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131・丘の上で

「・・・そうか・・・

 ・・・・・情けない、まだ俺、祖先様に心配される程、頼りないまま・・・」


「いやいや、そうゆう問題じゃないよ。

 今回の一件は、ザクロ1人で解決できる問題じゃないんだよ。

 それこそ、里の皆と協力して、解決できるか否かだから・・・


 まだ相手が、どんな相手なのか、どんな対抗手段を持っているか分からない。

 でも、正当なる王家であるグルオフの両親を追い出す事ができた・・・って事は、相手も相当なや

 り手だよ、絶対。


 現時点ではどうなのか分からないけど、王都の民が全員敵に回る事になったら、色々と厄介な事に

 なるかもしれない。

 なにしろ偽・王家は、この国がちゃんと設立する前から、そうゆう思惑を隠しつつ、計画を練って

 たんだから。


 それくらい頭が回るなら、一筋縄では絶対いかない筈。

 それを貴方のご先祖様も、心の何処かで分かっていたのかも。この件は、尾を引く事が。」


「・・・そんなに、人間はしぶとい?」


「それは・・・・・

 実際に私、いま現在、王都の城に引きこもっている貴族や王族に会った事がないから、確実な事は

 言えないんだけど・・・


 でも私の経験上、ああゆう執着心が強い人間っていうのは、自分の思い通りにならない限り、いつ

 までもワンワン吠え続ける。

 それこそ、どんな手を使ってでも、自分の考えに疑問を抱かない。

 

 だからこそ、貴方の祖先は、託すしかなかった。国を定めるだけで、もう精一杯だったんだよ。」


「・・・・・やっぱりミドリは凄い。」


「あぁ・・・・・ありがとう・・・」


 翠はザクロに、これまでの旅路を語った。

里の住民達へは、昨日の晩にある程度話したが、ザクロにはまだだった。

 ザクロは、目を輝かせながら、彼女の話に聞き入っている。

特に気になっていたのは、この国で一番人が住んでいる、王都について。


「人間、沢山いる?」


「いるいる。それこそ、頭がクラクラするくらい。」


「・・・・・・・・・・・・」


 突然黙ってしまうザクロ。

翠はその理由が分からず、とりあえず話題を変えて、『ザクロの家族』について聞いてみる事に。


「そういえばさ、ザクロの家族ってどんな感じなの?

 里にはいないみたいだけど・・・・・」


「もう昔に亡くした。いつかは・・・忘れた。俺達リザードマン、長生きだから。」


「長生き・・・って・・・どれくらい?」


「・・・『老いでは死なない』」


「それって・・・・・『不老』って事?!! すっごいじゃん!!!」


 翠は思わず、彼の顔面に近づき、その言葉が本当なのか伺う。

だが、どこからどう見ても、ザクロの姿形は、翠とほぼ変わらない。

 まだ十代後半にしか見えなかった。


 よくゲームや漫画でも、『不老不死』は題材になっている。

だが、実際にそれを実現させたキャラは、大抵苦しむか、自分の選択を後悔する。

 何故なら、不老不死というのは、思っている以上に残酷で、辛いもの。

それでも、追い求めてしまう人間がいるのも、また哀れな事。


「・・・ザクロって今いくつなの??」


「・・・忘れた。」


「えー???」


「父と母を亡くした時は覚えている。でも、自分が生きた月日、覚えていない。」


「あぁー・・・・・なんかそれ分かる気がする。

 私もさ、中学・・・・・いやいや、15歳くらいになるとさ、もう自分がこれからどんどん歳をとる

 のが怖くなっちゃって・・・」


「翠はまだ若い!!! それに人間だ!!!」


「ヒェ?!! そ、そう??!

 ご・・・ごめん・・・・・」


「あ・・・・・

 俺も・・・つい・・・」


 長生きするザクロにとって、『15年』なんて、ほんの一瞬。

だが、人間である翠にとっては、(やっとここまで来た・・・)と思えるくらい、長い長い期間。

 寿命が限られる人間にとって、一年が過ぎるだけで、皆ザワザワする。

だから世界共通で、大晦日や新年は、大々的に祝う。


 しかし、不老不死ともなれば、一年の終わり抱く思いも少なくなってしまう。

ザクロは一年の終わりを、何度経験したのかも忘れてしまう程、生き続けたのだから。

 翠とザクロの距離が近くなってから、互いに段々感じるようになってきた『種族の違い』

時折ぶつかってしまう事もあるが、それでも好奇心がまだ募ってしまう。


「ザクロのお父さんとお母さんも、やっぱりリザードマンなの?」


「ううん、違う。父さん、リザードマン。母さん、『人間』」


「えぇええ?!! てっきりザクロが人と会ったのって、私が初めてだと思ってたけど・・・」


「母さん、ザクロとは違った。母さん、体弱くて、細かった。」


「ふーん・・・・・

 じゃあ、どうやって2人は結ばれたの?」


「・・・・・・・・・・母さん・・・・・


 『イケニエ』だったんだ。」


「・・・えぇ・・・・・??」


 よくネットのオカルトチャンネルでは、『人柱』や『生贄伝承』が、話の発端となる事が多い。

大昔ならまだありえる話だが、世間とはかけ離れたど田舎には、その伝承が受け継がれている・・・というのは、よくある『ホラー話の流れ』


 実際はどうなのか・・・なんて、誰も疑問には持たない。

だが、その話が嘘でも真でも、(本当にあったかもしれない・・・??)と思えてしまうのは、『先人達の記憶』なのかもしれない。


「・・・何かの儀式だったの? それとも、天災を鎮める為・・・とか・・・」


「分からない。教えてくれなかった。母さんも分からなかった・・・みたい。」


 何の為に生贄になるのか、それすらも知らされていない・・・なんて、不条理を超えている。

もしくは、幼すぎた為、聞かされても理解できなかったか・・・


(何も状況を知らされぬまま、生贄としての使命を背負わされるのは、グルオフと少し似ているのか

 もしれない。)

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