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金色の旅路  作者: ガエイ
第一章 ラヴェル=エミューズ=モーリス
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第二十話「ラヴェル=エミューズ=モーリス」

 本来はアスカを送り届けるはずだったが、次の旅の了承を取りにウリウリ村に戻ってくることになってしまった。

 流石に命を失うという話や二度と帰ってこれないかもしれないという話をしたらスウェプトさんも強く抵抗していたが、アスカも負けじとワガママを言い続けてスウェプトさんが根負けして、なし崩し的に了承を得ることとなった。

 酷い光景を見た気がする。


 そんなこんなでめでたく? 二人共関係者の了承を得てこの世界を旅立つ準備ができた。

 目立たないようにウリウリ村から少し離れた森の中に移動をしてきた。

 ラヴェルには事前に移動の仕方――つまり強い気持ちを持って死ぬことという方法を伝えてあるが、アスカには魔法抵抗力の関係で伝えることが出来ない。つまり、アスカは今から自分が死ぬことを知らないのだ。

 もちろん、全てが成功したあとではアスカにも世界の理を伝えることが出来るくらいの魔法抵抗力が備わるから、全てを打ち明けることができるだろう。


「アスカ、魔法使いは喋ってはいけない事があるのは知っているでしょ?」

「もちろんよ、喋った側が死んでしまうってやつでしょ」

「そう、私達の旅の行き先も行く方法もそのために教えることは出来ないわ。だからあなたには何も説明できないままだけどいい?」

「いいも何も今更やめておきまーす、なんてこと言うわけ無いでしょ」

 仁王立ちして威勢のいい声で返事をする。

 彼女なら例えこれから行われることを伝えても同じことを言うかもしれない。

「そうそう、アスカ。地面に人が入れるくらいの穴を二つ空けてもらってもいいかしら?」

「ん? 別にいいわよ」

 アスカが指をパチンと鳴らすと、ズドンという音と共に縦横一メートル、深さ二メートルくらいの穴が二つ空いた。

「ありがとう、後で使わせて貰うわ」

「ん? よくわからないけど、どうも」

 アスカはよくわかっていないようだったが、ラヴェルはその意味がわかっているようで苦笑いをしていた。


「それじゃあ、ラヴェル、アスカ、準備はいい?」

「は、はい! 頑張ります!」

「いつでもいいわよ」

 ラヴェルは少しは動揺が見えるけど問題はないくらいだろう。

「それじゃあなんでもいいわ、強い想いを持つのよ。旅に行きたい、新しい世界が見たい、見たことないものが見たい、何でもいいわ」

 アスカとラヴェルが共に目をつむり、祈るように胸の前で手を組んだ。

「ステラ、お願いね」

「オッケー!」

 刃渡り二十センチ近くあるハンティングナイフを構えたステラは、くるりと一周りするとラヴェルとアスカの首筋に薄っすらと赤い線が浮かび上がった。

 そのままズルリと二人の頭が重力に任せて地面に落ちてゴトンという音を立てた。続いて身体の方も力が抜けたように無抵抗に地面に叩きつけられた。

 切れ口はあまりにも綺麗に切れているからか、切られたことに身体が気づくまで一瞬時間がかかり、一呼吸おいてから溢れんばかりの鮮血が迸った。

「多分痛みが無いように切れたと思うよー」

「ありがとうステラ、それじゃあ遺体を穴に埋葬したら、私達もこの世界を旅立ちましょ」

「はーい」

 二人の遺体をアスカが空けた穴に入れ、土で埋めて埋葬をした。

 アスカはウリウリ村の近くだから良いかもしれないけど、ラヴェルは地元から遠いので少し申し訳ない気がする。




 並行世界を繋ぐ青白く光る霧を出現させて中に入ると、光り輝く空間の中に巨大な樹木があった。これが世界だ。

 世界樹と呼ぶべきだろうか、すべての世界へと繋がる広大で膨大な広さを持つ空間だ。

 私達が出て来た場所は大樹の幹からはかなり離れた一本の枝の端だった。枝と言ってもその長さや大きさは私の数倍はある巨大な枝だ。

 本来はレイラフォードとルーラシードを出会わせるとこの枝が成長して二つ三つと枝を伸ばすのだけど……今回は仕方ない……。

「レイラぁー」

 声の聞こえる方を見るとステラが平泳ぎをしながら近づいてきた。

 この空間は上も下もない無重力とも違う不思議な空間だ。足元が地面だと思えば見えない地面になるし、泳ごうと思えば水中のように泳ぐことも出来る。

「ステラも問題なく来たわね、さぁ二人はちゃんと来ているかしら」

 周りを見回すとこの枝の近くには、二つの人影がフワフワと漂っているのが見えた。

「あそこかしら」

 人影に近づくと、それぞれ気絶しているラヴェルとアスカの姿が伺えた。よかった、ちゃんと精神だけの存在として無事に生き残ることが出来たようね。

「おーい! ラヴェルー! アスカー!」

 ステラが声をかけると二人とも少し目が開いた。

「……ここは」

 ラヴェルが寝ぼけた様子で目を開ける。

「……うぅ、なんだか首に違和感が」

 アスカも目覚めると真っ先に首を抑えた。

 無理もない、ついさっきそこは真っ二つに切られたのだ。いくらステラが綺麗に痛みもなく切ったとしても違和感は拭えないだろう。

「……レイラさん……。そっかここが話に聞いてた並行世界なんですね……」

「正確には並行世界への玄関口の大樹よ」

「並行世界!? 何の話よ!?」

 アスカが驚いたようにこちらに大声を出すが、それは後々説明することにしよう。

「ここにいても仕方ないし、次の世界に行きましょ。次はそうね……私やステラの生まれた根幹世界にでも行こうかしら、私達の世界を紹介するわ。北に向かった旅みたいにきっとまた素敵な旅が出来ると思うわ……!」

「ちょっと! 私の質問に答えなさいよ! どうなってるのよコレ!!」

「はいはい、あとで説明してあげるから、まずは付いてきて」

 私が見えない足場を歩き出すと、ラヴェルも戸惑いつつもトトトと軽い足取りで後を付いてきて、ステラは隣を背泳ぎで進み、アスカは置いていかれないように苦戦しながらも前に歩き始めた。


 さぁ、次はどんな世界が待っているのかしら。


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