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139・アメニュ一家の実力には 歴史がある

(ヤバい!!! この火力だと傷もつけられない!!!

 一旦『形状』を変化させないと・・・!!!)


 クレンは一旦腰をおとし、スナイパーライフルを変形させる。

だがその間にも、ビックフットは彼に手をのばしてくる。

 だが、雪原の方で、ラーコが大声を上げる。


「おいっ!!! こっちだ!!!」 


 そう言って、ビックフットが雪原の方を向いたその直後、矢がビックフットの眉間に突き刺さる。

これにがビックフットも大声をあげ、矢を放ったラーコの元へ走りだそうとする。


 だが、眼球のある筈の穴にナイフが刺さったままのビックフットでは、全力で走ってもラーコには

 追いつかない。

そこでラーコは、もう一発の矢を、今度はビッグフットの『足のすね』に向けて放つ。


 視界が見えず、ラーコのいる場所がはっきり分かっていないビッグフットの脛を狙うのは簡単。

彼女が放った2本目の矢も見事に命中。やはり、アメニュ一家の家宝は伊達じゃない。

 今まであまり弓矢を使ってこなかったラーコだが、万が一の時を考えた特訓が、此処で役にたつ。


 脛をやられたビックフットは、怒り心頭で真っ赤だった顔色が、苦痛でその色が抜け、体毛と同じ

 く真っ白になる。

巨体で強靭なビッグフットでも、弱点を2つもやられてしまっては、さすがに痛みが響いている。


 そしてその間に、クレンの銃が一気に様変わりして、『スナイパーライフル』から『火炎放射器』

 へと変わった。


「いっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇー!!!」


 柄にもなく、大声で叫んだクレンは、銃口から炎を発射させ、悶えるビックフットの元へと走る。

突進して来るクレンの気配には、気づいている様子のビックフット。

 しかし、目の痛みと脛の痛みで、逃げたくても逃げられない様子。

そこへ容赦なく、クレンは炎で包み込んだ。




「ンンンンンガァァァァァ_______________!!!」


 獣の鳴き声を何十倍にもした叫び声をあげるビックフット。

その迫力が、雪を纏った嵐を発生させるが、クレンは負けじと、足で必死に堪える。

 火炎放射器から放たれる炎が嵐と混ざり合い、ビッグフットの周囲の気温は更に高くなる。

遠目から見れば、真っ赤な炎の柱があがっている、幻想的な光景である。


 その炎の柱を遠くから見ていたザクロは、おもわず口をあけたまま、呆然と立ちつくしていた。

今まで里の住民を、何人も真・覚者として目覚めさせていたザクロでさえ、クレンの成長は目に見えて凄まじかった。


 そもそも、『召喚師』と『銃』の組みあわせ自体、里でも前代未聞だった。

だが、クレンの逸脱した『想像力』と『臨機応変な立ち振る舞い』によって、ビッグフットを、あっという間に倒してしまった。


 ザクロも何度か、ビッグフットから里を守ったことはあったが、1日で決着がつかないのが殆ど。

相手は知能があるぶん、不利になると逃げだして、また体制を整えてから再び喧嘩を売りにくる。

 また里がパニックになっては、生活に支障がでてしまう。

だから里の住民は、一度里に喧嘩を売りにきたモンスターは、決して逃さないようにしている。


 だがビッグフットの場合は、色々と事情が違う。

ビッグフットは知識もあるが、力もそこそこ強い。

 そうゆうモンスターを取り逃すのが一番厄介だが、下手に追ってこちらが深手を負う事も。


 クレンとラーコは、互いに息のあった身のこなしで、相手を翻弄して、弱点を瞬時に把握。

まだ戦ったことのない、未経験のモンスターに対しても、2人は冷静に相手を見ていた。


 その巨体や、並大抵では及ばない実力を前にしても、彼らは動じず、自分達に何ができる事をとに

 かくやり遂げようとしていた。

これぞまさに、王家を守り続けてきた、アメニュ一族の実力。




 そして、どれくらいの時間がたったか、クレンの火炎放射器から、炎がでなくなった頃。

クレン達の目のまえには、『黒焦げの塊』しか残らなかった。


 炎で溶かされた地面からは、茶色い土が露出して、その部分だけ、どれだけ高熱状態だったかがよ

 く分かる。

雪原に開いた大穴は、まるで『ミステリーサークル』の様だった。


 すべてが終わったことを悟ったクレンは、その場に倒れこむ。力の使いすぎだ。

ラーコが弟の元に駆け寄り、その間に翠は、黒焦げになったビッグフットを確認する。


 完全に絶命した様子で、もはや『石像』と化している。

絶命しているにも関わらず、まだ辛うじて立ち姿を維持しているのは、筋肉が強靭な証拠。

 クレン達は改めて、こんな化け物を相手して、無事に退治できた実感を、身をもって感じていた。




 その後、ビッグフットの亡骸は里へ持ちこまれ、クレンも力の使いすぎでフラフラだったが、なん

 とか無事だった。

リータの兄はというと、ビッグフットと応戦している最中、弟であるリータが自らの回復魔法で、治せる人は片っ端から治してまわっていた。


 だから、翠達が里にもどってきた頃には、リータもすでにフラフラな状態。

だが翠達の活躍のおかげで、どうにか全員無事で済んだ。

 避難してきた人のみならず、里の住民からも感謝される翠達。


 その時の翠達は、何故自分達がそこまで感謝されているのか分からなかったが、後になってから、

 ビッグフットの凶暴性を知らされた。

強靭揃いの里のメンバーでも、ビッグフットの退治はかなり難儀な事も、その高い知能も。


 「よく人間がビッグフットを相手にして逃れられたね・・・」と、リータの兄達に対して唖然とす

 る住民までいる。

当然、翠達も唖然とするしかできない。


 まだリータの兄とは会話できない状態だが、あのバカでかい怪物からにげるのは容易ではない。

悪運が良いのか、それとも『奇跡』だったのか・・・


「ザクロさん・・・すいません、色々と・・・・・

 ウゥウゥゥ・・・・・頭痛い・・・」


「お前、休め。後は俺達がやる。」


 フラフラになりながらも、手伝おうとするクレン。

だが、そんな姿で手伝ってもらっても、逆にこっちが心配になってしまう。

 ザクロはそんなリータに、大声で休むように促すと、リータも大人しく部屋で安静にする事に。


「クレン、リータを部屋に連れて行ってあげて。後は私と翠とグルオフでやっておくから。」


「姉さん達も頑張ってね。」


 とりあえず、避難してきた全員の体調をチェックするラーコと翠。

グルオフは、暖かいお湯をひたすら、わっせわっせと運んでいた。

 全員の体温がだいぶ冷たく、凍傷を負っている人も何人かいる。

リータの回復魔法により、傷口は塞がれたものの、それでもまだヒリヒリと痛んでいる様子。


 だが、命があるだけまだマシである。里まで辿り着けなかったら、行方不明のままだった。

あんな真っ白な雪原のなか、人を見つけるなんて不可能に近い。

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