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118・変わっていく『環境』や『関係』

 グルオフが王家の末裔なら、王家を長年支え続けたアメニュ一族の末裔であるラーコとクレンに

 も、『尊敬の眼差し』が向けられる。

色々と悲惨な目に遭いながらも、王家の血筋を途絶えさせる事なく、ここまで頑張ってきたのだ。

 

 王家が生き延びる事ができたのは、アメニュ一族の働きが大きい。

それは、アメニュ一族の歴史を深く知らない翠でも分かる。

 『感謝』と『尊敬』の眼差しを向ける里の住民に対し、ラーコはオロオロしていた。


 ラーコにとって、グルオフを守る理由なんて、もう無いに等しいから。


 『一緒に過ごした家族だから』『一緒に支え合いながら過ごしてきたから』

それが一番大きな理由である。


 グルオフが『王家の末裔だから』というのも間違ってはいない。だが彼女にとっては、


 グルオフが『家族同然だから』、今まで守り抜いてきたのだ。


 でも、この里にグルオフを届けたことにより、自分の役目を改めて自覚したラーコは、少しだけ

 『寂しい気持ち』になった。

まだ偽・王家に関しての作戦は全然進んでいないのだが、もうラーコの意識は『その先』まで進んでしまっている。


 ラーコにとってグルオフは、『大切な家族・弟』

しかし、グルオフはこれから、王家の人間として生きなければならない。

 そうなると、当然アメニュ一家との関係も変わらなければいけない。

それが、ほんの少しだけ寂しく感じるラーコ。


 だが、ラーコは決して1人ではない。それは本人も十分自覚している。

様々な経緯を経て、弟に再会できた、翠やリータに出会えた。

 そして、これから『重大な使命』へ一緒に身を投じる、『もう1人の自分』のような存在。


 翠はというと、ついさっきまでバチバチにぶつかり合っていたザクロに、不自然なくらいの食いつ

 かれていた。

もう先程のさっきは何処へ消えたのか、ザクロは翠に夢中になっている様子。


「ねぇ、お前強い。どうして?」


「『どうして』・・・と言われましても・・・

 まぁ・・・・・今まで歩んできた『試練』のおかげかな?」


「どんな試練? 聞く!!」


「そこ聞くんですか?

 えー・・・・・まず何から話せばいいのやら・・・」


 目をキラキラさせながら質問攻めをしてくるザクロに対し、翠はタジタジな様子。

先程とはまた違った形で、グイグイと翠に向かって来るザクロ。

 もう敵意がないことは分かっている翠でも、なかなか言葉が出てこない。


 乙女ゲームにも、『グイグイ来る肉食系男子』は、定番のように攻略対象として登場する。

例えるなら、『クラスの陽キャ男子』である。

 毎日ワイワイガヤガヤと、うるさいくらいにはしゃぐその光景に、何度も苛立ちを覚えていた翠。


 彼らの話し声のせいで、担任の大事な話に集中できなかったり、自習時間になると『動物園の猿』

 と化す彼ら。

翠をいじっていた陽キャ女子と並んで、『クラスの代表』として、いつも目立つ役割を美味しく頂いていた。


 翠とは正反対な性格では、当然関係も遠くなってしまう。

クラスのカースト上位の女子に混じって、彼らもまた、地味で目立たない翠を、遠巻きにして笑っていた。


 当然、彼らに深い意味なんてない。

只仲良くしている女子が楽しんでいるから、自分達も同調しているだけ。

 だから、翠にとっては女子よりも興味のない存在であった。


 だが、翠もだいぶ成長した。

彼が問答無用で、翠にグイグイと詰め寄っても、しっかり対応できている。

 ちゃんと『言葉のキャッチボール』ができているのだ。



「まぁまぁ。

 ひとまずさ、荷物を置ける場所とか、寝泊まりできる場所があったら、提供してほしいの。」


「あ・・・・・ごめん。つい気になって・・・」


「いえいえ、ひと段落したら、一から十まで全部説明するわよ!


 ・・・それに、言わなくちゃいけない事もあるからね。」


 そう言って、翠は首に下げてある『お守り』をザクロに見せる。

ザクロはそのお守りを手に取り、よく観察すると、やはり気付いてくれた。

 そのお守りに結ばれている『リザードマンの鱗』が、自分の身体中に生えている鱗に、そっくりで

 ある事に。


 翠はまだ、多くのリザードマンを知らない。

だが、彼の祖先が譲ってくれた『お守りの鱗』と『ザクロの鱗』は、よく見ると『細かい模様』や『指感触ゆびざわり』がよく似ている。


 人間は『遺伝子』によって、両親や祖父母の特徴を子供達が受け継ぐ。

だがそれは、人間に限った話ではない事を、翠はこのお守りを通じて学習した。

 クレンとリータも『弟と姉』である為、似ているのは当然なのだが、それがどんなモンスターにも

 通ずる事が、翠にとっては不思議で仕方なかった。




 モンスターに対しての興味が尽きない翠であったが、ひとまず『住居(部屋)』を提供してもらう

 事ができた。

半日以上もの長い時間、里の住民が翠達を歓迎してくれた為、住居を提供してくれた頃には、すっかり日が真っ赤に染まり始めていた。


 この里で『城』の役割をになっていたのは、かつて元々敵国からの攻撃を防ぐ為の『城壁』

家もまばらに建っているが、里の為に戦う『覚醒者モンスター』は、城壁の中で暮らす事が許可されているそう。


 この城壁は里全域を見渡す事ができる上に、里の住民が全員避難して来ても十分に入りきる。

長い年月が経過しても、まだその役目を全うしている城壁は、まさに翠達を里へ誘導してくれた、ザクロの祖先と同じ。


 そして、相変わらず5人は、一つの部屋を共同で使う事に。

ザクロは、せめてグルオフだけでも、眺めの良く、安全な城壁の最上階の部屋を使う事を勧めた。

 だが、グルオフはもう、部屋に着いた途端に眠ってしまう。

ある意味『野宿終わりの恒例』である。4人も途端に眠気に襲われ、そのまま寝入ってしまった。



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