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南極か北極か。

前後はある。


つまり物事には原因がある。


だから不条理も案外自分のせいであったりする。


なんだかこの話は前にもしたような気がするが、この話をしているということは、嫌なことがあったということだ。


「氷漬け、無駄に綺麗な」


リィナが氷の中に閉じ込められ、固まっている。


「戦いに手加減がいるとでも?動いたらこの女を殺す!」


青い、けれども白い龍は、冷たい吐息と言葉を吐き出す。


(冷やした冷気に俺の炎は危険だ、最悪爆発する)


(わしの水もすぐに凍らされるからなあ)


「ともなれば」


(新人の僕の出番だ!)








何故か私が会えるのは龍ばかりで、これは運命だと思う。


船に乗り、冷気が私を駆け抜ける。


「これって船なのかな」


リィナが船底を眺めながらそういう。


その目線の先には、蛸がいる。それも巨大な。


巨大なタコの上に、船を乗っけて運営しているらしい。


「人や生き物、物資を載せて動く木製の屋敷は、まごうことなき船だよ」


「タコだけでいいでしょ」


「船の方がロマンチックだし」


魔物は人の文化を真似しているらしい。


言語も昔は共有で、やはりそこには事象がある。


だから脳の構造が似ていると、私は判断した。


魔力という何でも出来るエネルギー、それを最適化して魔法を使う脳。


それに必要な回路は同じで、だから人間と魔物の脳は似通っている。


つまり魔物と人の趣向性は同じ。


だから平面でいいのに、わざわざ船の形に近い物を作り、タコに乗せる。


庭園を作ろうとするし、人間の文化を受け継ぐこともできる。


人間の文化を魔物なりに発展させても、人間である私にも理解できる。


(いや、おかしくはないのか?)


一つ、引っかかる。


私は地球種だ。


けれども魔物を理解できる。


脳の構造が似ている?


でも私は人生の大半を魔力なき星で生きてきた。


急速に脳が変化した?ここに来てから一か月ぐらいで?


出来なくはなさそうだ、魔力があるのだから。


なら私は、もう地球人ではないのか?


「まあいいか」


それは、家に帰ればわかることだ。


私の同居人は、私を見出してくれるはずだから。


(人間って、哲学好きだよね)


緑龍さんの言葉がそう、私に響いた。








さて、主題を後回しにしてしまう、ダメな作文を読んでいる気分であろう。


けれどもそこには理由がある。


後付けでなければならない、理由が。


私達は未だ戦力集めに勤しんでいる。


そもそも魔王様が命令すれば良いのではないかと、そう提案したが無理と言われた。


事情は何と無くわかっていたし、気にせず情報を集めていた。


すると、黄色の龍、黄龍さんを引き込めた。


さらにそこから、棚ぼた式で黄龍さんの知り合いを紹介してもらえることになった。


だから船に乗り、氷の大陸へ向かっていった。


そこは南極か北極で、もしかしたら西極か東極かもしれない。


寒い大地を突き進み、白い龍を目にすることができた。


でもその龍は、我儘で傲慢で、人の話を聞いてくれない。


いきなり襲われて、いきなり氷漬けにされたのだ。


そうだ、これが訳なのだ。


物事を順序立てて説明してしまうと、私が目の前の龍のことを黄龍さんからよく聞いていないことがわかってしまうのだ。


だから最初から現状を話す必要があった。


「龍装、緑!」


緑の光、外装となりて我が身に纏えば、私のイメージカラーは緑になる。


エメラルドのイヤリング、緑のグラデーションがかかったメッシュ、そしてネイル。


目の色はオーシャングリーン。


背中に巨大な翼が生えて、私の右手に弓が握られる。


空飛ぶ貴族は金持ちのピーターパンのようで、私は自信に満ち溢れていた。


魔術が魔力を媒体に空想を現実化するのなら、必要なのは勝つイメージ。


だから龍装は自信を纏うために、外見すら変化させる。


穿つ弓矢が冷気を乱れさせる。


相手の、白いブレスを風を纏う矢が吹き飛ばして、白い体も吹き飛ばす。


「鈴と幸せ風に乗り、私の元へやってくる!」


この世全ての風が私の味方をする。


音も、感情も、何もかもを、風が連れてきてくれる。


「私の名前は光堂リン!今、貴様を惚れさせてみせる!」


「私を、倒せる者ならなあ!」


冷気でなく、その発展系、氷の塊が射出される。


鋭利と密度を持った物が、速度も加えられて私に向かう。


けれども大きな翼を持つ私は、軽やかに飛んで避ける。


一発、弦が矢を放つ。


魔力で与えられた仮想質量と回転が加わり、氷の塊達を破壊して、白い体に突き刺さる。


紫の血が彼女の体から流れてくるが、攻撃の手は休めない。


切断武器としても使える弓で、白い巨体を切り刻む。


空いた肉体に回し蹴り、風魔法で巨体を浮かす。


決めるのは、次の一発。


全力で魔力を乗せ、条件をつける。


次の攻撃は相手を殺さない、次の攻撃は相手を傷つけない、その代わり、誰もが驚く一撃となる。


和弓から、空に向かい矢が放たれる。


此度一番の魔力を込められたそれは、纏う風があたり全てを吹き飛ばす。


吹雪は晴れ、曇り空は快晴に。


白い巨体は打ち上がり、振動と元に地に落ちる。


「勝ったんだから、そちらさんの条件は飲んだのだから、付き合ってもらいますよ」


「いいよ」


葉をぎしぎし鳴らしながら、睨みつけてくる敗者は、ワイバーンとも言われているらしい。


生物に対する理解は、皆適当なようで、竜と言ってもドラゴンや蛇や鳥類が含まれている気がしている。


魔法という、生物の個を確立するアイデンティティがあれば、種族ではなくて個別に見られるが故に、種族という括りは馴染みが薄いのだろう。


現に人に危害を加えぬ物を動物、それ以外を魔物と言っているのがこの世界の人間なのだ。


「まあ、人間の文化には興味があったし、いい機会だと思うよ」


彼女は自分を納得させれば、悔しさが消えて、普段通りであろう言動に戻る。


「ちょっと悪いけどさ、地下にある私の服をとってきてくれない?」


服。自分の何倍もの体積を持つものが着る服はどんなのだろうと、そう考えながら取りに行った。


「女性の、チャイナ服」


肌の露出を隠すインナーとセットのそれは、水色で美しかった。


「薔薇の模様で、ひんやりしている。手触りは上等だ」


売りたい。


「持ってきましたよ」


「どうもね」


そこで、彼女は人間になった。


巨体が光り、それが人の形になれば、美しい女体を持った者に変わる。


私から受け取った服を着て、長い髪と合わされば、美しい人と思えた。


「お前、かなりイケメンだな」


「はあ、どうも」


「髪のセットもできるのか?女の」


「やっていますから、できますよ」


「じゃあ、そこの女を溶かしてやったら、また地下に来てくれ」


「わかりました」


そう言い。氷の大地に作られた人工的な階段を下る彼女を見送り、私は氷漬けのリィナを炎でゆっくり溶かしていった。


(ああいうこと、出来るんですね)


中にいる竜達に話題をふれば、思い思いの返答が返ってきた。


(普通やる理由がないからの。あの服といい、人間と交流があったんじゃないかのお)


(魔力を使えば、出来ないことはないな。俺らが宝玉として変化するのと理屈は同じだ)


(リンも出来るはずだよ。龍装のさらに発展系で、自分の魂に服を着せる感覚で)


つまり、物珍しい者ではあるが、貴重な者ではないということだ。


そういえば氷漬けの人は普通死んでいるようなもので、溶けても体が衰弱しているそうだ。


が、溶けた氷の中から出てきたヒヨドリィナは元気いっぱいにリンに抱きついてみせた。


やはり外見は人であれど、中身は化け物なのだ。


それは私もか。

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