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62・狭く暗い道での戦い

「ギィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」


「君っ!!! 下がってて!!!」


 激昂して襲いかかってくる巨大ネズミ。

翠は少年の首元を掴んで後ろに投げ、ネズミの前歯を杖で防ぐ。

 勢い余って飛ばされてしまった少年だが、自分より遥かに大きなネズミを前にしても、そこまでパニックになっていない。

 普通、こんな化け物に襲われたら、パニックになるか気を失っている。

だが、少年・・・『も』、やはり驚いていた。

 杖一本で巨大ネズミに対抗するヒーラーなんて、ネズミが巨大になるくらい、摩訶不思議な話である。


「お・・・お姉さんっ!!!」


「いいからこっちは気にしないで!!! それより今すぐ逃げて!!!」


「はっ、はい!!! 今ラーコブを呼んできます!!!」


 少年は颯爽とその場から立ち去ると、獲物を1匹逃してしまった悔しさで、巨大ネズミの力が更に強くなってしまう。

 しかし、翠だって負けていられない。

翠は噛みつかれている杖に魔力を注ぎ込み、『炎魔法』を『あえて』暴走させ、ネズミの口の中で『爆発』を起こす。

 これには巨大ネズミも怯み、慌てて杖から歯を離す。

その時点で、もう巨大ネズミの立派な前歯は少し欠けていた。

 物理に強くなった翠の杖だが、魔法の技術もバランス良く上げていた翠。

やはり安定した戦闘をする為には、『物理』も『魔法攻撃』も平等に上げておくに尽きる。

 道中での魚人退治も重なって、翠のLvはもう『40』を迎えそうだった。

この世界のレベルの上限が一体どこまでなのか、翠はまだ分からない。

 でも、Lvが上がっていけば、ある程度の無茶でも通るようになる。

自分より巨大な相手を目の前にしても、力の差を見せつけられる。


「随分大きく成長したようだけど?

 それじゃあ的もデカくなってるわよねぇ!!」


 翠は杖の槍部分で、まだ慌てふためいている巨大ネズミの眉間を貫く。

だが、皮膚は安易に貫けたのだが、骨が硬いのか、矛の先端しか通らなかった。

 これではさすがにダメージにはならない。

その隙に、巨大ネズミは前足で翠を振り払おうとする為、彼女は咄嗟に避ける。


(・・・コイツ・・・物理は効率が悪いな・・・

 魔法に頼るしかないか・・・)


 翠が杖を構え直し、魔法による攻撃の準備をしていると、巨大ネズミはその大きな体を彼女にぶつけようとする。

 真正面にいる翠の視点からでは、まるで『巨大なトラックが突進してくる光景』である。

焦った翠は一旦逃げに徹し、曲がり角をもう一度カーブした。

 すると巨大ネズミは、そのまま壁に衝突。

その衝撃で、地下道自体がブルブルと震え、翠も少しよろけてしまう。

 天井からパラパラと石の破片が舞い降り、翠は目に入らないように注意する。

細かく砕けた石やガラスが危険なのは、旧世界の学校でよく行なっていた『避難訓練』で、耳にタコができるほど聞いていたから。

 しかし、まだ巨大ネズミは翠を諦めず、再び突進して来る。


 翠は焦った、このまま巨大ネズミが地下道の壁にボコボコ衝突していたら、遅かれ早かれ地下道自体が崩れ落ちる。

 翠も巨大ネズミも生き埋めになって、『相打ち』になってしまうかもしれない。

その上、地下道の上では、人々が普段通りに行き交い、普段通りの生活をしている。

 そんな最中、突然地面が崩れ落ちれば、被害者は数え切れないものになってしまう。

広い草原などで戦えば、そうゆう心配はせず、思い切った行動もできる。

 だが、今回は『場所』が悪かった。翠はすっかり油断していた、忘れていたのだ。

例え自分のLvや技術が相手に優っていたとしても、『環境』次第では不利になってしまう事を。

 着々と強くなっていく自分に、つい自分以外の事が考えられなくなってしまったのだ。

バトル漫画などでは、ナルシストで格上の相手に、格下の主人公が勝つために使う『常套手段』でもある。

 でも、まさかその『される側』になるとは思ってもいなかった翠は、久しぶりに冷や汗をかく。


(このまま戦闘を長引かせるわけにはいかない!!『短期決戦』でどうにかしないと!!)


 そう思った翠は再び杖に魔力を込め、もう一度『火属性の魔法』で攻撃しようとした。

 その直後・・・・・



 ビュンッ!!!


  ビュンッ!!!


 突然翠の真後ろから、『2本の矛』が飛んできて、そのまま巨大ネズミに突き刺さる。

ものすごい速度で飛んできた2本の矛に貫かれた巨大ネズミは、痛みで暴れ回る。

 しかし、翠にはその矛に見覚えがあった。

何故ならその矛は、『ついさっき』見せてもらったばかりの、『彼の新しい技』



「リンっ?!! どうして此処に?!!」


「自分だけじゃないよ!!!」




「ミドリさん、リンさん!! ここは僕に任せてっ!!!」


 そう言って、次に巨大ネズミに飛びかかったのは、ギラギラと目を輝かせているリータ。

まるで敵に突進するはちのように、スピアを眉間に差し込む。

 やはり翠の杖に装着されている矛よりも、リータのスピアの方が圧倒的に威力があった。

スピアの半分以上を巨大ネズミの眉間に突き刺すと、再び巨大ネズミは前足で攻撃しようとしてきた。

 しかし、リータは冷静だった。

リータは瞬時に眉間からスピアを抜き、その勢いのまま前脚を切り付ける。


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