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40・避難場所に来たものの・・・

(やっぱ井戸の下にあるだけあって、湿気とかが凄いな・・・)


 3人はロープを伝って井戸の下まで降りると、横穴が町長の家まで続いていた。

 井戸の水が枯渇したから通路になったのか、それとも井戸自体が『フェイク』なのかは分からない。

 だが、井戸の壁や床は、かなり滑りやすかった為、翠もリンも、降りるだけで何度も心臓が止まりそうになった。


(・・・こうゆうのって・・・幼稚園の時に遠足であったよね。アスレチックで・・・

 子供の時は楽しめたけど、もう楽しめるくらい純粋では無くなったって事かな・・・?)


「・・・ミドリ?」


「あぁ、ごめんごめん、早く行こう。」


 明かりがない為、翠が杖に光を灯しながら、なるべく早足で通路を歩く3人。

 あちこちから聞こえる「チュー チュー」と鳴くネズミの声が怖かったものの、そこはグッと堪える翠。

 ネズミを見た事なんて一度もなかった翠は、あちこちでチョロチョロと駆け回るネズミ達の影を見ただけで、思わず身震いしてしまう。

 『ネズミの模したキャラ』ならよく見かけるが、リアルのネズミというのは、『G』と同じくらい、嫌悪感を抱かずにはいられない。

 ・・・翠は『G』の方が嫌いだが・・・

 井戸の中は湿気の匂いとネズミの糞の匂いで、かなりの悪臭が漂っていた。

 途中何度も、3人はネズミの糞を踏みつけてしまったものの、早くリータの元に行かなければいけない。


 そして、長い長い地下道を抜けると・・・・・


「・・・行き止まり?」


「待って、リン。こっちにも何か仕掛けがあるのよ。」


 そう翠が言うと、町長は「ご名答」と言いながら、徐に壁を押し込む。

 すると、壁の一部が凹み、地鳴りのような『ゴゴゴゴゴ・・・』という音が響く。

 そして、行き止まりだった壁がズルズルと横にスライドしていき・・・・・


「わぁ・・・・・すご・・・




 ・・・・・って・・・アレ?」


 開いた扉の先、開けた部屋の中には、誰もいない。

 部屋の中は、シェルター・・・と言うよりは、『研究室』の様だった。

 部屋の壁を埋め尽くす本棚の中には、古すぎる上に専門的すぎて読めない本がズラリと並んでいる。

 机の上には『実験道具』もあり、旧世界の理科室にあるような実験道具とは比べ物にならないくらい、本格的な道具ばかり。

 本格的すぎて、使い方が全く分からない器具ばかりで、翠は思わず手に取りたくなってしまったが、

 今はそんな事より・・・


「町長、リータさんは?!」


「おかしい・・・・・


「何があってもこの部屋からは出るんじゃない!!」と念を押していたのに・・・


 ・・・・・まさか・・・?!」


 そう言って、町長はまた何もない壁へ駆け寄り、ペタペタと壁を触る。

 しかし、その最中にも、『壁の向こう』で大勢の人が話し合っている声が聞こえる。

 恐らくこの壁を動かせば、扉が開くのだろう。

 しかし、こうゆう仕掛けのある扉を、無理やりこじ開けようとしても、十中八九開かない。

 ある意味『お約束』である。




「・・・・・リン、どうやら戦わなくちゃいけないみたいね・・・」


「そうだね。

 ・・・あんまり乗り気にはならないんだけど・・・」


「それは私も同じ。」


 そう言いながら、リンは杖を構え、リンはというと・・・・・



『グルルルルルルルルルルルルルルル・・・・・』


「・・・リン・・・いつの間に・・・」


「へへへっ。」


 リンが召喚した『ヘルハウンド』は、リンに撫でられると気持ち良さそうな顔をする。

 こうしていると、『普通の大型犬』と言われても、別に不思議ではない。

 ただ、リンのヘルハウンドが、隠し扉の先にいる人々に気がつくと、口から炎を吐きながら威嚇をする。

 これには町長も怖気付いてしまったのか、瞬きを繰り返しながら後退りした。


「・・・町長さん、遅かれ早かれ、あの兵士達とは戦わなけばいけません。

 彼らに町から出るように説得したところで、素直に応じる・・・とは思えません。」


 翠のその提案に、リンも頷く。

 町長も、だいぶ悩んでいる表情ではあったものの、拳を握り締め、覚悟を決めた様子。

 町の代表者として、町を汚したくないのだ。しかし、このまま隠れ続けているわけにもいかない。

 リータが見つかってしまうまで、もう時間の問題なのだがら。


「町長さん、扉を開けたら、全速力でこの部屋の何処かに隠れてください。

 ・・・もしかしたら、『流血沙汰』になってしまうかもしれませんが・・・」


「・・・仕方ないよ、そうなってしまっても。責任は、全部俺が持つ。


 ・・・・・だから頼む。

 せめて・・・この町の住民の命だけは・・・


 ・・・・・リータを・・・弟を・・・」


「・・・引き受けましたよ。」 「じゃあミドリ、やろう・・・!!!」


 町長のGOサインに、翠もリンも互いに頷きながら、扉の前へ立つ。3人も、覚悟を決めたのだ。

 そして、さっき翠が指示した通り、町長は部屋の仕掛けを解除すると、即座に部屋の角にある、ベッドの下へ潜り込んだ。

 扉が突然開いた事で、町長の家へ侵入した兵士達は驚いていたものの、扉が完全に開いた途端、突入する気満々で武器を構えていた・・・・・が。


「よしっ、とつげ・・・・・




 な・・・・・な・・・・・???」


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