最後のクラスメイト(2)
「___ねぇ、ちょっと!! あれ!!」
「えぇ?!!」 「まさか・・・もうバレたの?!!」
遠くの方で、大勢の兵士が松明を持って、あちこちをウロウロしている。
家々のドアを開けて、家のなかの様子を確認する兵士もいれば、人1人が通るのがやっとの路地を、入念に調べる兵士もいる。
明らかにいつもとは違う状況に、家の住民達も不安な表情を見せている。
いつも横暴な兵士達が、さらに横暴になり、まるで『強盗』のように家々を荒らし回る兵士達。
家に侵入された住民のなかには、何故そんな事をするのか聞き出そうとする人もいる。
だが兵士達は決まって「詮索はするな!!」と、民の詮索を強引に言い包める。
相変わらず、兵士達の行動の理由はわからないまま。
しかし、下手に詮索をすると、怒られるだけでは済まされない。
最近ではもう、貴族や王族(偽)だけではなく、兵士に反発した民まで処刑されている始末。
もはや、いつ、どんな理由で処刑されてもおかしくない場所になってしまったのだ。
その異様な光景を見た3人は、絶句するしかない。
ずっと城に籠っていた3人にとって、この王都は、かつて憧れていた『おとぎ話の世界』なんかではなかった。
もはやこの場所は、弱肉強食のサバンナより、よっぽど理不尽で、よっぽど住みにくい。
城のなかで、ひたすら夢中を漂っていた3人にとって、今の王都の現状には、目を塞いでしまう。
だが、今も昔も、この王都がそこまで修羅だったわけではないのだ。
それすらも知らない3人の現状は、もはや『絶望』しか頭になかった。
ほんの少しでも、白から出て王都を散策すれば、そこまで大きなショックも受けなかっただろう。
今までの3人の暮らしは、もはや『夢物語』でしかなかったのだ。
自分達が贅沢を楽しんでいる最中、民は汗水垂らして働きながらも、理不尽な境遇に耐えてきた。
まだ人としての心が残っている3人にとって、この現状はさらに3人を追い詰めていた。
そして3人は、王家(偽)が下した『覚醒者狩り』の事すらも知らなかったのだ。
ある日突然、王家がよく分からない命令を出すことには、既に慣れていた民や兵士でも、この命令には頭を抱えていた。
命令の意図もわからず、理解もできないのはいつもの事だが、一番理解に苦しんだのは、今まで国
が重宝してきた覚醒者を『狩る理由』である。
覚醒者が鎮めてきた問題は数知れず、民や兵士だけではなく、命令を下した王家も、覚醒者を頼っていた筈。
なのに、いきなりその恩を、仇で返すような命令。
もうここまできたら、『冷酷』なんてものではない。『非道』である。
だが、この命令によって、王家を翻す『可能性』は、ことごとく全て潰されたようなものだ。
今の王家に逆らえるのは、地位も力もあった、覚醒者のみ。
それを王家も危惧したのか、それとも他に理由があるのか。
それすらを調べる術も、民や兵士にはない。だから、心をオフにしないと、生きていけないのだ。
そして3人は、この国に残された、数少ない覚醒者である。
だが、3人は今の今まで、武器を手にして戦った事もなければ、自分がどんな力を持ち合わせている
のかも分からない。
背中に背負っている『剣』や『本』は、もはや飾りでしかないのだ。
そんな彼女達は、単なる『普通の人間』と同様。兵士の追求に怯え、身を潜める事しかできない。
そんな彼女達を捕まえる事なんて容易く・・・
「やっと見つけましたよ、探しましたー」
「ヒッ!!!」 「い・・・嫌ぁ!!!」 「た・・・助けて・・・・・!!!」
3人の後ろで笑う王子は、いつも通り、爽やかな笑みを浮かべている。
悪びれる様子もなく、純粋に『見つけられた嬉しさ』を表現していた。
だがそれと比例して、3人はガタガタ震え、掴みかかってくる兵士達に抵抗する気力すら、その笑
顔で削がれてしまった。
そしてそのまま、ズルズルと城へ引きづられていく3人。
王子の笑顔が全てを告げていたのだ。
全てを諦め、王子に尽くした方がマシである
という、洗脳に近い眼差しが。