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160・紫紺(しこん)の指輪

「___なぁ、皆。

 出発する前に、ちょっといいか?」


「___ザクロ?」


 いよいよ全員が荷物を担ぎ、あとは向かうだけになった頃を見計らってなのか、突然グルオフが、

 全員を呼び止める。

そして、ザクロが里に残るメンバーの方に視線を向けると、子供達がゾロゾロとやってきた。


 彼らは揃って、『小さな箱』を両手でしっかりと包みこみ、それを遠征組のメンバー一人一人に渡

 していく。

翠がその箱を持った感覚からして、割と重いものが入っている。


 だが、その正体が一向に分からず、ザクロに目を向けると、ザクロは自分の手に持っている小さな

 箱の中身を、翠に見せてあげる。

その中にあったのは・・・・・


「こっ!!! これは・・・・・!!」


 箱のなかに入っていたのは、綺麗な『紫色の宝石』が埋め込まれている『金の指輪』

しかもその指輪の側面には、カタカナで『ザクロ』と、しっかり名前が彫られている。

 クレン達も各々の箱の中を確認すると、同じく各々の名前が彫られている指輪が入っていた。

そして、翠とザクロの持っている指輪の宝石だけ、若干大きい。


 いつ指の大きさを測ったのか、その指輪は『中指』にピッタリはまる大きさ。

試しに翠が『左手の中指』にはめてみると、まるで『女優のしなやかな手』のように、自分の手がキラキラと光り輝いているように見えた翠。


 その手を頭上で照り輝く太陽に伸ばしてみると、逆光で黒くなる手と、紫色に輝く宝石が、まるで『一枚の写真(芸術作品)』の様にも見えてくる。

ネックレスやブレスレットのみならず、『指輪』なんて転生前も縁遠い存在だった翠は、改めて自分の指に違和感を感じる。


 だが、決して(邪魔)とは思わなかった。むしろ、なんだか誇らしい気持ちになる。

不思議と勇気が全身を巡り、更にやる気が増していく。

 ある意味これも、『アクセサリーによる気持ちの変化』なのかもしれない。

手元が綺麗になっただけではなく、自分自身の価値が大きくなったような、そんな感覚。




「ザクロ・・・これは・・・?」


「俺も、コエゼスタンスについては、前から自分で色々と調べてた。

 そのなかに、『紫紺しこんの指輪』という、『コエゼスタンスメンバーの証』があることが分

 かったんだ。


 ___で、遠征の計画がでた直後、里の待機組に相談して、作ってもらったんだ。

 材料とかは山々を経由すれば見つかるから、リータの兄さんにも協力してもらった。」


 リータが兄の方に視線をむけると、もう既に彼の中指には指輪がはめられていた。

彼だけではない、里に残る住民全員の中指に光る指輪。

 遠征組は、そんなこと全然知らされていなかった為、翠達は唖然としていた。


「この遠征をきっかけに、無くなってコエゼスタンスが『再結成』された。

 それを記念して、この指輪を作ってもらった。


 かつてのコエゼスタンスも、『共通の装備品』を身につける事で、仲間としての意識を高めていた

 そうだ。」


 いわゆる『制服』と同じ原理である。

全員が同じ服を着ていれば、思考も自然と全員で固まる。全員が同じ行動をとるようになる。

 仲間意識が芽生えて、協調性を重要視する。自然と、周りに合わせようとする心理が働く。


 学生時代の翠は、制服が心底嫌いだった。

それは、嫌いなクラスメイト達を連想させるからでもあるが、制服を着たことにより、『学校の一部』になった感覚が、嫌だったのだ。


 学校において、『集団行動』は必須である。

だが、もとから集団行動が嫌いだったり、集団に馴染めない生徒はどうなるのだろうか。

 大抵は、『はみ出しもの』として、不遇な扱いを受ける。

それが自分の本意ではなかったとしても、学校において『個人の意見・意思』は、流されてしまう。


 友達が沢山いて、行事も頑張って取り組むくらい、学校に馴染めている生徒ばかりではない。

はみ出しものである翠は、同じ制服を着て、同じ行動をする生徒達に、気持ち悪さすら感じていた。

 自分の意見より、周りの尊重の方が重要。

それが当たり前になっている事にすら、誰も違和感を感じない。


 皆が足並みをそろえて、同じ方向へ向かっていくその光景は、さながら『国(学校)に忠誠を誓う

 軍人(生徒)』

翠は、集団に馴染めないなかでも、強引に足並みを揃えてきた。

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