「痛みの果てにあるものか、その痛みが幸せなのかは知らないが」


「私はそれを尊重しよう」


「私はそれを、輝かせて見せよう」


「台本ではなく私の言葉、演出で」


「私の舞台を演じて、私を演じて」


「貴様を輝かせて見せよう」


「さあ、共に踊りませんか」

ジエーデが勇者として覚醒していたとか魔物と人間の関係とか、そして肝心のキリツグと神様について、色々説明してないなと書き切ってから思いました。

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