崩れ始めている王都では・・・(3)
本当は、誰も出撃する気はない。
当然だ、何も悪いことなんてしていない村や町を、王家の都合だけで襲撃するのに、心が痛まない筈がない。
だが、そう言わないといけない雰囲気に負け、兵士達はペコペコと頭を下げつづける。
そんな兵士達に対しても、センタリック王子は爽やかスマイルを向ける。
まるで、事の重大さを認識していない子供のような態度に、兵士達は思わずゾッとした。
彼の手にかかれば、村や町をいくつも壊滅させられる。
それが例え、とんでもない『くだらない理由』だったとしても。『重大な理由』だったとしても。
だが、誰も彼も意図を知るものはいない。
今の彼は、もう誰にも止められない、『規模の大きないたずらっ子』
・・・いや、もう『いたずらっ子』なんて生やさしいものではない。
『快楽殺人犯』と見做されても、不思議ではない。
「そうか! 今回も期待しているよ!
君達なら、きっとやり遂げてくれる、そうだよね?」
「はい!!」 「はい!!」 「はい!!」
「うんうん、相変わらずこの国の兵士達は優秀だ!
君達が頑張ってくれるおかげで、私も安心して国の統治に集中できる。
_____あぁ、あとね。
君達も知っている、あの『母専属の占い師』は処分したんだ。」
「っ?!」 「「王妃専属の、彼女をですか?!」 「何故?!!」
兵士達が、再び声を上げて驚く。彼女もまた、王家に長年仕えてきた、頼れる『覚醒者』だった。
もう高齢であるにも関わらず、王家だけではなく、貴族や兵士の相談にも乗ってきた。
「そろそろ引退かしら?」と、つい最近は口癖のように言っていたのだ。
その時には、貴族や王族も含めたパーティーを開く事も予定していた。
「どうやら彼女は、私の母を利用して、国家の乗っ取りを計画していたみたいだ。
本人から事情を聞いたら、すぐに吐いてくれたよ。
『つい最近採用された占い師』も『偽物』だったみたいだから、もう占い師は雇わないかも。」
その言葉を、兵士達がもう信じることはできない。
一体誰が真実を言っているのか、誰が『覚醒者』なのか、『偽・覚醒者』なのか。
『偽・覚醒者』の件に関しては、前々から問題視されていた。
だが、最近になってその罰が急におもくなった。
前は、かるく人をだます程度だったら、兵士達からの説教をうけて、それで終わりだった筈。
しかし最近では、『嘘か真かわからない密告』だけでも、目をつけられた人の命がうばわれる。
誰が、なぜそんな密告をするのか。それは、王都の不穏な空気が一番の要因である。
みんな、口にはだしていないが、不穏な空気で無意識にピリピリしてしまうのだ。
そのため、普段なら怒らないことでも、激怒するようになってしまった。
そして、いつの間にか、他人からの恨みもかうようになってしまった。
城の関係者も、王都の住民も、どんどん消えていく。どんどん空気が重くなっていく。
この状況を、誰もとめられない。望んでいたとしても、誰も口にだせない。
まさに、『外見だけ綺麗に塗られた廃墟』のように、誰もが手をつけるのを嫌がっている。
「まったく、最近はおかしな奴が増えて、本当に困ってるんだ。
その尻拭いは、全部僕に任せて・・・
おまけに父さんまで・・・」
「・・・というと?」
「実はね、父が『極秘の計画』を進めているんだけど・・・・・
・・・君達には、特別に教えてあげるよ。」
その『特別』という言葉を、センタリック王子は『口癖』のように、大勢に加えていた。