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金色の旅路  作者: ガエイ
第四章 天のサグメ
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第四十七話「ラヴェルの光」

 神々しく輝く光の世界。瞼を開けようにも眩しくて何も見えない世界。

 ラヴェルはその先に一つの影を見つけた。


「眩しい……アスカちゃんの後にサグメ様の能力を使って貰ったけど……。ここは……?」

 何も目標物がなく、上下左右も分からない空間で唯一ある影に向かって一歩ずつ歩みを進めると、そこには見知った顔の人物が立っていた。

 それは鏡に写したようにそっくりなラヴェル本人だった。


「あなたは……!?」

「私はアンタ、アンタは私。キャハハハ! 驚いた?」

 もう一人のラヴェルはその場でラヴェルのことを嘲笑うかのように高笑いした。

「アンタってさぁ、ホント面白くないよねぇ? クソ真面目だけが取り柄ってやつ? 大それた力を持ってるからって調子に乗ってるのか知らないけどさぁ。ホントはステラとか、他のみんなのこと下に見てんでしょ?」

 もう一人のラヴェルはバカにしたような、下劣な態度を取り、ラヴェルを罵った。


「ちがっ……! そんな事はありません!」

「何が違わないのぉ? いつもステラの事をペットみたいに扱っててさぁ? 他人から優しいって思われたいのかもしれないけど、それって傲慢で人を下に見てバカにしてるってことでもあるのよぉ?」

「私はステラちゃんのこと、そんな風に見てません!」

「他の仲間にしたってさぁ、防御しか出来ないバカに、教えなきゃ能力を制御すら出来ないバカ、ヘラヘラして何も考えて無いバカ。バカバカバカバカ、バカばっか」

「み、みんなのことを悪く言うのはやめてください!!」

「あら? これ、みんなアンタが心の奥底で思ってることよ? 最初にいったでしょ? 私はアンタだって、全部わかってるんだから」

「そ! そんな事はありません! みんな私の大事な仲間です!」

「ほーらぁ出た出た、クソ真面目。アンタってホントそれしか無いよねぇ? 表面だけ取り繕ってさぁ。父親のことだってそう。北へ行きたいっていうのは旅がしたかっただけ、父親なんて理由は二の次ぃ。都合の良いキッカケが向こうから来たから父親を理由にしてそれに乗っただけに過ぎないんでしょ」

「やめてください!!」

「やめないわよ? アンタが認めるまで。私はただアンタが思ってることを私は言ってるだけなんだからさぁ」

「そんな……。私はそんな事は思ってない……」

 本物のラヴェルは膝をついて、そのまま四つん這いになって泣き始めてしまった。

 事実ではない。事実ではないが、全く存在しない想いではないという否定も出来ない自分が悔しかった。

「あーあ、泣いちゃったぁ。泣いたってことは事実だって認めたわけだ」


 もう一人のラヴェルはつまらなさそうな顔で本物に近づき、顎を持ち上げて涙でぐしゃぐしゃになった顔を拝んだ。

「弱っちいやつ、それじゃあ、このままアンタを頂いてアタシが『本物』になろうかしらね」

 もう一人のラヴェルが勢いよく腕を振りかぶると水でできた三叉の槍が現れた。

 しかし、それを振りかざした瞬間、どこからともなく声が聞こえてきた。



『優しさは料理であれば素材の一つに過ぎぬ! 他のものが無ければ料理にはなりえぬことを知れ! 優しさ以外のものを持つがよい!』



 あのサグメという鬼の声だった。

 まるで心を覗かれているようだった。自分の弱さを見られた、そんな恥ずかしさを感じた。


「優しさ以外……?」

 ラヴェルは泣きじゃくった顔を上げて、もう一人のラヴェルを見つめる。

「そっか……。あなたの言う通り、あなたは私の一部だったんですね……」

 ラヴェルは立ち上がるともう一人のラヴェルを抱きしめた。


「今までごめんなさい。あなたを独りにさせてしまって……」

「な、なによ急に!」

 もう一人のラヴェルが持ってきた三叉の槍はただのまずとなって地面に散った。

「私は無意識のうちに自分の嫌らしい部分から目を背けて、良い子でいようとしていたのかもしれない……。いや、目を背けていた。」

 ラヴェルはか細い声でもう一人のラヴェルに語りかける。


「傲慢さ、無慈悲さ、他にも強欲だったり怠惰だったり、そういった負の感情。私が抑えていた感情をあなたが抱えていてくれたんだね」

 力強くもう一人のラヴェルを抱きしめると、みるみるうちに二つの身体は融合していった。

「やめろ! 私を取り込むな! 私を殺すんじゃない!!」

「駄目だよ、あなた言ってたでしょ、あなたは私だって。あなたは殺すんじゃない、私の中で生きていくの。私は強欲さを覚えたからあなたを従える、私の中で飼い殺しにしてあげるね……」


 もう一人のラヴェルに向かって最期の微笑みを見せると、二人は完全に融合し、本物のラヴェルのみが真っ白な空間に独り残った。

「これからもよろしくね、もう一人の私……」

 祈るように深く目を瞑り、再び瞼を開けるとそこには屋敷の天井が見えた。

 



「お気づきになられましたか?」

 キジナがラヴェルの顔を覗き込んできた。

 ラヴェルは個室の真ん中に敷かれた豪勢な布団に寝かされていた。

「……ここは?」

「当屋敷内の個室でございます」

「他の皆も?」

「はい。しかし、皆様まだ自らと向き合うために眠ってらっしゃいます」

「じゃあ、私が一番乗りってことですか?」

「はい。眠られてから一週間程ですが、他の方々はまだ目覚めておりません。レイラ様は皆様が目覚めるのを広間でお待ちになっております」

「ご気分はいかがですか?」

「うん、サイコーな気分です! だって、皆に勝っちゃったんだから、皆を出し抜いての一番乗りってこんなに楽しいんだって知っちゃったんだもの」

 ラヴェルは小悪魔的な笑みを浮かべると、レイラの待つ広間へと足を運んだ。


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