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155・皆で準備中

「姉さん、そっちの荷物はまとまりそう?」


「えぇ、どうにか押しこんだ。」


「ちゃんと運べるようにしてね・・・」


「_____多分、大丈夫・・・と信じてる!!」


 いよいよ王都への遠征が間近に迫っている里では、必要な荷物をまとめるのに、皆が大忙し。

幸い、里に逃げこんできた人々も、この里で十分に働いてくれた為多めに荷物を準備しても何の問題もない。


 食糧は少なめでも構わない、現地調達ができるから。

だが『寝具』や『食器』などの日用品は、必ず必要・・・とまでは言わないが、ちゃんとしたポテン

シャルで挑まないと負けてしまう。


 リータの兄が遠征用の薬を大量に生産しているが、できる事なら薬に頼らず、健康は維持したい。

その為には、やはり野宿中でも十分に睡眠がとれる寝具だったり、衛生的にいい食事ができる食器は

持っていきたい。


 なるべく軽く、小さく、でもちゃんと道具として使える。

そんな道具を揃えるため、一から道具を作っている住民もいる。

 道具作りに必要な材料も揃っている里だからこそ、行く直前まで色々と変更ができる。




 荷物をまとめながら、必要か・不必要かを選別しながら、増えていく荷物を少なくしたり・・・

 と、ひたすら荷物と向きあうラーコとクレン。

下ばかりをずーっと見続けていた2人は、時折首を捻らせながら、目眩めまいを堪えている。


 

 翠はというと、行く直前までまだ特訓を続けている。

遠征直前の仕上げに、先陣組を率いる翠ができる事は、とにかく自分達の腕をあげる事。

 遠征の準備もあり、いつもより観覧者が少ないながらも、特訓は緩めない。

いつもより広く感じる丘の上で、翠は今日も汗を流す。


 


 リータは、兄と一緒に遠征用の薬作りに専念している。

2人もかなり働きづめになっている為、手があいた時には翠も参戦して頑張っている。

 薬はあるだけ『気持ちの余裕』にも繋がるため、多め多めに作り続けている2人。

だが、リータは兄と一緒に作業をする時間が楽しいのか、疲れている様子は全くない。


 心配なのは、むしろ兄の方だ。

彼は、困っている人を見過ごせないタイプで、遠征用の薬を作るのと並行して、里の生活で必要な薬も作っている。


 それでは明らかに『ハードワーク』である。そんな時こそ、リータの存在は大きいのだ。

リータは自分で「兄の方が上手いよ」とは言うものの、薬に関しての知識は、一般人である翠よりも遥かに高い。


 だから、リータが持ってくる薬草には、決して間違いがない。

それこそ、『葉の形』や『茎の色』で薬草を見分けられる・・・なんて、普通に考えたら凄すぎる。

 リータの兄が効率よく仕事ができるのも、リータあってこそ。


 その他にも、リータはお店にくる住民の相手にもなっている。

やはり人間でもモンスターでも、集中していると、どうしても会話が疎かになってしまう。

 リータは店に来る住民の話を聞いて、その住民に合った薬を提供する。


 また、リータは里の子供達に、『怪我をしない為の遊び方』や、『怪我をした時の応急処置』も教

 えている。

薬のありがたみを知るのは確かにいい事だが、『依存』はよくない。


 薬があるから、怪我してもいいや 無茶してもいいや


 という考えは、子供でも大人でも大変危険。

リータの兄は里に残るものの、いざとなれば自分の身は自分で守らなければならないのは、里に残る住民にも言えること。


 里の子供達も、目頭を押さえながら薬を作り続けているリータ兄弟を見て、なるべく怪我をしない

 ように遊んでいる。

これには翠達も心を痛めたが、『今年だけの我慢』になるように、今一度頑張ることを心に決めた。


 里に残る子供達も、今回の作戦を重く受け止めている様子。

大人がいつも以上に忙しなく動いている様子や、ピリピリした空気を読んでいるのだ。

 子供にとっても、この作戦は重要なのだ。

作戦が成功すれば、子供達にもっと広い将来を与える事ができるのだから。


「ねぇーグルオフー」


「なーに?」


「グルオフが王様になったらさ、私にとびっきり綺麗なドレスを頂戴!!」


 ザクロと一緒に、遠征用の食料を作るグルオフに、満面の笑みで話しかけてきたスライムっ子。

そんなスライムっ子を、後ろから姉がポコンッと頭をたたいた。


「あんたねぇ、王子様は遊びに行くわけじゃないのよぉ!」


「いえいえ、この一件が終わったら、皆さんには『とっておきのお土産』を、たんまり持ってかえり

 ますよ!

 だから、約束するよ。キラキラでフリフリのドレスを持ってくるから、それまで待っててね。」


「うん! ちゃんと待ってるね!」


 そう言ってスライムっ子は、どこかへ行ってしまう。

どうやら、グルオフにかまって欲しかっただけみたいだ。 

 そんな妹の姿に、姉はため息をつきながら、グルオフに「ごめんなさいね」と、一言謝った。


「お姉さんも、何か欲しいものがあったら、今のうちに言っておいた方がいいですよ?

 じゃなきゃ、私が独断で選んじゃいますからね。」


「え? じゃあ・・・・・

 あったかい・・・上着かな。


 私達スライムは、人間よりも体温の変動が激しいの。

 特に冬は、外にちょっと長居するだけで、肌が凍ってしまうの。

 だから妹には、冬はなるべく外に出ないように、毎年のように言ってるんだけどね。


 でもあの子も、他の子と一緒に、冬の里で遊びたいと思うから・・・・・」


「___分かりました!

 サイズは大きめでいいですね! すぐ成長しちゃいますから!」


「そうね、大きかったら里で長さを直せばいいから。」


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