171・城内へ侵入
「あともうちょっとで着くから、ザクロさん、もうちょっとだけ頑張って。」
「は、はい・・・」
複雑な地下の構造に頭を抱えるザクロの横で、グルオフがしっかり彼を案内する。
翠達も、一瞬自分達が何処にいるのか分からなくなる光景が続く。
だが、城がどんどん近づいていく感じは、ラーコとグルオフの様子だけで分かる。
「そういえばさ、ラーコ。ラーコって、城の中をどれくらい知ってるの?」
「それが・・・・・もう十数年くらい前の過去だから、記憶が曖昧すぎて・・・
そもそも、城の中が変わっている可能性もあるからなぁ・・・
里に逃げてきた兵士の証言がなかったら、たぶん私たち、城の中で迷子になってたかも。
___よし、ここが『最後』かな。」
そう言って、ラーコは天井を指差す。そこが、地下通路と城の中を繋ぐ場所。
翠達は、一斉に息を呑んだ。ここから先に進んでしまえば、もう後戻りなんてできない。
もうとっくに後戻りなんてできないし、する気も全員ないのだが。
全員で武器を構え、ラーコは背伸びをしながら天井に耳をあて、外の様子を確認する。
「___やけに静かだな。見回りする兵士の足音も聞こえない。」
試しにラーコは翠を呼び、杖で天井をコンコンと叩いてもらう。
だが、上からの反応はない。不自然なほど。警戒するが、このまま前に進まないわけにはいかない。
ラーコはゆっくりと扉を開け、いつの間にか拾って持ってきた石を、今度は上に向かって投げる。
カーペットの上に落ちた石は、『トンッ・・・』と重い音を立てた。
だが、その音にも一切反応がない城内。ラーコがゆっくりと頭を出して、城内の様子を確認する。
翠達はドキドキしながら、ラーコの合図を待つと、ラーコは一旦天井を閉めて、城内の状況を待っていた翠達に伝える。
だがその顔は、『納得いかないような顔』だった。
「___ねぇ、グルオフ、不自然すぎない??」
「何かあったんですか?」
「城内を見張る兵士が、全くと言っていい程いないのよ。」
「__________
___仮にこの作戦が、既に漏れていたとしたら、ここまで何もなさすぎる方が逆に不自然だと思
います。
もし私が狙われる立場だったら、城に繋がる出入り口は、『隠し通路』も含めて封鎖します。」
「私達を誘き出す作戦かも・・・」
「だとしたら、地下道に来た時点で私たちを捕らえます。
城内よりも地下道の方が視界が悪いので、捕らえるのは容易いはず。」
「だとしたら・・・何で?」
色々と不安は残るものの、あっさり侵入できるなら、乗り込んでしまえばいい。
ラーコ達は音を立てないように、ゆっくり地下通路から抜け出す。
翠達は当然初めて来た場所なのだが、幼い頃にほんの少しだけこの城で生活していた筈のラーコで
さえ、首を傾げて変な顔をしていた。
『行ったことあるのに知らない場所』という感覚なのだ。
「___ミドリ、これって。」
地下通路か抜け出たリータが見つけたのは、壁に貼ってある『掲示板』のようなもの。
そこには、『貢献ランク』や『王都事件・事故情報』など、いろいろな情報が書かれた紙が何枚も貼りだされていた。
『貢献ランク』には、何人もの兵士の名前が連なり、上位陣の枠には。貢献した内容もしっかり記
載されている。
だが、リータはその内容を見て、息を呑んでいた。
「ミドリ、この貢献した内容のほぼ全て、『暗殺阻止』って・・・・・」
「___こっちも相当大変なのね。」
『貢献ランク』の隣には、『殉職リスト』も貼り出されている。殉職リストだけで『3枚』も。
しかも、殉職に関する情報はほぼ明記されていない。それが余計に恐ろしさを加速させる。
殉職した兵士がまだ生きているのか、それとも・・・・・
そして、そのまた隣には、『新兵リスト』も貼り出されているのだが、明らかに殉職リストとの比
率がおかしい。
新兵が記載されている紙は『1枚』だけなのに、殉職リストに書かれている名前は、白紙の紙を埋め尽くすほど多い。
そして、つい最近張り出されたであろう紙に書かれていたのは・・・