表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
181/237

162・道中に どうしても見せたかったもの

「__________そうか、此処で・・・」


「うん、貴方のご先祖様に、私達が初めて会った場所。」


 王都へ向かう道中、翠がザクロを、どうしても連れて行きたい場所があった。

それは、今でもこの国の何処かで頑張っているかもしれない、ザクロの祖先と出会った場所。

 かつてコエゼスタンスが隠れ住んでいた、地下の隠し部屋。

離れる前に目印を指しておいた為、すんなり見つける事ができた。


 この辺りは翠達が来てから、まだ誰も足を踏み入れていないのか、去った時と全く変わりない。

ザクロが地下をくまなく見て回ると、翠達が発見した物以外にも、色々な物が見つかる。

 リザードマン(ザクロ)の目の良さは、『遠距離』だけではなく、『暗闇』でも便利なのだ。

ザクロがせっせと、地下の物を地上に運び出し、翠達が物にびっしり付着している埃を払い落とす。


 隠し部屋を見せるタイミングに関しては、翠一行が遠征前に相談していた。

だが、やはり王都へ侵入する『前』の方が、遠征組の士気が上がる。


 そう思った翠は、ザクロに王都までのルートのなかに、この隠し部屋を追加したのだ。

ザクロもだが、過去にコエゼスタンスが、コソコソと隠し部屋にいた事なんて、里の住民でも知らない事だった。


 そして、本格的に隠し部屋の散策を進めていくと、当時使われていた武器や道具だけではなく

 『手記』もポロポロと見つかる。

字がだいぶ読みにくくなっているものの、全員で協力して、徐々に解読を進めていく。




「ザクロのご先祖様が残した手記も、この束のなかにあるんだろうけど、探すのは難しいだろうね。

 だって名前すら書かれていない手記もあるんだから。」


「___それでも、大事なものである事に変わりはない。」


「そうね。これらも全部、『遺産』なんだからね。」


 隠し部屋にあった荷物を全部外に引っぱり出して、持って行けそうなものは持って行くことに。

だが、さすがに家具までは持っていけない為、此処でもう解体してしまう。


「ねぇねぇ、せっかくなら、今日の夜は外にベッドを置いて、夜空を眺めながら寝ない?

 せっかく壊すんなら、せめてもう一度くらい、使ってあげようよ!」


「___まぁ、今はそこまで寒くないから、それでも良いかもしれないけど・・・・・

 ミドリらしいな。」


 子供のようにはしゃぐ翠を見て、ちょっと呆れたクレンだったが、内心ではナイスアイデアだと思

 っていた。

布を一枚敷いた場所で寝るよりは、ボロボロでもベッドの上で寝たほうが安眠できる。


 まるで『年越し前の大掃除』を思い出す翠は、ふと『自分の両親』を思い出した。

『あっちの世界(旧世界)』では、どれくらいの時間が経過しているのか。

 自分が逝ってから、もう何回忌を迎えたのか。学校では、もう落ち着きを取り戻したのか。


 もう両親は、自分の死を受け入れてくれただろうか・・・・・


 もうすっかり、旧世界の記憶が遠くなってしまった翠にとって、一体どちらが異世界なのか、時々

 わからなくなる。 

自分が『転生者』である事も、頭からすっぽ抜ける時がある時も。


(___そういえば、ザクロのご先祖様だよね、私・・・・・私『達』をこの世界に導いたのは。

 でも結局、この問題に取り組める転生者は、私だけだったのか・・・


 _____まぁ、私も私で、かなりギリギリで生き残れた感じだから、仕方ないか。)


「___リ・・・・・

 _ドリ・・・・・


 ミドリ!」


「わっ!! ごめんごめん!! 

 ちょっと考え事してた・・・・・」


「_____ほら、これ。」


 そう言って、ザクロが翠に手渡したものは、何の変哲もない、『一枚の手記』

何故彼が、それを自分に手渡したのか、受け取ったばかりの翠には、その意図が分からなかった。

 だが、その手記に書かれている、一番大きな文字を読んだ瞬間、翠の瞳孔が開いた。




『異世界から人間を迎える方法』




 そう、この手記は、転生に関する『資料』や『儀式』が、かなりざっくりではあるが記録されてい

 たのだ。

一体どこでその儀式の方法を知ったのか、偶然発見された儀式なのか、この世界には何度も『転生者』が儀式を経て来ているのか。


 色々と疑問が浮かぶ翠だが、まず読んでみないと分からない。

翠は日向でその一枚の資料を、間近でしっかり読む。まるで、小さい字が読めない老人のように。 

 仕方ないのだ、かなり年月が経っているせいで、書かれている文字がだいぶ薄れている。

大半は、あったであろう『文字の跡』を繋ぎ合わせ、頭の中で文章にしていく。


 『儀式の方法・必要な材料』については、専門用語が多くて、ザクロでもちょっとよく分からなか

 ったが、翠が目を向けたのはそっちではない。

手記の裏には、『誰かの心境をつづったメモ』があったのだ。


 その内容を読む限り、そのメモの主は、『コエゼスタンスのメンバー』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ