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過去を知りゆく。

四人でいる。


私、光堂リンと、リィナとアカリガとキリツグ。


この四人がいれば、どうだろうか、という話をしている。


「勝てると思う?」


「無理」


あのアリストの主導権を握っているやつ、あれは以上に強い。


そもそも、以前私たち三人で手も足も出なかったというのに、そこにちょっと強くなっただけの私とキリツグが入ったところで、何が出来るという、何が変わったのという話である。


「魔王様が乗り気じゃないからなあ」


内政に勤しみたいあの人が、一緒に戦ってくれれば楽なのだが。


「まあ魔王が参加したところで、あともう少し戦力が欲しいですけど」


「リン、ジエーデはどうした?」


「別れた」


「戦力を減らしてどうする」


「いやーこんなことになるなら無理矢理でも連れてくればよかった」


育てればいい線行くであろ男を手放したのは、なかなか愚かだった。


「一つ、無くはない方法がある」


「めんどくさい?」


「そうなんだよ……」


つまり期待はできないのだ。


「取り敢えず、ここら一体の魔物から、腕利きの奴らについて聞き込みをすべきでしょう」


そうやって、地道にやるのだ。


なんだかアイドルデビューした時を思い出す。


あの頃は、魅せるというより知ってもらうための活動が多かった。


宣伝、宣伝、誰か一人にでも届けばいい、そんな活動を繰り返してフォロワーを獲得して、宣伝してもらう。


記憶の彼方にある行為だが、今の私には相応しいのだろう。


そう思うと、ようやく自分が誰かに負けたのだと、飲み込めた。


誰にも劣ったことのない私が、負けた。


人生、何があるかわからないものだ。












地味にここに至るまで日数が経過している。


ジエーデと別れてから数日は逃げていたし、緑龍と会ってからここに来るまでも何日か経っている。


そして魔王領を歩くのにも日数をかけている。


そういえば、ここは地球ではない。


なのだからこの星のサイズも、見上げればある太陽の大きさも違うはずで、それが意味成すのは周期の違い。


この星の一年は、地球でいえば何日なのだろう。


魔王様はそういう類の資料、いわばカレンダーを持っているのかな、あったとてそれは正しいのかな。


そんなことを考えて、歩く。


そのうち目当てのところへ到着し、より目当て物を探すことにする。


「リィナ、大丈夫?」


私たちがいるのは、俗にいう砂漠で、横には海が見える。


砂丘か?まあ大した違いはないだろう、確か。


暑さに灼かれぬように、横を歩くリィナを逐一気にかける。


わたしは赤龍さんのおかげで熱には耐性があるが、恐らく気温で言えば三十よりは上だ。


水と風の混合魔法で冷風をリィナに送りながら、変わり映えのない景色を歩いていく。


ひとつ、思いついたことがある。


思念の声を飛ばされたことは幾度もあるし、現在も暑さに文句を言う龍共の声は聞こえてくる。


それを私がやり、目的のお方に語り掛けてみることだ。


プライバシーの概念をかなぐり捨てているが、私自身もこんな場所からリィナを連れて行きたいので手段を選んではいられない。


(聞こえますか)


人の言葉の思考を、魔力を媒体に電気信号のようなものへ変えて他者の脳へ送る。


なんだかセールスの人みたいだ。


(どちら様)


聞こえた、私と感触の違う音!


そしてわかった、いる場所も!


「こっちに下がって」


ヒヨドリィナを側に抱き寄せれば、目の前の砂丘が盛り上がる。


丘がより盛り上がり、中から黄色の蛇のような龍が出てくる。


龍なのだ、角があるし、硬そうな鱗もある。


けれどそれが地を這えば、鰻だが蛇だが。


失礼なことを考えていると、体の一部を砂から出し終えた龍が、直接の声で話しかけてくる。


そういえば、なぜ魔物に人の言語か通じることがあるのだろうか。


それが当てはまるのが昔の存在、長生きしている魔物なのだから、過去に理由があるのだということだけはわかる。


初対面同士の挨拶をして、私が協力者を求めていること、人伝、魔物伝で貴方という存在を知ったことを話す。


「龍の手も借りたいところなんですよ」


「まあ、いいが。勝てるのか?」


勝てる戦をする主義なら、引き込みやすいのは私の運だ。


「勿論、勝てるから戦うんですよ」


「いいだろう」


私は勝つことしか想定できない。


所詮一回の負けを考えるほど人はよくできてはいないし、何より多少は変わっている。


「まあだが当然、見返りというのは求めるぞ」


「それはそう。出来る範囲でやってみせますよ」


「じゃあついて来い、いや、しがみ付け、連れていくから」


硬い鱗をロッククライミングし、私は蛇龍に捕まる。


リィナは私に抱きついているので、龍はそのまま走り出した。


巨体が砂漠を猛スピードで走れば当然砂の飛沫は上がるわけで、目を瞑らなければならない。


だからこの後帰り道で路頭に迷うわけになるのだが、大した話ではない。








目を開ければそこは砂漠では無くて、反対の緑の大地だった。


でも周りは砂漠なのだから、ここはオアシスだ。


「私はここら一体の領地を魔王様より貰っているが、ここぐらいしか他者が価値を感じるものはないし、私もそう思っている」


蛇から降りて、涼しく日差しを遮る木の元へ行く。


ただ私はオアシスを見たことも調べたこともあるので言えるが、ここは自然では無くて人工的に管理されているものだ。


つまり目の前の蛇の習性も考えれば、ここは彼の庭園なのだろう。


「私が戦果を貰えれば、もう少し土地が貰えるだろうし、人間界の植物も手に入る」


「それぐらいなら」


「そして、人間界の領土も、貰えるよな?」


「ええまあ、人間は殆ど滅びる予定ですので、土地は空きますよ」


「……それは困るな」


「そうなんですか」


「そもそもここも、人間が庭園だのを作っているということを聞いて真似事をしてあるのであって、ここは人に見せたいから作っているのだ」


「ああ、人のものに近づけたいんですか」


「一度だけそれらしき物を見たことがあって、そういう物を作ってみたいのだから、そのためには生きた人間の知恵が必要なのだ。ただの文のマニュアルでは無くて」


「だとすれば、仕事は増えますよ。人間の政治体制を壊した上で、人を滅ぼそうとする者と戦うのですから」


「それはいいが、そもそも具体的には何と戦うつもりなのだ?」


「多分世界の全てを支配しようとしている人で、そういう力を持つ人です」


「じゃあもう、人の世はそいつに支配されているのか?」


「恐らくですけどね」


今言ったのは全部予測だが、合っている自信があるので差したる問題ではない。


「まあそういうことなので、どのみち戦うことになるでしょうし、戦果が貰えるうちに協力してくれると助かります」


「うむ、よろしく頼む」









さて、私は黄色の龍と約束し、人類を守ることを誓ってしまったわけだ。


けれどアカリガとは協力関係にあって、彼女は人類を滅ぼそうとしている。


それをしなければ死んではしまうのだから、説得は無意味だ。


なんだったら、キリツグはどうなのだろう。


別に人類を滅ぼしたいわけでもないのだから、説得はできそうだ。


むしろ彼は、人の不幸を力に変えるのだから、死んでもらっては困るのではないだろうか。


じゃあ、魔王様はどうだろう。


肩書きだけの偏見なら、人類を滅ぼしたいはず。


けれど彼が内政に勤しむ様を数日に渡りみてきたので、彼の願いはそれとは違うみたいだ。


多分、魔物の存続なのだろう。


自然を管理し、自分の部下が一番住みやすいところを作る。


現に黄色の龍もその恩恵を受けている。


じゃあ逆に、洪水などの災害は嫌うはずだし、自然を切り開く人間は嫌える。


けれどこの世界の人類は、魔物との共存を果たしているところが大半で、地球の我々ほど伐採をしているわけではない。


いや、確か昔の戦争は、人類が地を耕し木を切り崩したから始まったと言っていた。


それならば長生きの魔王様は人を嫌える。


逆に、昔の人と今の人は、違うのではないか。


そう、アリストの偽物も転生体で、それは昔の人という証拠で、あの強さは昔の人特有のそれだとすれば?


私はなんとなくで今の状況が出来上がったと思えなくなる。


何か起源があるはずだ。


人に親がいるように、歴史に訳があるように。


私は今、この世界の歴史に飲み込まれようとしている。

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