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176・大いなる悲劇の襲来

 王が半狂乱になり、叫んだ直後だった。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・!!!


「な・・・何・・・?!!」


「は、ははは・・・・・

 ハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


 突然地面が激しく揺れ始め、翠達はその場にしゃがみ込んだ。

王はもう、完全にネジが外れてしまったのか、振動する部屋の中で、ただただ高笑いを続けている。


「じ、地震?!! こんな時に!!!」 「ミドリさん!!! こっち!!!」


 グルオフが皆を誘導したのは、ベッドの下。

確かにそこなら、上からの落下物から頭を守れるうえに、誰かが部屋に入ってきても、すぐには気づかれない。


 翠はスライディングしながらベッドの下に隠れ、揺れがおさまるまでしばらく待つ事に。

幸い、王はその場から逃げる様子はない為、放っておいても大丈夫。

 天蓋付きのベッドなら、物が落ちてくる心配もない。

だが、突然城を襲った大きな揺れに、翠達は揺れが静まった後を、ベッドの下で考えた。


 家具が揺れるほど大きな地震、王子からお達しがあるとはいえ、さすがに誰かがこの部屋に入って

 くる事は、ほぼ間違いない。

そうなったら、一体どうするべきか。


 このまま隠れている事もできるが、もし見つかったり、王自らが告発したら、一瞬で翠達が劣勢に

 なってしまう。

だが今は、とりあえず揺れがおさまるまで待つしかない。



 ドゴォォォォォォォォォォ!!!



 5人で揺れを待っている最中、今度は城の中から、『何かが勢いよく壊れる音』が聞こえた。

家具や置物なんてものじゃない、もっと大きい何か。

 翠は、(門が外れて倒れたのかな・・・?)と思っていたが、次に彼女達を襲ったのは・・・



 バリイィィィィィィィィィィン!!!



 今度は部屋の窓が3枚一気に割れ、部屋の中がさらに悲惨な状況に。

だが、翠達が度肝を抜いたのは、突然割れた窓ガラスではない。

 窓ガラスを割ったのは


『黒い巨大なトゲ』のようなもの


 まるで『折れた柱』が刺さっているような光景だが、今翠達が居るのは最上階。

最上階付近に、同じくらい高い柱なんて、建っていなかった。

 しかもその柱、妙に『生々しさ』があった。

ビクビクと動くうえに、びっしりと真っ黒い毛が生えているのだ。


 王は唖然としていたが、翠達はベッドから抜け出て、その柱をよく調べる。

だが、その気色悪い生々しさで、翠とラーコは近づけず、グルオフも遠目で観察する。

 試しにリータが、持っていた剣を抜き、その柱に刺してみると、柱は『ビクンッ!!!』と動く。

そして外からは『獣とは思えない雄叫び』が響いていた。


「ギィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」


 『痛覚のある柱』なんて、あるわけがない。

しかも剣が刺さっていた部分からは、『緑色の液体』が垂れている。

 これには柱の近くにいたリータとクレンも、驚いて後退。

そしてリータの剣先には、緑色の液体がまだ滴り落ちていた。


 リータはその液体を慌てて振り払い、クレンの後ろに隠れる。

切られた箇所からは、『ブシュブシュ』と得体の知れない液体が噴き出て、毛の一本一本がゾワゾワと動いている。


 ドンドンドン!!! ドンドンドン!!!


「あなた!!! あなた!!!」


 部屋の外から聞こえる『女性の声』

だが、クレンが事前に部屋のドアに鍵をかけていた為、その女性は部屋に入ることはできない。


 部屋に入れるべきか、知らん顔をするべきか、翠達は迷ったが、ドアの向こうにいる女性はかなり

 焦っている様子。

その女性の声で、城で起きている異変は、王の部屋だけではなかった事が分かった翠達。


 だが、それでもまだ、窓を突き破った得体の知らない柱の正体が分からない。

王様も王様で、ドアの向こうで叫んでいる女性の声が、耳に入っていないのか、まだケラケラと笑いっぱなし。


「お願い!!! ドアを早く!!! ドアを早くあ


 ドスッ   バギィィィィィ!!!


 女性の声が突然聞こえなくなったと同時に、部屋のドアを突き破る、『もう一本の黒い柱』

そして、その先端に刺さっているのは


 柱が腹に突き刺さっている女性


「きゃああああああああああ!!!」「きゃああああああああああ!!!」


 これには思わず、翠とラーコが悲鳴をあげてしまう。

そしてグルオフは、口を開けたまま思考停止している。

 女性はまだ意識があるのか、痛みによる体の反応なのか、手足の指がピクピクと痙攣していた。

今までモンスターや人間と散々戦ってきた翠達ですら、こんなにも残忍な光景は初めて見る。


 ラーコは悲鳴をあげながらも、グルオフの両目を塞いであげる。

翠達は、助けたい気持ちと動揺が入り混じり、結局どうする事もできない。

 そもそも、無事に助け出すことができるのかどうかも分からない。


 柱の先から滴っているのは、緑色の液体と血液が混ざり合い、泥水のような色に変わっている。

柱が突き刺さっている女性は、必死に翠たちに向かって手を伸ばすが、どんなに頑張っても体から血

液が出ていくばかり。


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