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プロローグ
俺は産まれてすぐ親兄弟と引き離された。
まだ目が見えない俺はあまり聞こえない耳で遠くに母の声を聞いていた。
「〇〇!〇〇!!」
母は産後まもなくの疲れ切った体から、必死に声を絞り出して俺の名前を叫んでいた。
俺はこれからどこへ連れて行かれるのだろう。
さっきまで隣りにいたはずの母も兄妹も居ないことに、俺は恐怖を感じずにはいられなかった。
人間は震える俺をケージに入れ、そのまま車に乗せた。
知らない匂い。
知らない空間。
俺は帰りたくて叫んだ。
そんな俺を無視するかのように車は発進した。




