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王子の野望の先(4)

 当然、この横行を一番許せないのは、親である王・妃だ。

今まで散々お金をかけて、愛情をたっぷり注いできたのに、自分達ですら彼に振り回されている。

 しかし、今まで彼を甘やかしてきた2人にとって、息子を怒ることすらもできない。


 それに、彼だけが『自分達の汚職の事実』を知っている。

彼の言う事だけに従えば、自分達の地位も命も保障される。

 王子はそれも踏まえた上で、両親2人の首を握り続けているのだ。


 だが最近の王子は、両親(王・妃)と顔を合わせる事もなければ、食事を共にする事すらしない。

用がなければドアを開ける事すらしない。時折、『心配する素振り』はするが。

 もう王子にとって、両親なんてさほど脅威でもなくなった。

そう、実質彼の邪魔をする者も、彼に恨みを抱く者すらいない。


 その役目は、全て両親に担ってもらっている。それも王子の思惑であった。

汚い両親を見ずに済む、自分に対する不満は全て両親が被ってくれる、何かあれば『名前』だけ出せばいい。


 センタリック王子は、汚い手段で王座に座っている両親に対して、もう『怒り』も『憐れみ』も感

 じない。

かつてはそんな気持ちも抱えていた、だが、もう両親に費やす時間が、勿体無く感じた王子。


 起きてしまった事実を変えることはできない。自分が、『欲に塗れた2人の息子』である事実も。

『王子』という肩書き自体が、彼にとっては『親の後継ぎ』というレッテルのように感じていた。


 この現実から逃れる為の方法が、『覚醒者になる』という、紆余曲折な結論に陥ったのも、結局の

 ところ両親の影響である。


 数多の世界を旅して 数多の伝説を作り 数多の人々を救う


 彼が目指しているのは、『肩書きの王』ではない


 『本物の国王』


 その為に彼は、出費や時間もいとわない。両親を蔑ろにしても構わない。

全ては、『欲』と『黒歴史』に塗れた『一族の歴史』から逃げる為。

 自立した『自分としての人生』を歩む為。両親と同じ道を歩まない為。

肩書きも捨て、力を手に入れる。その為に、彼は十数年も頑張り続けたのだ。



 そしていよいよ、彼の頑張りの『結果』が、形となる日が近づいてきた。



「ふぅー・・・・・

 やっぱり毎度毎度、この階段を降りるのは辛いなぁ。

 ___まぁ、仕方ないか。これくらい『隠して』おかないとね。」


 ようやく地下へと続く階段が終わり、王子はポケットから『大きな鍵』を取り出す。

そして彼の目の前には、これまた『大きな南京錠』 彼の拳の倍以上はある大きさ。

 それだけではない、南京錠に固定されている『鉄の筒』も、簡単に動けないような構造。

この南京錠も、鉄の筒も、全て彼が自分でこっそり作った。


 それくらい彼は、この場所を誰にも見られたくなかったのだ。

その理由は、全てこの地下部屋の中に・・・・・




 ガチャッ

ギィィィィィィィィィィ・・・・・


「________!!! ________!!!」


「ごめんね、ちょっと遅くなっちゃった。会議が長引いちゃってねぇー・・・・・

 まったく、『自分は困ってますよアピール』には、こっちが困るものだよ。


 彼らの方が、民を苦しめているのにねぇ。」


 地下の研究部屋には、王子の『被験体』が『38名』、個々の檻に入れられている。

全員の両手両足は、頑丈な鎖と錠で拘束されている。口は布で塞がれている。


 王子は周囲に疑問を抱かせないように、わざわざ『モンスターに悩んでいる村・町からの手紙』を

 偽 装して、城で保護した38名を、少しずつこの部屋に連れて来た。

「出発する前に、贈りたい物があるんだ。」と言えば、全員が何の疑いもなくついて来る。


 王子が38名を、快く城で匿ったのには、それなりの理由があった。

そうじゃなかったら、いくら懐が大きな人間でも、38名という大人数を保護しない。

 38名は、それを『今更』悟ってしまった。そして、もう全てが『手遅れ』である事も。


 いきなり38人分の『実験体』が揃った事で、王子は急ピッチで部屋を改装。

『檻』や『錠』は、すでに部屋に設置されていたが、力のある覚醒者に備え、かなり強固に改造。

 

 鎖や手錠のサイズも揃え、彼らが自分達で自分達の体を傷つけないように、壁や床の材質も全て一

 人で変えた。


 部屋に招き入れた彼らを眠らせる『魔法陣』は、38名のうち、『魔術師』に該当する覚醒者に制作

 してもらった。

わざわざつきっきりで王子が勉強させた甲斐もあって、魔法陣が発動すれば、その縁に入っている人

間は、覚醒者であろうと一瞬で眠ってしまう。


 だが皮肉にも、その実験体となったのが、魔法陣を仕掛けた張本人。


 部屋に閉じ込められた38名は、最初こそ抵抗していたものの、王子の口車は、相手の思考すらも停

 止させてしまうものであった。

こんな異常な状況にも関わらず、38名は王子に、『尊敬の眼差し』を向けつづける。


 まるで『研究員を愛するモルモット』のような状況。


「___さてと、そろそろ君達の『魂』は


 『僕の力』になる。協力してくれるよね?」


 王子のその問いに、全員が頷いた。

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