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最後のクラスメイト(1)

「嘘だったんだ・・・・・全部・・・・・全部!!!」


「なんで・・・なんでぇ!! どうしてぇ!!!」


「しぃぃぃぃぃ!!!」


 必死に深夜の王都を駆け回る3人の覚醒者。

息は絶え絶えで、体のあちこちにかすり傷が刻まれているが、3人はかすり傷なんて気にしていられなかった。


 彼女達は、かつてこの世界へと転生してきた『転生者』

何もかもが分からない状態が続いたのだが、その後は王子によって保護され、しばらくは贅沢な暮らしが無償で提供されていた。


 かつて3人が、幼稚園の絵本で見た、『お姫様と王子様の物語』

そのヒロインになれたような気分で、3人は夢を叶えられた嬉しさで、何もかもを王子に委ねていたのだ。


 どんなにボロボロな姿をしていても、その真の美しさを見抜いた王子様

 どんな困難にも立ち向かい、姫にキスをして目覚めさせてくれた王子様

 どんなに深い深い森の奥でも、美しい姫のために駆けつけてくれた王子様


 3人を保護した、センタリック王子は、まさに3人の『理想の王子様』

いつも優しい笑顔と態度で、3人をいつも気遣ってくれていた。

 そして、豪華絢爛なドレスや、何も言わなくても美味しい料理や、甘いお菓子が用意される生活。

そんな生活にどっぷり浸かっていた3人は、もうほんの少し走るだけで、息があがっている。


 かつてこの3人は、クラスをまとめるリーダー格として、委員長ではないものの、その明るいノリ

 でクラスメイト達を従えていた。

行事の時には先頭に立ち、先生からも一目置かれる。

 クラスのカーストのなかで、特においしい立場。


 そんな彼女達に逆らうクラスメイトはおらず、皆が彼女のペースに合わせ、彼女の意見に賛同して

 いた。



 『たった1人』を除いて。




「もう富美子とみこ達は・・・!!!」


「まだ諦めるのは早いって!!! もしかしたら、私たちより先に・・・


「そんなわけないでしょ!!! アイツもあの『サイコ王子』の言いなりだったじゃない!!!」


 いつの頃だったか、保護されたクラスメイトが、一人一人と姿を消していったのは。

その異変に気づいた1人が王子に尋ねると、決まって


「別の町で『覚醒者』を募集していたから、送ってあげたよ。」


 と言っていた。

だが、本人がそんな大事なことを一言も告げずに去るなんて、よく考えればおかしい。

 普通は去る前に一言告げるか、事前に打ち明けている筈。


 何より彼らは、この城での有意義な生活に、不満なんて抱いていなかった。

むしろ、この城で一生過ごす気満々だった。それくらい、全員この城に依存していた。

 なのに、彼らが自ら進んで城を離れるなんて、ありえない。

だが、異変を感じた頃には、もう全てが遅すぎたのだ。


 いつの間にか城に、クラスメイトの姿が見えなくなり、王子に彼らの派遣された町を聞いてもはぐ

 らかされてばかり。

そして、クラスメイトの人数がいなくなっていくと同時に、王都には不穏な噂が飛び交うようになっていた。



「覚醒者を、何らかの『儀式』に使っている。」



 3人に自覚はないが、周りから『覚醒者』『覚醒者』ともてはやされていた。


(その噂に、私達が何かしら関わっているのかもしれない。)


 3人が、そんな『不穏な可能性』を考え始めた頃と、クラスメイトが城からポツポツといなくなっ

 てきた時期と重なっている。


 そして、城に残ったクラスメイトが数人程度になってくると、いよいよその可能性が、現実味を帯

 びてくる。

だが3人には、その噂を調べる気力すらなかった。それくらい、城での甘い甘い生活は、3人の思考すらも腐らせてしまったのだ。


 そして、いよいよ3人のうち1人が、王子に今晩呼ばれていた。

これには3人も、『命の危機』すら感じた。さすがにここまでくれば、もう考える余裕もなくなる。

 何も考えず、何も準備せず、とりあえず城から逃げ出すことにした3人。

彼女達はまだ、『どうにかなる』で乗り切れると思っていたのだ。


 だが、哀れなことに、彼女達は知らなかったのだ。

今の王家が、『偽物』である事も、この国ではモンスターの地位が低い事も。


 もうこの世界に転生して、一年が経過しようとしているにも関わらず、3人はこの国の事を何も知

 らない。

偽・王家が、一体何を考えて、残虐非道な行いで、国を引っ掻き回しているのかも知らず。


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