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星の半分の統治者。

差別というのは誰でもする。


思い返せば一回はあるのだ。


したことないとはっきりと言えるのならその人はただの阿保であり、自信過剰で傲慢なのだ。


だから浮気のように誰でもする可能性があるので、差別はある程度認められるべきであるという考えは、成り立ってしまう。


でも私達が生きている、パソコンだのスマートフォンだのを使う時代において、差別に合理性はあるのだろうか。


見やすい資料を作るのも、計算して売り上げを記録するのも、知能がなせる技でそこに人種や性別は関係ないのだということはわかるだろう。


じゃあ、その知能はどうやって作る。


それは当然、才能……ではない。


知能を作るのは教育だ。先天性ではなく後天性だ。


小学中学高校大学、習い事に塾に資格。


これらの過程で発展した脳がデジタル社会で重要なのだから、先天的な差別は成り立たない。


なら、光堂リンの場所には?


異世界には?


誰にどう発露するかもわからない魔法や運動能力があって、そこには男女も人種も関係ない。


だからこの社会に男尊女卑も女尊男卑も、人種差別もない。


なら、なんの差別がある?


答えを言うなら、魔法のような力を持つもの、持たないものに分けられることだ。


役立たずは奴隷に、力あるものは王様に。


彼らの社会に必要なのは、才能だ、先天性だ。


先天性が重視される社会で、人が持つ先天性による差別は、成り立ってしまうのか?







「ここから先が、魔王領になります」


「あんま変わんないけど」


馬車が揺れる。


でも馬はここにいない。


代わりにライオンが馬車を引いている。


多数の馬車が、多数の動物に引かれている様は壮観だ。


アカリガの案内によれば、ここから先は誰かの領土と決まっているらしいので、最悪襲われるらしい。


「私が顔見知りなのは、魔王だけなので」


「そんなものか」


「それより、私たちの手柄を本当に彼らにあげていいんですか?手柄や名声に固執しそうな見た目に見えますけど」


「いいですよ別に、今はどうでもいいです」


「そうですか」


自然豊かな、言ってしまえば放置された自然の中を馬車は歩くので、やたらと揺れる。


「ねえ、リン」


ヒヨドリィナが馬車ないから出てきて、私のそばに来る。


「魔王の文化って、そんなに凄いの?正直後ろの人たちの文化を超えそうにはないけど」


魔物に対する偏見混じりのそれを、左へ受け流す。


「アカリガ」


「魔王は、過去の人との戦争で活躍した人でもあり、人から大量に奪うという行為をした方でもあります」


「へえ」


リィナの適当な相槌が混じって説明が始まる。


「その中でも特に目を引くのが書物。一番人を殺した彼は、当時の王都まで攻め込み、そこで最先端の本を何冊も手に入れた」


「うん」


「だから彼は人間のテキストを使い、文化を組み立てることが出来たのです。教育も、技術も、酒や娯楽も。少ない集団の話だけで作られた技術、数多のテキストで培われた文化のどちらが優勢かというのは、言わなくてもわかりますよね」


「ええ」


「だから緑の龍が言ったことは正しいのです。より技術を発展させるには絶対的に論文的なテキストは必要で、魔王が持つ昔のそれと、人類を滅ぼせば手に入る最先端のものがあれば、人間のような形での技術の発展ができる」


「わかった」


馬車は相変わらず崖が見える位置を走っている。


これら全部が戦争の跡地だと、そう言われて信じられるほど、よく出来ていた。


人の手を離れているから、崖は崖だ。


しかし十字に刻まれた崖もある、逆に起伏した大地が結果的に崖を作っていたりもする。


戦争、人と魔物の戦争。


昔の人間は、今のよりももっと強かったのだろうか。


「人間を滅ぼして、この星は魔物に溢れることになるでしょう。そして文明は発達する」


「突然どうしたの」


アカリガが、なんとなくつぶやいた。


「経済が主体になろうとも、腕力が主軸になろうとも、格差は出来てしまう。魔物という、種族差が人より顕著に現れてしまう彼らだから」


それはそうなのだろう。


「だから、差別が起きて、蔑まされて、また私が呼ばれる」


差があること自体は、なんら問題はない。


それは社会に多様性を生む役割でもあり、社会を成長させるために使えるからだ。


分業、支え合い、適材適所。平等でもないし、むしろ差別的でもあるその言葉が、多様性を支えている。


けれどこの世界は、それ以前に違うものを差別する。


自分より劣ってる物を殺す。


奴隷という身分を与え人権を奪う。


だから発展しない。


つまり、差を意識してそれを発展させるために使うのが、現代の地球社会が目指すモデルである。反対に、差を意識せず違う物全てを拒絶するのが、人種や種族差をなんとなくで感じてしまうこの星の社会なのだ。


自分が障害者だと分かれば、障害者としての生き方を考えるだろう。


そのためのモデルは世の中にたくさんある。


社会は障害者であろうとも受け入れる。


けれど障害者という括りが無くて、ただの変な人だと扱われていれば?


それはただ劣った人と排除され、数多の犠牲を生む体制なのが、格差を意識しない社会なのだ。


「なら、残って教育でもすればいいのでは」


「けれども私は強くなりたい。魂喰らって、この世の神ともなりたい」


そのために差別された者達の恨みが必要ではある。


「悩ましいね」


「人間は教育で先天的なものは案外どうにかなりますが、魔物はそれすら叶わない」


「人を滅ぼすの、辞めたら?」


「契約を達成できなければ、私は死ぬという条件が課されているので無理ですね」


「そっかあ」


谷がなくなり、森が見え始めたその先に、城があった。


メルヘンチック、そういう言葉が合うそのお城は、魔王が住むという雰囲気たるものはあってくれない。










初めまして、とも言わせてくれなかった。


ただ減圧に、寄った眉がこちらを見ていた。


「貴様、久しぶりに現れたと思えばなんだこれは」


私の横、レッドカーペットの真ん中に立つアカリガが、攻めた視線を向けられている。


魔王というのはこう、現実で見てしまえばただの怖い人だ、企業の社長だ。


「人間を滅ぼそうというのだから、挨拶に来ました」


「なんだと?」


人の体、けれども肌は青紫、長い黒髪、おでこに生えた二本の角。


威厳あるローブを見に纏い、背後にある彼の身長と同じほどの大剣がきらりと輝く。


「そういう契約で呼ばれたというのもありますが、第一は彼ら、辺境の魔物のためでもあります」


「……」


「一度は断ったそうですが、彼らの魔王領への居住、そしてこことの交流を認めてもらうために、彼らは人を滅ぼすと言っています」


嘘だ、言ってない。


「其方は今だに復興中。今すぐ人を滅ぼして、魔物の支配を強固にしたいが、それが出来るほどの戦力もない。それの代替え品を私たちが勤めようというのですから、悪い話ではないでしょう?見返りも大したものではないですし」


「……わかった」


玉座に座り、上から見下ろす彼は、やや考える。


「けれども、こちらにも都合、無碍にできない先客がいる」


それは誰ですか、そう聞く前に彼は従者にその者を呼んでくるよう伝えた。


そして来たのが、まさかの知り合い。


「カゲノキリツグ!」


「光堂リン!アカリガ!?」


旅行先で何度か会った影が、ここにいた。


でも影というよりは、悪魔だ、それこそ隣にいるアカリガの色をそのまま反転させたような。


「悪魔だったんだ、キリツグ」


「そうみたいだ、記憶を取り戻したのは最近の話だけど」


悪魔が死ねば影になる、幼児退行すると考えれば、死にたくないのも頷く。


「なんだ、知り合いか。だったら協力して人間共を滅ぼして、財宝を奪って来い」

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