表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/237

63・地下に響く『カミングアウト』

 これで、巨大ネズミの攻撃手段は限られた。

前歯は翠による攻撃と壁への衝突でボロボロ。前足はリータによって深傷を負わされている。

 リンとリータが、その巨大ネズミに近づいて来ると、翠は2人の後ろに、『もう2人の人影』を

 見つける。


「・・・・・あっ、さっきの男の子!」


「よかった!! 無事だったんですね!!」


「もちろん! 覚醒者を舐めないでよね!




 ・・・・・で、『隣の女性』は・・・??」


 少年を隠すようにして、3人の様子を窺っている女性。

翠よりも若干年上に見えるその女性に、また翠は見覚えを感じていた。

 『あの時』はフードを被っていたものの、フード以外の場所は、『さっき会った時』と同じで

 ある。

しかも、あの特徴的な『紫色の瞳』まで一緒。明らかに同一人物であった。


「あの、貴女さっき、私と一緒に『キーメン』を食べた・・・」


「それよりも先に、『アレ』

 自分達で何とかしなさい。」


 巨大ネズミは、もう虫の息である。

3人は、またトドメを刺すのを譲り合ってしまい、結局リンがトドメを刺す事に。

 別に3人は、『後味が悪いからトドメを刺したくない』わけでも、『恨まれるのが怖いからト

 ドメを刺したくない』わけでもない。

単純に、『譲り合っている』だけなのだ。

 だが3人が揃いも揃って遠慮している姿に、少年とその女性はちょっと呆れていた。

トドメを刺す事になったリンが、再び放った矛、今度は『脳天』を貫く。

 ようやく巨大ネズミは絶命して、翠はドッと襲ってくる疲れに、思わず腰を抜かしてしまう。


「・・・・・それよりも、リンとリータは、どうして此処が分かったの?」


「ミドリが宿に戻って来ないから、心配になって2人で様子を見に行こうとしていたんだ。

 もう酔いは覚めたし、自分達も散策したかったし。」


「そうしたら、急に王都全体がユラユラ揺れ始めて。

 リンさんと僕もでしたけど、市場にいる人達も、相当焦っていました。」


「それで、自分とリータが本気で焦ってミドリを探していたら、その子供と女性が話している内

 容を、偶然聞いたんだ。


「地下に巨大ネズミが現れて、今は『ヒーラー』さんが食い止めてくれている。」


 ってさ。

 それを聞いて、自分とリータはすぐにミドリだと確信して、2人に無理を言って連れて来ても

 らったんんだ。」


 そう言って、リンは倒れている翠に手を伸ばし、彼女はその手を掴んで引っ張ってもらった。

少年は、まさかヒーラーがこんな大きなネズミとの攻防に、互角に戦えていた事が、まだ信じられない様子。

 中盤ちょっと危なかったものの、地下道が陥没する最悪の展開は免れた為、翠は一息つく。


「・・・・・ありがとう、『覚醒者』

 此処は私達の、『最後の砦』と言ってもいい場所なんだ。だから此処が人目に晒されるのは、

 非常にまずい。

 幸い、上にいる人達は「地震か何かだろう」という事で片付いているみたいだから・・・」


 翠は、女性の話に色々と突っ込みたい気持ちはあったのだが、その女性は少年の頭を撫でなが

 ら微笑んでいた。

だが翠のとって、どこから突っ込めばいいのか分からないのは、もはや『お決まり』になっている。


「・・・やっぱり、私達が『覚醒者』である事を、見抜いたんですね。」


 リータはスピアに付着した血をハンカチで拭きながら、その女性に問う。


「当たり前でしょ、あんな『無茶な戦い方』ができるのは覚醒者しかいない。

 普通の剣士や魔術師なら、とっくに餌になってたわよ。」


「あはは・・・

 まぁ、私が好きでこの戦法にしているわけなんですけどね。

 遠くからチマチマ相手がくたばるのを待つなんて、効率が悪すぎますよ。

 だったら遠距離で一撃で倒せるような魔法が欲しいです。」


「それは・・・無茶苦茶かもしれないけど、私も欲しい。」



「・・・・・ブフフッ!!」


 2人の物騒な会話を聞いていた少年は、思わず吹き出してしまう。

2人は別に、面白い話をしたいわけではない、ただ率直な気持ちを話しただけ。

 しかし、話を聞いていたリンもリータも、同時に同じ事を考えていた。


 『似たもの同士・・・』『似たもの同士・・・』




「・・・・・・・・・・・・・・・


 ・・・・・あのさ・・・そこの・・・


 『リン』っていう男の子。」


「はい?」


 ついさっきまで、翠と和気藹々とした会話をしていた女性が、急に真剣な顔になる。

そして、今度はリンの方に目を向けた。その瞳の色に、リンも気づいた様子。


「わぁ、自分と同じ『紫色の瞳』なんですね!」


 そんなリンの純粋な言葉に、彼女はちょっとだけ呆れ顔になる。

そして、次に彼女から発せられた言葉に、その場にいた全員が悲鳴に近い声をあげる事に・・・


「・・・・・ねぇ、リン君。

 ひょっとしたら・・・・・いや、ほぼ確実かもね。」


「???」


「いい、落ち着いて聞いて。私はね・・・・・






 貴方の姉よ。」


「・・・・・・・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・・え・・・・・???」


「えぇぇぇええええええええええぇぇぇぇぇえええええ?!!」

「えぇぇぇええええええええええぇぇぇぇぇえええええ?!!」

「えぇぇぇええええええええええぇぇぇぇぇえええええ?!!」

「えぇぇぇええええええええええぇぇぇぇぇえええええ?!!」


 4人の絶叫は、地下道に響いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] リンとリータがよく混同してます 翠が緑によくなっています
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ