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世界の全てはここに集う。

「他の女の髪を触っていて、私が嬉しいわけがないだろ」


リィナが小声でそういうが、リンはあえて無視した。


彼女はそういうことを言える自分がこの場で一番みみっちいことには気づいているのだけど、言わなければ気分が冷めなかったのだ。


髪を櫛で溶かし、魔法を使いヘアアイロンのような物を作り、とかした髪を整えていく。


外、内、外。


髪の毛にカールを付けて、長い髪は後ろに流すことにした。


「前髪はもう少し切ってくれ」


「はいはい」


風魔法で前髪を切断。


前髪をまた整え、バランスを確認していく。


「どうですか」


前髪は眉にかかるぐらい、後ろに流した髪の毛は結んでローポニーテールにした。


「ふむ、気に入った。私は気に入ったぞ」


「好きなんですか、おしゃれ」


「昔の恋人がね、私を美しく仕立ててくれたから」


「ほーん」


「あいつのほうが、貴様より上手かったな」


「惚気ですよ、色眼鏡かけないでください」


「そういう時は素直に認めるのが、円滑なコミュニケーションだろ」


「私は褒められたいので」


「アイドルだから?」


「そうです。承認欲求があるからアイドルなんて物をやっているんですよ」


「私もやろうかねえ」


「いいですねえ、性格は置いといて美貌はあるし」


「なら、いつかな」


やいのやいのと会話をしていれば、誰かが急足でやってくる音が聞こえた。


来たのは魔王様のところにいた魔物で、翼をへにょへにょと降りながら見るに、疲れているようだ。


「ああ、ああ」


「落ち着いて、どうかした?」


私に用がありそうな彼は、人に鳥の特徴を加えたようなそれは、絞り出した声で私に囁いた。


「敵が……アリストが……来たと!」


「わかった。君はここで休みな」


その小声は皆にも聞こえていたようで、ヒヨドリィナと氷の龍は険しい顔つきで私の言葉を待っていた。


「急いで戻るよ」


「うん」


「担いでくれ、髪の毛をボサボサにせぬように」


マイペースを保つ氷のやつを傍に抱え、リィナを背中に抱っこする。


「一気に加速するから、捕まっててね」


龍装、炎。


赤き衣装を見に纏って、生えた背中のバーニアから炎を吹かす。


金の筒からでる勢いが私を勢いよく飛ばす。


摩擦の少ない氷の大地を滑り、速度が溜まればやがて空を飛ぶようになった。











光堂リンは旅をした。


異世界に降り立ち、自分の足で歩いた。


それで見えた景色は、ほんの一部、氷山の一角なのだけれど、わかることもある。


人であれど人の歴史とは違う。


ここには、ここの歴史がある。


化学技術が劣っていても、教育が劣っていても、差別が一般的であれど、それでも愛おしいところがある。


光堂リンは何を見た。


歩いて、話して、知って、考えて、予想して。


何を見出した。








到着したとき、そこは瓦礫の山だった。


だから開けていて、誰と何があるのかは分かりやすかった。


「久しぶりねえ、光堂リン!」


「そうだね」


アリストのガワを纏う女は、意気揚々と、しかし圧力を持ってそこにいた。


「豪華になって、それだけでないのはわかる」


「これ?これは、力を取り戻したってのもあるけど、人間から力を奪ったからってのもあるわ」


「どんだけ」


「王都はすぐに支配できて、棚ぼた式で全部。だから人間界の9割の人間や魔物の魔力は私に全てあるの」


「世界の半分を手にしたってことか」


「そうね」


その少女は、この場の誰よりも強い。


魔王も、キリツグも、アカリガも、黄龍も氷の龍もヒヨドリィナもその他大勢の魔物も、そしてこの私が及ばないぐらいに強い。


そもそも勝てた、撤退させることができたのは、相手が力を手に入れたばっかりの不安定だったからで、それが力を安定させていれば?


(勝てる?)


龍の誰かが、私に問う。


勝たなきゃならない。


死ぬという選択肢は私にないのだから。


「一つだけ、君の名前を知りたいんだけど」


「私?私の名前は、リリィリレイドリクレシア、長いからリリィか、リレイドか、リクレシアでいいわ」







リリィリレイドリクレシア。


かの名前はこの世界では有名らしくて、それを聞いた誰もが息を呑んだ。


「原初の生物、母なるお方が何故我ら子を恨む」


この場の指揮を取る魔王が、リレイドに尋ねる。


右手に握られた大剣からは怒りが見れて、それは部下を殺されたからなのだろうとわかる。


光堂リンが参戦したからこそ、そいつに興味を示したリレイドが攻撃の手を止めた。


けれどその前には蹂躙があって、既に何十という魔物が死んでいた。


この場にいるのは星の半分を手にした魔王の部下、対する相手は星の半分を奪った魔女。


つまりこの戦の勝者が、青い星を手に入れる!


「恨む、それもあるけれど、飽きたの。貴方達の世界を見て、私が滅した方がいいってね」


失敗作だと、彼らは言われている。


「それで、いくらの人を殺した!それで、いくつの命を殺す気だ!」


「私の欲が満たされるなら!何人でも殺してあげるわよ!私の息子でもねえ!」


「産んだだけのくせして!」


開戦再開、振り下ろされた剣が合図となりて、この星の、この世界の、この世全ての存在の賭けた戦いの幕が上がった。








止まぬ止まない攻撃。


大地が持ち上がり、絶えず誰かがリレイドの隣りに立つ。


「ちょこざらしい!」


「げえ!」


魔力で衝撃波を作り、さらにそれが作り出した隙をつき、キリツグが殺されそうになる。


「こいつの攻撃に当たるな!」


攻撃とキリツグの間に魔王の大剣が投げ込まれ、遮られた。


「こいつは触れた物から全てを奪う!魔力も命も能力もな!」


だから彼女に近接戦を仕掛けられるのは、一握りの実力者のみ。


あとの雑兵供は遠距離攻撃しかできないのであった。


キリツグ、アカリガ、魔王、リィナに氷の龍と光堂リン。


「ほらほら!当たったら死んじゃうよ!」


意気揚々、楽しそうに、リレイドが魔法を振り回す。


爆発、爆発、津波、地割れ、台風、吹雪、煙幕。


何でもありの彼女の攻撃は、次第に苛烈さを増していた。


「まずっ」


「アカリガ!」


誰も見切れぬ超スピードで、アカリガの土手っ腹に飛び蹴りがヒットした。


「ぐぇ……!」


勢いよく吹き飛んで、重い音と一緒に跳ねて、跳ねて、見えなくなった。


「次!」


「私か!」


光堂リンの目の前に来たリレイドの正拳突き。


(カウンターの仕込みはしてある!)


緑龍さんの仕込みが炸裂し、風の爆破が起きて、


「どうにもならない!」


せいぜい攻撃の威力を減らしてくれたぐらいで、ダメージは入らなかった。


私も腹に攻撃を受け、吹き飛ばされる。


「リン!」


リィナの声が聞こえたけれど、次に見えた景色は全然違う場所だった。


「大丈夫ですか」


アカリガが、そこにいた。


「死ぬほど痛いけど、殆ど死んでるような物だけど、生きてるよ」


「私も、かろうじてですが。アレの攻撃を受けると、もうその時点でかなりキツイですね」


「私はまだ行けそうだけど」


「貴方には、リレイドに対しての耐性があるみたいですね。理由は知りませんが」


「ここどこ?」


「さっきまでいた城からみて、反対側。星の間反対に来たんですよ」


「そんなこと、あるんだ」


「あります。だから、真下を掘って行けば、戻れますよ」


「わかった」


「回復したらすぐ戻ります」


「うん」

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