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152・『編成』は既に決まっている

「___まぁ、先陣はミドリとザクロに切ってもらうとして・・・」


 その言葉に、翠とザクロは一瞬(ファッ?!!)という顔になったが、グルオフは真顔のまま話を

 進める。

先陣を切るのは、2人でほぼ確定。それは翠もザクロも、薄々気づいていた。


 グルオフのその言葉に、誰も異議を唱えないのも、2人が先陣にふさわしい事を暗示している。

翠も、先陣という重要な指名を任された事に関しては、まんざらでもない。


「こりゃ・・・・・明日から特訓の時間とか、増やした方がいいかもね。」


「でも無理はしないように。」


 翠とザクロは、互いにヒソヒソと話す。だがその顔は、何故か嬉しそうだった。


 そして、次にグルオフが掲げたのは『大まかな計画』


「ザクロからも聞いたのだが、やはり作戦決行は、里の雪が半分以上溶けた時期を見計らう。

 里の雪が半分溶ける頃には、王都は『夏』を迎えているであろう。

 多少気温が高いのが難点だが、攻めやすさで言えば、やはり往復が安易な時期に限る。


 そして、私はこの里に逃げこんで来た兵士からも話を聞き、とある『重要な隠し通路』についての

 情報を聞き出した。」


「えっ?!」


 その言葉に一番反応していたのは、ラーコだった。

ラーコはアメニュ一族の生き残りとして、王家についての情報は、誰よりもよく知っていた。

 

 だが、グルオフの件からだいぶ年月が経過している為、王家や城に関しての情報も常に新しくなっ

 ている。

その辺りもしっかり情報収集しなければいけないのは、かなり大変である。


 ラーコはちょっとショックを受けていたが、リータがすかさず「とりあえず聞きましょうよ」と耳

 打ちをする。


「実は、今の王家

 ・・・・・いや、偽りの王家、偽・王家が、密かに『隠し通路』を作っていた事が判明した。」


「隠し・・・通路??」「隠し・・・通路??」


 ラーコとリータは、互いに目を合わせる。

偽・王家は、自分が敵襲にあう可能性を、少なからず考慮していた。

 それは、自分の行いに後ろめたさがあるのか、それとも単なる気まぐれか。

どちらにしても、この情報の価値は大きい。


「どうやら、私とラーコブ達で仕組んだ『地下火災計画』で、焼け残った通路をそのまま活用してい

 るそうだ。

 新たに『城の地下』へと繋がる通路を掘り、いつでも城の外へ逃げられるようにした。


 ___だが、その地下通路を作りあげた兵士や王都の大工は、皆『処刑』された。」


「はぁ?!!」「うそ・・・!!!」「何でそんな・・・!!!」


 話を聞いていた全員が動揺する。

だが、翠は一瞬驚いたものの、(やっぱりそうなのか・・・)と、静かに納得する。


 旧世界の日本にも、戦国大名が築き上げた城は数多く残されている。

だが、そんな立派で凛々しい城にも、『都市伝説』は必要不可欠。

 歴史が長ければ長いほど、深ければ深いほど、闇も濃くなっていく。

それらの血生臭い出来事も含めて、『歴史』である。


 だから、面白半分で『肝試し』というていで、歴史を甘く見ると、痛い目をみる。

そんな話を、怖いサイトではよく目にする。大抵、悲惨な結末で終わるところも、一致している。


 そして、血生臭い歴史は世界中に点在している。

しかもその歴史の象徴である『城』には、世界各地で多くのいわくを残している。

 異世界でも、それは同じであった。これには、翠も笑いかけた。


 いつかゴルオフの歴史も、『曰く』として片付けられるかもしれない。

だが、曰くとしても、歴史に残るのなら、グルオフも本望である。

 この壮絶な日々と戦いが忘れ去られる事は、とても悲しい。それは翠達も同じである。

ある意味、『生きている証』を消された・・・と言っても過言ではない。




 あくまで『都市伝説』で、その真偽は定かではないものの


『かつて家臣に暗殺された将軍が、亡霊となって天守閣に現れる』

『将軍の正妻が、捨てられた恨みで、夜な夜な城の周りを徘徊する』

『城の仕組みを外部へ漏れることを恐れた将軍が、城の建造に関わった人間の首を次々とはねた

 城の近くにある『首塚』には、首のない職人が列を成して、城をボーッと見ている』


 等。

多少の違いはあるが、やはり『城の主』や、『城に関わってきた人物』には、何かしら起きている。

 残酷に処刑される事もあれば、敵陣に攻め込まれたり、裏切られたり・・・

そんな時代だったからこそ、そうゆういわくが生まれてしまうのだ。


 そして、今回の『新たにできた地下通路』に関しても、その情報を外に出さない為、文字通り『口

 封じ』をした。

ある意味それが、城を守る主としての『典型的な行い』なのかもしれない。


「王都には、我々の事情を知らない人々が、今も偽・王家の独裁に怯えながら生活している。

 それは、避難してきた人々の話で明確。だから私は、彼らを極力巻き込みたくはない。

 今現在、王都は混沌としている。そこに追い打ちをかけてしまっては、今後に支障が出る。


 そこで、せっかく作ってもらった地下通路を、我々も活用しようと思う。」


 そう言うグルオフは、不敵な笑みを浮かべていた。

そして、グルオフの案に、その場にいた全員が賛同する。

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