表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
159/237

142・『覚醒者狩り』と、利用される人々

「ありがとうございます、兄や残った町の住民を、ここまで導いてくれて・・・」


「いやいや、やめてくれ! 俺達がお礼を言われる筋合いなんてねぇって!!」


 手をバタバタとあおぎ、視線をキョロキョロさせる兵士達。

自分達の不甲斐なさを考えると、リータの感謝が、見ていられないのだ。

 結果的にリータの兄は救えたのだが、それでも納得いかないものがある。

だが今の彼らには、自分達の心境を話すだけで、もう精いっぱいだった。


「前回のと合わせて、俺達は何をやってるのか・・・自分達でも分からなくなった。


 「どうしてこんな非道な事をするんですか?!」「理由もなく俺達は戦えません!!」


 ___って、何度も口から出したかった。

 でも俺達は、『自分達の命』を優先したんだ。


 王家に意見して、もう帰ってこなかった兵士は数知れず。

 俺が信頼している兵士長でさえも・・・」


 その話は初耳だった翠達。

翠達が王都を出た後も、かなり混沌としていた王都。

 徐々に増していく異様な空気に、兵士達も折れてしまったのだ。

もう今の王都を救えるのは、グルオフ以外に望みがうすい。


 気高い意思やプライドを散々利用された挙句、無慈悲につかわれた兵士達を哀れに思ったの

 は、リータの兄も同じだった。

かつては命を狙われた相手であったものの、彼らの話を聞いて、責め立てるわけにもいかない。


「 _____でもね、リータ。

 今回は、前回とは違い、分かった事もあるんだ。」


「それは何ですか?




 _____兄さん??」


 クレンの言葉に、リータの兄は、少し息詰まる。

よほど言いにくいのか、言いたげな顔をしているのに、なかなか口から言葉が出てこない。




 だが、翠達は、薄々勘づいていた。

前回の騒動の主犯格も、今回の主犯格と、『同一人物』である事が。

 リータの兄が渋っている理由。それは、彼自身も信じられない、恐ろしい事実だから。

肯定してしまうと、これからの未来が、何もかもが、簡単に崩れてしまいそうだから。


 しかし、認めるしかないのだ。

今回の件も、前回の件も、小金持ちがやるような所業ではない。

 もっと規模がおおきく、権力のある、そんな存在でないと、説明がつかない。

そう、前回の件も、もっと深くかんがえれば、答えには辿りついたのかもしれない。


 だが、翠達もその時は、まだ信じきれていなかったのだ。

まさかこの国をまとめる立場にある組織が、そんな横暴で、民を蔑ろにしている・・・なんて。




 だが、そんな『根拠のない可能性』は、王都の内情を知って、安易に踏みつぶされた。




「どうやら、この国の王は、


 『覚醒者狩り』を行っているそうだ。」


「・・・・・・・・・・はい?」

「・・・・・・・・・・はい?」

「・・・・・・・・・・はい?」

「・・・・・・・・・・はい?」


 翠・クレン・リータ・ラーコの4人は、揃って口をあけたまま呆然としている。

だが、グルオフに関しては、そこまで驚いていない様子。

 むしろ、「ついにこの時が来たか・・・」と言わんばかりの、覚悟をきめた様な顔。

ザクロや鬼のにいちゃん達は、顔を合わせながら唖然とするしかできない様子。


 確かに、考えれば考えるほど、今の王家がやりたい事が、全くもって見えてこない。

何故なら、今の今まで、覚醒者は『国の守り手』として、人々から丁重に扱われるのが当たりまえだった筈。


 にも関わらず、何故彼らが『狩りの対象』にされているのか。

まったくその意図が見えてこない。だが、分かっていない様子なのは、翠達だけではない。


 避難してきたリータの兄や、兵士達ですら、その命令の意図が分からないまま、この里に逃げ

 こんで来た。

だから彼らは、申し訳なさそうな顔をするしかないのだ。


 確かに前回と比べたら、相手の意図が少しは分かる。

相変わらずその意図はまったく不明のままである事を考えると、『+−0』なのかもしれないが。

 だが今回に関しては、曖昧にはできないくらい、リータの兄達は甚大な被害を受けている。

『−』なんて話ではない。


 リータの兄の説明に、ようやく口が動かせるようになった兵士達が補足を入れる。


「端的に言えば、俺達兵士は、この国の覚醒者を、王都まで連れて行っていた。

 だが覚醒者にも色々と事情があって、王都に行くのを拒否する覚醒者もいた。

 それに痺れを切らした王家は、最終的に『拉致』にも近い形で、覚醒者を欲していた。」


「何故そんな事を・・・?」


 翠が代表して言ったが、説明する兵士も含め、その場にいた全員、その動機が全くと言ってい

 いほど分からない。

いつもの事だが、今回ばかりは、はっきりさせないといけない。これは翠達だけの問題ではないから。


 この国に、この世界に、一体どれくらいの覚醒者がいるか分からない。

だとしても、彼らが王家に拉致されれば、当然覚醒者が守っていた村や町の住民が困る。

 もしかしたら、それを好機に、よからぬ輩が、何をしでかすか分からない。


 なんらかの理由があるのなら、手足となる兵士達にも事情を説明する筈。

それが『雇用主の務め』

 だが、それすらも許されなかった。・・・いや、『許す』『許さない』の話ではない。

雇い主として、仕事の詳細を言っておくのは、『最低限の義務』である。


 だが、そんな義務すら放置した彼らの雇い主(偽・王家)は・・・


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ