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88・道中の問題事は増える一方だが・・・

 リータの助言もあり、道中で少しずつお金を使っていきながら、旅路を楽しんでいた5人。

時には泊まった宿でちょっと贅沢をしたり、旅路に必要な雑貨を取り揃えたり・・・で、思ったより上手く、お金を有効活用できている。

 やっぱりラーコの存在が大きかった。

ラーコは5人のやりくりをじっくり観察して、必要な物か否かをしっかり見極められる。

 厳しい環境下で、グルオフと共に生活する為に身についたスキル。

それは、Lvでは決して表せない、彼女の真の実力。

 戦いには使えないが、5人の生命線をしっかり繋ぎ止めている、大事な力。


 ラーコだけではない。グルオフは覚醒者ではないものの、相手が子供でも大人でも、相応の対応が

 できる。

心配されれば、笑顔で返事をする。危なそうな人には、決して近づかない。

 そして、4人に対して、色々な気遣いをしてくれる。

宿の部屋を決める時も、性別を考えて『2部屋』を提示したり、誰かが空腹を隠している事もすぐに分かる。

 (一体どんな事をすればこんな技が身につくんだ・・・?!)と思えるくらい、グルオフは気配り

 上手。

それこそ、国民全員に目を向け、耳を傾けられる、人をまとめるリーダーとしての素質がある。

 翠の場合、RPGゲームで幾度もパーティーを築いているものの、実際の人間をまとめ上げられる自

 信は、これっぽっちもない。

正直、クレンとリータが共に旅路を歩いてくれる事が、翠にとっては『奇跡』だった。

 でも、仲間がどんなに増えても、何故か主導権は自然と翠に譲られてばかり。

仲間が増えていくと、そうゆうプレッシャーも抱えなければいけないのは、予想外だった翠。


「・・・そうだね、旅路仲間も結構増えてきたから、そろそろ部屋の分割も考えないとね。」


「私はいつも通り、グルオフと一緒で。」


「じゃあ私もいつも通り、クレンとリータと一緒で。」


「それじゃいつも通りじゃん。」

「それじゃいつも通りですよ。」

「それじゃいつも通りじゃない?」


 クレン・リータ・グルオフが同時に突っ込む。その様子を見た宿屋の主人が、思わず吹いた。

事情が分からなくても、こんなに綺麗に同じタイミングで、同じ言葉を突っ込んでくるなんて、まさにコントの世界。

 しかし、翠もラーコも、本当に無意識な発言だった。

やはり、グルオフを守れるのはラーコしかいない。

 でも、そうなると自然に、『2対3』になってしまう。


「僕と同性のクレンさんとリータさんで、部屋を一緒にしてもらったら・・・」


「うーん・・・・・


 ・・・・・いやな、嫌・・・・というわけじゃないんだ。ただ・・・・・」


「『ただ』?」


「・・・今までずっと、5人で一緒に夜を過ごしてきたから、今更部屋を分ける・・・っていうのも

 ちょっと・・・」


 クレンのそんな純粋な発言に、4人は顔を見合わせ、全員が(それもそうだ)と思った。


「すいませんっ! 

 やっぱり『大部屋一つ』にしてください!」


「はいよっ!」


 翠が宿屋の主人に向かって、ペコリと頭を下げて訂正する。

宿屋の主は少し呆れながらも、5人の仲の良さは、他人が口出しできるものではない事を悟り、5人を大部屋へと案内する。

 しばらく野宿と宿を往復する生活になる為、宿で十分に睡眠を取っておかないと、後々の野宿が辛

 くなってしまう。

宿に泊まった際は、できる限り疲れを癒して、次の野宿に備える、短いが大事な期間である。


 部屋に通された5人は、しばらく各々のベッドで大爆睡する。

野宿も特に問題なかったのだが、体や心は安心して落ち着ける場所を望んでいた。


「はぁーぁぁぁぁぁ・・・・・」


「グルオフ、なんだか50手前のおじさんみたいなため息だね・・・」


 その翠の発言に、全員が大爆笑する。

だがグルオフは、反応する気もないのか、そのまま寝入ってしまう。

 皆の予想通り、やはり序盤に飛ばし過ぎたグルオフ。

なるべく最寄りの町や村で休憩を入れるように心掛けている為、道中の体力の使い方も考えやすい。

 ある意味『マラソン』と同じである。

体力の使い方は計画的でないと、後々苦労するのは自分自身。

 一方、ハイテンション過ぎて、疲れ果てているグルオフだが、その寝顔はとても優しかった。

明日は、どんな景色が見られるのか、どんな出会いが待ち受けているのか。

 楽しみで仕方ない気持ちが、寝顔にまで染み出している。

まだまだ元気そうなグルオフに、4人はただただ尊敬の眼差しを向ける。

 野宿中のご飯も楽しんでいたグルオフ。木のや果実の他にも、森に住んでいる野生動物を狩って、

 お肉も調達した。

そしてグルオフは、『食べられる部位を摘出する段階』で、「自分も見ていたい」と言い出す。

 4人は止めたのだが、「これから先の旅路の勉強です!」と言って聞かないグルオフ。

子供らしく、好奇心旺盛なのは別に構わないが、4人はグルオフの行動や言動に、若干ヒヤヒヤして

いた。

 いきなり『子連れ』になった気分になる4人。改めて、『両親の凄さ』を思い知った。

グルオフに『子供らしさ』を望んでいた4人ではあるが、何にでも興味が向いてしまう・・・というのは、一周回って恐ろしい。

 どの世界でも、やはり『育児』や『子育て』は難しい。

ゲームの『ハードモード』や、『エキストラモード』なんて笑えるレベルに。

 だからこそ、『平凡』に成長しただけで、偉大すぎる両親の功績。

翠は、ちょっぴり旧世界にいる両親の事を思い出し、少しだけ切なくなる。

 でもその切なさも、4人がカバーしてくれる。だからこそ、彼女はまだまだ歩けるのだ。

道中にモンスターと幾度か遭遇しても、戦闘自体はそこまで苦戦しなかった。

 だが、グルオフの好奇心は、野生のモンスターでさえその対象となっている。

だから、(自分達の知らない間にグルオフが大怪我をするんじゃないか・・・)と思うと、いつもよ

り早いスピードで退治する事を意識する4人。

 グルオフは戦闘が早く終わると、ちょっと残念な様子ではあったが、今は我慢させるしかない。

・・・いや、グルオフが大人になってからも、その立場上、危険な存在からは逃げるように教育をす

るべきなのかもしれないが・・・

 これから先、グルオフに色々と教えなきゃいけない事が増えているような気がして、苦笑いを隠せ

 なかった4人。

モンスターに対しても、人間に対しても、平等に接してくれるのはありがたいが、まだグルオフは外

の世界に関しての危機意識が低い。

 まだ色々と油断ならないこの状況だが、以前よりも楽しそうにしているグルオフやラーコの姿を見

 ていると、『不安』よりも『期待』が高まってしまう3人であった。

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