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116・遅すぎた帰還

だが、なぜかグルオフは、途端に声のトーンを下げる。

 その突然の変わり様に、里の住民は徐々に声を沈めていく。

ラーコが心配になり、駆け寄ろうとしたが、グルオフは重い口を開けてこう言った。


「・・・そして、正当なる王家にも関わらず、この地へ来たのがあまりにも遅すぎた。

 私はもう、王家としては失格なのかもしれない。


 それでも、私をこの地へ導いてくれた、こちらの4名の力もあり、無事に里へと到達できた。

 これこそ、祖先の導きであったのかもしれない。」


 グルオフは、正真正銘、正当なる王家の末裔。だからこそ、負わなければいけない責任も多い。

そして負わなければいけない『命』もある。

 里の住民がグルオフに会ったのは、今日が初めてではあるが、彼らはグルオフの祖先と深い関わり

 があった。


 だからこそ、子孫であるグルオフが、その役目を担わないといけない。

それを、グルオフも自然と認知している為、余計に辛くなってしまうのだろう。

 今まで自分が里の事を知らなかった事、国のために頑張ってきた『英雄』が、王都からこんなにも

 離れた場所に追いやられていた事すら知らなかった事。




 里の住民達も、グルオフの気持ちを感じ取ったのか、一斉に彼を励まそうと声をかけてきた。

今さっき顔を合わせたばかりとは思えない対応に、4人は静かに驚いていた。


「そんな事ない! ここまで来てくれだけで、我々は感謝してもしきれない!」

「貴方が責任を負うべきではない! 全て悪い人間達のせいだ!」

「そうだ! まだこの国は終わってはいない! 貴方様が生きている限り!」

「我らは王家と共にある! 共に背負おう!! 共に戦おう!!」


 思った以上に、里の住民はグルオフ(正当なる王家)を歓迎していた。

てっきり「今更何の用だ?!」と言われてしまうかと、ちょっぴり心配していた翠達。

 だが、グルオフの祖先は、よほど里の住民や、彼らの祖先から慕われていたのだろう。

彼らはグルオフを、一切責めたりはしなかった。


 彼らの気持ちを胸に刻み、グルオフは演説を締めくくる。


 「今日この日が、里にとっても、王家の歴史にとっても、重要な起点となるであろう!!!

  私はこの命が尽きるその時まで、この里の為に尽くす事を、ここに誓う!!!」




「グルオフ様!! 万歳!!」 「グルオフ様!! 万歳!!」 「グルオフ様、万歳!!」


 グルオフには、盛大な拍手が送られ続けた。

その直後、彼はそそくさとラーコの元に駆け寄ると、彼女の後ろに隠れてしまう。

 途中から恥ずかしくなってしまったのだろう、それでもグルオフの演説は、里の住民から大好評。

ラーコ達も、勇気を振り絞って声を発してくれたグルオフを盛大に褒めてあげる。


「グルオフ!! ありがとう!!

 そして最高にかっこ良かったよ!!!」


 ラーコは褒め言葉を並べながら、グルオフの頭を撫で続ける。


「本当に素敵だった、この中で一番頼もしいのは、グルオフなのかもしれないね。」


「そうだね、兄さん。僕も改めて、正当なる王家のグルオフと旅に出られた事を、誇りに思うよ。」


 リータとクレンがしゃがみ込み、グルオフに視線を合わせようとした。

だがまだグルオフは恥ずかしさが抜けていないのか、彼らから目を背けてしまう。

 ようやく『いつものグルオフ』に戻った事で、翠も思わず笑いながらグルオフを抱きしめ、背中を

 叩いてあげる。


「グルオフはもう十分よく頑張ってるよ! 後は私達に任せて、里の住民と仲良くしようよ!」


 翠のその言葉に、グルオフはコクリと小さく頷く。

4人には見えていないが、グルオフはにっこりと笑みを浮かべていた。


 そして、里の住民が次に注目したのは、グルオフをここまで導いてくれた翠達。

ザクロの話し方は多少違和感があったが、里の住民の中には、ザクロと同じく会話が辿々しいモンスターと、そうでないモンスターで分かれていた。


 しかし、言語はしっかり通じている様子で、翠達は安心して彼らとの会話を楽しんだ。

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