表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
193/237

170・地下道に再来

 真下は真っ暗闇がつづく空洞だが、ドアを開けたラーコの足元には『杭』が打ち込まれている。

そして、杭に結ばれているのは、若干古いがギッチリと縄が結ばれていた。

 つまり、翠が初めて地下通路を見つけた時のような『井戸』と同じ構造。


 試しにラーコが、そこら辺にあった石を穴のなかに落としてみる。

石は真っ暗な闇の中へ落ちていき、しばらくすると穴の奥から『カツン・・・』という乾いた音が聞こえた。


 そ聞こえてきたのはその音だけで、奥から人の声も、足音も聞こえない。

どんなに足音をたてないように移動したとしても、縦穴の構造上、誰かが穴の底で動いたら、絶対音が反響する。


 だが、石を落として何の反応もなかったことから、穴の奥を警備している兵士はいない様子。

翠達は安心して、次のステップに踏み込んだ。

 地下通路への侵入。ラーコとグルオフにとっては、『里帰り』になるのかもしれない。


「よし・・・・・ミドリ、次は任せた。」


「了解っ!」


 翠はランプを腰に巻きつけ、先頭で降りていく。

その間にクレン達は、持ってきた『縄ばしご』の設置にとりかかる。

 出入り口がどんな状態になっているのか分からなかった為、一応持ってきたのだ。

古くなった縄一本で全員が降りるのはちょっと心許もとない為、持ってきて正解だった。


 穴自体は割と広く、スルスルと下まで降りていく翠。

そして、底が見えかけたと同時に、翠は持ってきた石を投げて反応を確認する。

 だが先程と同じく、石は地面に落ち、その乾いた音しか響かない。

翠がゆっくりと地面に足をつき、辺りを見渡すと、ちょっと広い通路が一本しかない。


 翠は地上にいるクレン達に、降りてきても大丈夫な事を伝えるため、石を2つ持って、それを拍手

 のようにぶつけ合わせて合図を送る。

すると上から、縄梯子が落ちてくる。そして、ゾロゾロとクレン達が降り始めた。


 翠はその間、通路の奥の様子を伺う。

一本道は王都の周りをグルグル回るような構造になっていたが、長年その地下通路で生活していたラーコやグルオフの目は誤魔化せない。


「___やっぱり、この壁『偽物』だ。」


 ラーコが一部の壁をゆっくりと横に引くと、奥からまた通路が見える。

そんな仕掛けがあちこちにある為、翠達も慎重に通路を探っていた。

 『罠』などは無いが、油断していると同じ場所をグルグルしそうな構造。


 偽・王家がこの地下道を再利用したのも頷ける。

素人がこの地下通路で迷ったら、地上に戻れないかもしれない。

 この通路に慣れているラーコやグルオフでも、時折立ち止まっては悪戦苦闘している。

夜までに城へ行けるか心配だったが、2人が見知った場所に来れば、もうこっちのもの。


 火災でだいぶ外観が変わってしまったが、あちこちの壁や天井に残されている『暗号』はまだ健在

 していた。

暗号が刻まれた場所の『地上』に何があるのか、『市場』や『図書館』など、細かく分かりにくい場所に刻まれている。


 その暗号と、持ってきた王都内の地図を照らし合わせ、地下道を進む翠達。

まだ焦げ臭い臭いが漂っているが、あの火災が嘘のように、地下道はまだまだ使えそうだった。


 この場所に初めて来たザクロは、その立派な構造に感心していた。

里では、『レンガ』はほぼ使わていない為、余計に珍しく感じるのだろう。

 試しに翠が、「里に帰ったらレンガを沢山作ってみる?」と、ザクロに提案する。

するとザクロは、彼女が思っている以上に食いついた。


 確かに、『木の壁』と『レンガの壁』では、明らかに強度や質感が違う。

冬が厳しい里では、レンガ造りの家が、革命をもたらすのかもしれない。

 里のなかで一番大きな建造物である城壁も、レンガを用いれば作り直せる。


 せっかく王都に来たザクロだが、裏の裏からコソコソと侵入している為、彼はまだ王都がどんな場

 所なのか全然把握していない。

それでも、ザクロにとっては初めて見るもの、初めて触れるものばかり。


 薄暗い地下通路のなかで、ザクロの目はキラキラと輝いていた。

確かにこの地下道の技術は、旧世界の技術を知る翠でも、かなり見応えがある。


 子供の頃に憧れた『隠し通路』や『隠し部屋』も、ここまで規模が大きくなれば、誰でも夢中にな

 るものだ。

この地下道を作った人材がもういないのが、非常に惜しい。


 これほどの技術を、里にも流用したいザクロの気持ちは、翠にも分かる。

だが、現実問題、そう上手くいくか分からない。でもやってみたい。

 そんなザクロの気持ちは、翠達にもよく分かる。

翠の経験で例えるなら、『ボスよりLvが低くても、挑みたい気持ち』に似ている。 


「えーっと・・・確かこの床下を・・・」


 ラーコが徐にしゃがみ込み、行き止まりになっている床の一部を押す。

すると、床がスライドして、下にもう一つの通路が現れる。

 これにはザクロも、その作りが気になって、スライドした床をじっくり観察していた。

だが、今はそれどころではない。地下道の探検なら、事が済めばいくらでもできる。


 だが、仕掛けはそれだけではなかった。

やはり城に繋がる道には、色々と手が混んでいる仕掛けがいくつもある。

 壁を捻ったり、壁を持ち上げたり、かと思えば、道がある場所が『ハリボテ』だったり。

あれやこれやと仕掛けに感動しているザクロでも、数多の罠の数々に、頭をかかえる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ