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79・声をかけてきた人物は・・・

「追手は来ない!!」


 突然後ろから声をかけられた翠は、飛び上がりながら後ろを振り返った。

翠のその反応に、声をかけた人もびっくりした様子。

 だが、彼女の顔を見ると同時に、今度は笑った。

彼女に声をかけてきたのは、翠よりも『若干年上』に見える青年。大学生の様な風貌。

 別に声をかけられるくらいなら、翠も「びっくりさせないでよー!」で返したかもしれない。

しかし、翠に声をかけてきた青年の姿を見て、彼女の顔は一気に青ざめた。

 明らかに青年の服は、『庶民の服』ではない。


 シャツ一枚に至るまでしっかりと縫われ、ほつれ糸もシワもない、真っ白なシャツ。

 上に着ているジャケットに縫われたボタン一つ一つは、ギラギラと光り輝く金製。

 靴に至っても、さっき磨いたばかりに見えるくらいピカピカ。

 しっかりしているのは服だけではない、髪もしっかりセットされている。


 それらを見ただけで、翠は第六感で『ピンチ』を察し、すぐさま逃げようとした。

だが、青年は彼女の腕を掴んで制止する。

 兵士相手なら振り払えるが、いかにも貴族・王族オーラ丸出しの人にそんな事をしたら、4人

 で一緒に考えた今後の方針が、水の泡になるかもしれない。

だからとりあえず、翠は腕を掴まれた時点で、思考を停止させる。それ以外にできる事はない。


「君、結構凄いね。『僕達の界隈』でも、君の事はだいぶ話題になっているよ。」


「・・・・・・・・・・」


「でも、君の腕の感じからして、君は・・・『女性』だよね?

 しかも、僕よりちょっと年下くらいじゃない?」


「・・・・・・・・・・」


「もしかして、ご家族と一緒に旅をしているのかな?」


 一方的に喋らせてはいるが、案外ペラペラと質問してくるその青年に対し、翠はかつての『陰

 キャ体質』がまた目覚めてしまい、とにかく黙っている事しかできない。

・・・というより、無闇に喋ってしまうと、相手の話を加速させてしまいそうで、手も足も出せない。


「まぁさ、兵士の言っている事もちゃんと聞いてくれないと、『上に立つ』僕らも困っちゃうわ

 けよ。

 君だって、せっかくの旅路に汚点が付くのは嫌でしょ?



 ・・・まぁ、無謀な君なら、『仕方ない』かもしれないね。」






 その言葉に、翠はふと転生前の記憶が蒸し返される。

そう、クラスメイトから散々言われ続けた嫌味。


「ゲームしか興味がない玉端さんなら、友達がいなくても『仕方ない』よねー」


「『仕方ない』よ、玉端さんはゲームでしか友達が作れないんだから。」


「友達がいないのは玉端さんの自業自得でしょ? 

 『仕方ない』でしょ。その責任を私達に押し付けられても困るだけなんですけどー」


 呆れられている『仕方ない』 憐れまれている『仕方ない』

でも翠自身、そこまで自分を哀れに思った事もなければ、蔑まれるような事もした覚えがない。

 翠はただ、ゲームやアニメを愛する気持ちを大切にしたかっただけ。

それくらい翠にとって、ゲームは大切な存在だったから。

 なのに、いつもクラスメイトから見限られ、笑われ続けた。

そして、クラスメイト達のお決まり文句は、大抵


『ゲーム好きだから仕方ない』だった。


 『ゲームが好き』

だから笑われる、見放される、突き放される。そんなの、到底翠には納得できない。

 だから翠は、『仕方ない』という言葉が嫌い。

何も知らないのに、分かろうともしないのに、見限られたような、見捨てられた様な言葉。

 自分の事を何も分かっていないのに、ゲームがどんな娯楽なのか、理解しようともしないの  に、勝手に軽んじられる。

それが翠には許せなかった。自分自身が侮辱されても構わない、でも大好きなゲームを侮辱されるのが辛い。

 そんな言葉の数々を避ける為、クラスメイト達とは距離を置いているのに、その行為ですら、

 「ゲーマーだから仕方ない」と言われる始末。

何をやっても『仕方ない』『仕方ない』と、勝手に諦められる。


 青年が翠に発したその言葉も、平たく言えば


「翠は『無謀』だから、兵士に対して歯向かうのも『仕方ない』」

「翠は『ゲーマー』だから、クラスメイトと仲良くできなくても『仕方ない』」


 そんな言葉、言われて気持ちいいものでもない。翠はついムカっとして、振り向いてこう言い

 放った。




「私は好きで兵士に歯向かってるんじゃないの!!

 兵士を従える立場の貴方が、何故それを理解できないの?! 

 国民の上に立つ立場の貴方が、何故それを理解できないの?!


 ・・・・・それこそ。


 貴方がそれを理解できないのも、『仕方ない』で片付けられる?

 それとも何か動機があるの?」


 翠のその訴えに、青年は悪びれる顔も見せず、にっこりと言葉を返す。


「・・・・・やっと。」


「??」


「やっと僕の方に振り向いてくれたね!」


「っ!!!」


 その言葉に、思わず勢いよく後ろに下がる。

だが、それと同時に深く被っていた筈のフードが解け、青年に『顔』だけではなく、『首筋』も見せてしまう。


「あれ?! もしかしてその印って・・・!!」


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