過去の繋がり夏の蜃気楼。
光堂リンは、どの龍装状態であろうと浮ける。
風なら翼、炎なら炎、水と氷なら足場を作って。
それと同様に彼もまた、浮いている。
起源が空たる、雷の力で!
(うっ、そお)
驚いてみせたのは、黄龍さん。
「雷鳴剣、二刀流!」
光の軌跡描いて、彼は私に突撃する。
「突撃には、突撃!」
体当たりを繰り出し、互いの速度を打ち消す。
水龍剣と雷鳴剣、二つの剣がぶつかり、弾かれる。
斬撃繰り返し、剣と剣は幾度も音を鳴らす。
「水の鞭!」
性質変化による、薙ぎ払い攻撃。
「悪手!」
水の鞭に、雷が触れる。
水、H2Oは、あまり電気を通さない。
けれど私が操る水龍剣の水は?
魔力を含ませてあるのだから、もしかしたら電流を流すかもしれない。
「この水は、電気を通さない!」
「この雷は、あらゆる液体へ通じる!」
「通さない!」
「通す!」
攻撃を防ぐバリア、そのバリアを破る攻撃、その攻撃を守るバリア、そのバリアを破る攻撃。
繰り返す後出しジャンケン。
(諦めろ!)
水龍さんが叫ぶのは、魔力量のリソースなら、相手の方が上手だから。
「隙だらけのリン!」
だから、横槍が入るのはありがたい。
リレイドの攻撃がリンダッシュをよろめかせ、その隙に水龍剣の鞭を当てる。
「油断した光堂!」
リレイドが、今度は私に向かい炎を放つ。
水のベールでそれを防ぐ、が。
(ミスった、これ煙幕!)
巨大な炎は向こう側のリレイドを隠し、次の攻撃も隠す。
しかもその攻撃は、水魔法による圧縮された水の噴射だったので、自分が貼った水の壁が保護色となって避けることができなかった。
(こっちは助けてやろうってのに!)
リレイドと協力はできない、できそうにない。
心臓を貫かれるが、すぐに再生する。
「随分、水をばら撒いたな」
まずい、今度は!
「学ばないなあ、貴様らは!」
飛び散る水滴を通じ、全方位に電流が飛ぶ!
間抜けな私とリレイドがビリビリと痺れ、一番近いリレイドに向かって雷鳴剣が振り翳された。
なったのは斬撃音ではなくて爆発音。
雷で作られた剣が、人にあたれば当然爆発するまで。
「私より、この女を先に殺す!」
リンダッシュが発光し、溢れ出る魔力は誰の目にも見えた。
速度、スピードを乗せた蹴り。
リレイドが蹴りで貫かれ、その後に光の軌跡が映って、彼女が遠くまで吹き飛んで、地球を五周して私にぶつかった。
そうしてようやく、衝撃音が鳴る。
「リン……どうして貴様らは私を苛立たせる!」
満身創痍、今にも倒れそうなリレイド。
違う、バグを起こしている。私が一度退けたときのように、彼女は不安定になっている。
「わかんないですよ。それを含めて話し合いたいんですから」
「……」
「こんなところで、こんな日に死にたくないでしょ?まだやりたいことがあって、行きたいのでしょう?でもそれの叶え方が間違えてあるのかもしれなくて、それが私の目には哀れに見えたから、同情で話し合おうと思ったわけです」
「同情なんか、されたくない」
「何でもかんでも否定して、考えることをやめないでくださいよ。立ち止まってないだけ尊敬はしますけど、考えなければ真っ直ぐ進めないんですから」
私がそう言い切れば、彼女は目を瞑る。
「リン!」
ビルの壁を駆け上がり、ジエーデが私と同じ座標に来た。
「お願い!」
リレイドを投げ渡し、私は私と向かい合う。
「俺ならわかるよなあ?貴様は俺に勝てない!」
「勝つ、勝って、進む!」
龍装、風!
私の成長に呼応し、纏う風は嵐へと進化した。
嵐と雷のぶつかり合いは、辺り全てを巻き込んで、破壊していく。
加速、加速、加速。
纏う風が私に速度を、速さを、前に進む力を与えてくれる。
横に見える光も加速して、雷鳴というより光そのものに見えた。
「台風よ、私たちを包め!」
速度勝負では決着がつかないと判断した私は、自己を中心とした嵐を作り出す。
台風の目に、その上空にいる私からして下にいるリンダッシュへ向けて弓を構える。
「混合龍装、風水!」
風の魔力と水の魔力を組み合わせた攻撃、その矢が高速でリンダッシュへ突き進む。
雷鳴剣で矢を受け止め、矢の力と剣で押し合いになる。
「拡散、発散、放電!」
「なっ、」
矢が爆発、あたりに飛び散る水滴、帯電していたリンダッシュの魔力が、強制的に水に流れる!
「魔力が、減った!?」
そういう性質を付け加えた水魔法だから、できたこと!
「水の鎖!」
隙を逃さず、水の糸が彼を縛る。
「エアロブラスト!」
速度を上げてキックを放ち、あたりの台風も回収して魔力を上げる。
貫け、貫けなくても、致命傷になってくれ。
残った魔力の押し合い。
進む風の威力が、受け止める雷の力を上回った。
「お前は、俺じゃない!光堂リンじゃないものを持っている!」
遠く、遠くへ吹き飛んだ。
地面を二回跳ねて、一つの家へ落ちる。
「ここは」
リンダッシュが落ちた場所へ、私は着地する。
限界を迎えた龍装が強制的に解かれ、私は地面に片膝をつく。
「私の家」
なんで、こんなところに。
居るはずだ、ここが私の家なら、居るはずだ。
(まずいぞ)
水龍が思わず呟くが、それ以外の龍達は何が危険なのかわかっていない。
その危険の対象が、リンの目の前に立つ。
「アシリア……」
久しく見ていなかった、同居人の顔。
私の過去、前提、繋がりと呼べるもの。
(リン、わかるだろ!どういう言葉を投げかけれられるかなんて!)
水龍さんは叫ぶ、耳塞げと私は言う。
けどそれが出来なかった。
だって、だって、声が聞きたい、姿を見たい、好きな人を感じていたいから。
出会って、話して、深まって。
それで互いの身分を考えて、結婚なんかしないけれど、好き同士の関係だった。
ライクで表せる関係だから、親愛のようで、つまり家族で、一緒に居たい人なんだ。
リィナが元気でいれば、私は嬉しい。
それと同じで、アシリアが笑ってくれれば、幸せなのだ。
リィナと同じぐらい、アシリアを、愛している。
「大丈夫?」
綺麗な声、その対象は私ではなくリンダッシュ。
そう、これが現実。
この世界の、彼女のパートナーは私ではなくて、ここの私!
それを傷つけた私に向ける目線は、敵意をむき出しにしている。
「なんでそんな格好をしているの」
「……私が、光堂リンだから」
「違う。私の知っているリンなら、こんなことをしていない!」
拒絶、否定。
(だから言ったのに……!)
それは、身体の限界を迎えた私には、ひどく突き刺さる。
心身がキツい、胸が苦しい。
落ちている。上がったと思ったのに、落ちていた。
「そうだね」
言え、叫べ、愛する者を否定しろと、脳は叫ぶ。
そうでなければ私が死ぬから。
「私は、そこの、弱い私とは違う」
落ちろ、落ちて翼をもがれてしまえ。
まるで蝿が集る死体のように、私は腐って仕舞えばいい!
「だから、殺す」
限界を超えて、歩く。
足が上がらないから、引きずって。
靴と砂が擦れる音だけが、私に聞こえる。
(いいよ、使って)
黄龍さんが、許可を出す。
「すみません、ごめんなさい」
誰に向けたかわからないその言葉を聞いて、リンダッシュは立ち上がった。
搾りかすの魔力を使い雷が遥か空から落ちてくる。
「龍装、土」
纏う鎧が、その衝撃を弾く。
雷を全て弾く、リンダッシュ用の最後の斬札。
右腕のハンマーを両手で持ち、構える。
もう動けない、もう一人の私。それを庇う、愛した女。
「いいわよ」




