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8・Lv(レベル)

「へぇー。お嬢さん、また随分頑張ったもんじゃないか!」


 翠のレベル表示に浮かんだ数字は、『14』

 スライムやゴブリンで得られる経験値がどれだけのものか、翠はまだ分からないものの、序盤でたった1人の状態で、レベル10超えというこの状況は、翠が何十回とプレイしてきたゲーム歴の中では、かなり珍しい展開だった。

 『周回プレイ』『RTAいわゆるタイムアタック』の他にも、『裏技』や『バグ技』にも手を出している翠だが、何の細工も無しに、一発本番の舞台でここまでスイスイとレベルが上がっている事に、一周回って『違和感』を感じている。 


「あれ? 

 お嬢さん、レベル上がったのに『新しい技』を覚えないのか?」


「あ・・・あぁ・・・すいません・・・

 まだ全然分からない状態で旅を始めちゃって・・・」


「おいおい・・・それでよく14もレベルを上げたもんだな・・・」


(本当だよ・・・)


 この世界でも、翠がプレイしていたRPGと同様、『レベル』が上がる毎に『新しい技』が覚えられる仕組みになっているらしい。

 翠は会話の中で、そうゆう仕組みを自然と学んでいくしかない。

 しかし、ゲーム好きな翠にとっては、憧れていた世界へ飛び込む事ができた喜びの方が大きかった。

 今までに何十本ものゲームをプレイしてきた翠にとって、『レベル』も『技』も聞き慣れた単語である。

 とりあえず、『新しい技』に関しては、村に着いてから考える事に。


「あの・・・その『シカノ村』では、モンスターの素材とかを、換金する事はできますか?」


「あぁ、もちろん。その素材を売れば、少なくとも宿代はちゃんと払えると思うぞ。」


「色々と教えて頂いて、本当にありがとうございます。」


「いえいえ、お嬢さんも色々と気をつけるんだぞ。最近では、ここら辺でも凶暴なモンスターが出始めたんだ」


「そうなんですか?」


「あぁ、最近のモンスターは、本当『反抗的』で困っちゃうぜ・・・

 お前さんも、寄り道しすぎないようにな。ほら、行くぞ小僧。」


 おじさんの1人に促され、自分の足の上に置いていた荷物をもう一度背負い、翠に対して頭を下げる青年。

 その瞬間、翠は見た。その青年が、『普通の人間』ではない証拠を。



その青年の耳が、


尖っていた事に。



(わぁ・・・・・

 生で見るエルフって、やっぱりカッコいい・・・

 人間とは違う、不思議な魅力があるなぁ・・・)


 ゲーム好きな翠なら、彼がどんな種族なのかすぐに分かった。RPGならど定番の種族だ。


 彼は『エルフ』だ。


 尖った耳の特徴以外にも、『綺麗な金髪』だったり、『整った顔立ち』だったり、エルフの共通点は多く、翠はもっと彼に話を聞いてみたかったのだが、彼自身がだいぶ辛そうな表情をしていた為、声をかける事すらできなかった。

 ただ、先程の出会いに、翠は釈然としない事がいくつもあって、思わず首を傾げてしまう。


(・・・そもそもあのおじさん2人って、エルフじゃなくて、『普通の人間』だったよ・・・ね?

 『人間』と『エルフ』が結ばれて子供が生まれた場合でも、エルフって普通に生まれるの?


 ・・・それって、前で本で見た『ハーフエルフ』・・・ってヤツ?

 いや・・・それにしてはあの男の子、しっかりエルフだったっていうか・・・


 ・・・じゃあ、『養子』とか?

 いやぁ・・・それにしては『扱い』が・・・)


 猟師2人が、別の村か町に行って来た帰りである事は、何となく予想はできた。

 それなら、それならあのエルフの青年は何だったのか。単なる『荷物持ち』なのか。

 2人はあまりあの青年を大切には扱っていない様子だった。

 一瞬「どちらかの息子さんですか?」と聞こうとした翠だったが、2人の態度も青年の態度も、妙に引っかかる。

 あの青年は、翠と2人の会話を、ただ黙って聞いているだけだった。

 何処まであの重い荷物を背負って此処まで来たのかは分からないが、とにかく『過労』にしか思えない待遇。

 あの2人のどちらかが『雇用主』なのか・・・とも考えた翠だったが、それにしては待遇が悪すぎる。

 まさに『ブラック』にしか思えない光景。しかし、2人は平然とあの青年を使っていた様子。


(・・・・・はぁ・・・・・

 転生した先でも、こんな『真っ黒な社会』を見せられる事になるなんて・・・


 転生する前は、『ニュース』とかでしか目にしなかったけど、実際に見てみると・・・

 やっぱりキツイものがあるよね・・・

 それって、そもそも私が『この世界の住民』ではないから??)


 翠はこの『転生初の出会い』で、言い表せないくらい『深い闇』に触れたような気がして、一瞬身震いした。

 スライムやゴブリンと退治した時は、そこまで恐怖を感じなかった翠だった。 

 しかし、『社会の闇』はどの世界でも必ずある事を目の前で証明されて、翠は少しげんなりしてしまう。

 旧世界でも、翠はそういった『話題』や『事件』を毎日のように聞いていた。

 実際に見たわけではない、『創作』か『誇張』かもしれない。

 でも、ありえなくもないから、信じてしまうのだ。




「・・・そういえば・・・『あの人達』はどうしているのかな・・・?


 ・・・まぁ、いいか。今は自分の事を優先して考えないと・・・」


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