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133・『召還士』と『スナイパー』

 彼の『覚醒者の証』は、


 スライム ヘルハウンド 魚人の槍


 が、そのまま証として刻まれている。

だが、彼の体を見たが、その証がほんの少し増えているだけ。

 それを見て、ちょっぴり不安になり翠とザクロ。

(まさか・・・?!)と、いやな予感があたまをめぐってしまう。


 そんな2人を見て、クレンは少し笑いながら、いつも通り、『スライム』を召喚する。


「自分も、ついさっき言われてびっくりしたんだけど・・・

 『召喚師』は、自分と同じLvか、もしくはそれ以上のLvのモンスターを相手にしないと、召喚獣と

 しては扱えないみたい。


 でも倒せば召喚獣は強くなるから、無駄・・・というわけではないんだ。

 だから召喚師となった覚醒者は倒すモンスターを選ぶ必要がある


 ・・・って言われた後では、もう遅いんだけどね。」


 そう話している間に、スライムがクレンの掌からポインッと登場する。

だが、ここからが、クレンの真・覚者となったクレンの、本当の力。


「な・・・なんかスライムの形が・・・?!」


 スライムが宙に浮かぶと、角張ったような形へと変化していく。

スライム特有のポヨポヨした質感も徐々に変わっている。

 そして、あっという間に変形したその姿は・・・


「じゅ・・・銃?!!」 「じゅ・・・銃?!!」


 思わず翠とザクロは、同じセリフを同じタイミングで発した。

変形を終えて、クレンの手元にもどってきたスライムの形は、さながら『拳銃』

 それをクレンは、遠くに生えている大木に向け、躊躇なく引き金をひく。

丘の上で響く発砲音に、丘に向かっていたラーコとグルオフは、思わず飛び上がってしまう。


「な・・・何々?!!」


「敵襲?!! でもまさか・・・?!!」


 2人が慌てて坂をのぼり、丘の上へ到着すると、翠とザクロが腰をぬかして倒れていた。

クレンの持つ銃からは、モクモクと煙が上がり、大木にはしっかり、『銃弾の跡』がある。

 だが不思議なことに、銃弾が埋め込まれた跡はあっても、銃弾自体はどこにも見当たらない。

立ち上がった翠が辺りを調べてみたが、やはり銃弾は『煙』のように消えてしまった。


「・・・・初めてでもちゃんと当たるのは、真・覚者故なのかな?」


「初めてなら、撃つ前に言って・・・・・」


 ラーコはまだ、顔面蒼白状態だったが、グルオフは早速、クレンの武器に興味津々な様子。

だが、まだ幼い子供に、銃に触れてほしくないクレンは、どうにか誤魔化している。

 翠も協力しようと、すぐさまグルオフの元へ駆け寄り、真・覚者となった自分もアピールする。 


「グルオフ!

 私ね、『槍』と組み合わせる事にしたんだ!

 ほら! こんなに杖をブンブン振り回しても、全然疲れないの!!」


「・・・・・・・・・・



 ごめん、ミドリさん。


 あんまり違いが分からない。」


 その言葉に、何も言い返せない翠と、一斉に吹き出した3人。

クレンの心遣いに助力する筈だったのに、逆に翠が危うい立場になってしまった。

 一瞬で形勢逆転したこの現状に、笑わない者はいなかった。


 グルオフの言う事はごもっともだが、切り返しの速さと上手さは、見ていた3人の腹に、ダイレク

 トに響いた。

翠はグルオフのツッコミに、呆然と立ちつくすしかない状況。


 自分がとんでもない事を言ってしまった事に気づいたグルオフは、ワナワナと両手をバタつかせな

 がら、どうにかフォローしようとするが、自分の発言がもっともすぎて何も言えない。

『無意識な発言故の悲劇』は、誰も責められないからこそ、余計におもしろいのだ。


 そして翠は、呆然とした頭のなかで、


(もう少し、インパクトのあるジョブにすればよかったかな・・・)


 と、今更ながら後悔してしまう。

しかし、時すでに遅し。

 翠がメニュー表示して確認をしても、ジョブを変えるような選択項目はない。

それどころか、もう『槍スキル』で選べる技の項目が追加されている。


 すっかり新しいジョブが板についてしまった翠は、以前と変わらない自分に、ほんのちょっとだけ

 落胆しながらも、これからは派手な戦いができる事にウキウキしている。


「・・・そういえば、クレンはどうして『銃』にしたの?」


「姉さんが『弓使い』だけど、全然弓矢で戦ってくれないから。」


 その言葉に、翠のつぎにショックを受けたラーコ。

弟は、姉の『もったいない性』も、『戦い方』も全て見ている。

 だからこそ、弟であるクレンが、遠距離担当の役目をになう事にしたのだ。

クレンからすれば、姉を気遣った形である。


 だがラーコにとって、アメニュ一族の家宝をちゃんと扱えていない事を、遠回しに指摘されている

 ようなもの。

もちろん、クレンにそんなやましい気がないのは、誰でもよく知っている。


 でも、それがちょっとしたすれ違いで、『迷惑なおせっかい』になってしまうのも、また事実。

ラーコは苦笑いをうかべながらも、クレンに「ありがとう」と言っていた。

 その一言が、余計にクレンの心に響く。


 ラーコも、翠を笑える立場にはない。

結局自分自身のイメージや感覚に引っ張られ、目立った変化はないまま。

 しかし、これからの戦闘が楽しみでしょうがないのは、翠もラーコも同じである。

早く変化した自分の実力を、実践で試したいのだ。



 そして、まだ組み合わせたジョブを聞いていないのが、もう1人・・・・・


「そういえば、リータは? まだ選択迷ってるの?」


「いいえ、鬼族の元で、実力を試すそうですよ。」


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