序章
私は並行世界の旅をする。
魔法がありふれた世界。
獣人がいるような世界。
電気が発明される前の世界。
ロンドンにビッグベンがあり、東京には東京タワーが、パリにはエッフェル塔、インドにはタージ・マハル、家庭にはタブレットやパソコンがあって、皆が携帯電話を持っている、そんな根幹と呼ばれる世界。
私が生まれ育った世界も根幹世界の一つだ。
私は二十歳になるころ生まれ育った世界で命を絶ち、肉体という枷から解き放たれ、精神だけの存在となり並行世界を旅する『世界を渡る者』になった。
根幹世界という大樹から伸び、分かれ育った並行世界。
その枝葉はやがて細くなり育たなくなる。
そんな育たず閉じてしまった世界は『愛』という栄養で再び枝葉を伸ばし、新しい並行世界を生み出す。
私の使命は世界に選ばれた運命の男女に『恋』をしてもらうこと。
世界に一人ずついる運命の男女は、出会う事で『恋』をして『愛』を育む。
親愛、信愛、深愛、最愛、遺愛、恩愛、敬愛、慈愛――『愛』の形は様々だ。
様々な並行世界を旅をして、様々な出会いや別れを経験し『愛』を生み出し、新たな並行世界を生み出すという使命を果たす。
これは金色の髪を持つ女性である私、レイラ=フォードの旅路を記した物語だ。