表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/237

73・これからまた 忙しくなりそう

「何人もの探検家が、その幻の場所を探し求めて、手がかりが掴めたかどうか分からない・・・

 ってところで、噂は止まっていたの。」


 肝心なところで話が止まっているのも、もはやお決まりである。

結局のところ、誰も真相を知らない。それもまたリアリティに見える。

 ただ、ラーコブの話には、何故か納得できる翠。

世界史でも、よく『新大陸』というワードが記載されているが、実際はどうだったのか・・・なんて、見つけた偉人に聞かないと分からない。

 もしかしたら、単なる『見間違い』だったのか、それとも前に別の人が既に見つけていた

 か・・・なんて、大昔なら調べる術なんてない。

だが、科学や技術が進んでいも、『分からない世界』や『分からない場所』はある。


 宇宙に人間は一応行けるが、人間誰しもが行けるような場所でもなく、謎が謎を呼ぶ空間。


 宇宙以上に分かっていない・・・とされる深海に、自分達の常識を越えるようなモノがあって

 もおかしくはない。


 だからこそ、人間は未知の世界に憧れを持つと同時に恐怖する。

誰しもが新たな世界に踏み込めるわけではない、もしかしたら自分達の常識を疑うような出来事が待ち受けているかもしれない。

 誰しもが憧れるが、誰も踏み込めないような、ロマンと危険が詰まった世界。

足を踏み入れた事がないから、誰も確かめた事がないから、『噂』となって語り継がれる。

 もしその場所が解明されれば、『未知』という単語が使えなくなる。

『UMA』や『妖怪』も、正体が詳しく判明されてしまっては、もう『幻の存在』でもなくなってしまう。

 それが嫌な為、あえて探さない、見つけない・・・のかもしれない。

これも一種の『ロマン』である。


 しかし、今回に至っては、探さなければいけない。

何故ドロップが、そんな未知なる地を、資料の中へわざわざ隠していた、その意味を。

 コエゼスタンスのメンバーであったドロップが、まさか『悪戯』か『冗談』で、こんな分かり

 にくい謎を残すわけがない。


 ドロップは知っていたのか、その未知なる地を。

 ドロップは何を伝えたかったのか、その先には何があるのか。


 そう考え出したら、もう色々と考えが膨れ上がって、まとめたくてもまとめられない。

5人はあれこれと考察を練り、色々と可能性がありそうな事を紙に並べた。

 だが、やはり『実在しているか・否か』で、今後の方針が決まる。


 せっかく3人が借りた宿だが、3人は泊まらずに地下で一夜を明かした。

5人の話し合いは夜明けまで続き、気がつくと全員熟睡している状況。

 一番最初に目を覚ましたラーコブは、あちこちに散乱する紙の山に唖然としていた。

あんなに色々と話し合って案が出たのに、結局は『下調べ』から始めなければいけない。

 まだまだ前途多難である。


 それでも、ラーコブはこれからの行末が、楽しみでしょうがなかった。

今までに感じた事のない、『自分が確実に真相へ進んでいるような感覚』

 今までは、グルオフを守る事だけで精一杯だったラーコブにも、あれこれと物を考える余裕が

 できた。

そして、横で寝ているクレンの頬を撫でてあげると、無意識に彼女の頬を涙が伝う。

 弟の再会を改めて嬉しく思ったのもあるが、それ以上に、『申し訳なさ』で涙が出てしまう。

 「ラーコのせいじゃない」

昨日、散々翠に言い聞かせられても尚、せめずにはいられなかったラーコ。

 彼を見て最初に抱いた感情も、『後悔』だった。

だが、成長したクレンを、いち早く『自分の生き別れた弟』である事が認識できた・・・という事は


 ラーコも決して忘れていなかったのだ


 自分には、愛する弟、クレンがいた事を


 『家系』や『使命』に関係なく、たった1人の、大切な弟として・・・




「んぅ・・・・・」


「あ、ミドリ、起きたんだね。」


 ラーコの次に起きたのは翠。

彼女は肩を回しながら、ガチガチに固まった体をほぐそうと立ち上がった。

 だが、予想以上に体のコリが重傷で、立ち上がるのも一苦労。

それもその筈、結局5人は布団に包まる事もせず、硬い床の上にそのまま寝てしまった。

翠の頬には床のタイルの跡がしっかりこびりつき、床に触れていた皮膚の感覚がなくなっている。

 まるでロボットのように、カチコチと動く翠の様子を見て、ラーコは思わず笑ってしまう。

だが、ラーコも人の事を言えない。笑った拍子に前屈みになったのだが、何故か腰が曲がらない。

 そのまま2人は地面の上でのたうち回り、3人もその騒ぎで起きるが、結局5人まとめてその場

 でゴロゴロ回る。

でも、そんなひと時ですら、ラーコとグルオフにとっては、とても新鮮だった。

 いつも2人きりだった生活に、『3人』も新たな『家族』が加わったのだから。

いつもよりも賑やかな朝・・・ではなく昼に、ラーコもグルオフも、ワクワクする気持ちが抑えきれなかった。

 前途多難でありながらも、明日も明後日も楽しみになってしまう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ