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110・ニヤニヤしながら・・・

「・・・・・で、さっきから3人は何してるの?」


 翠の声に、クレンは勢いよく後ろを振り向くと、3人が大きな木の幹に体を隠しながら、2人の様

 子を見ていた。

いつから翠が気づいていたのかは分からない、だが気づかれた3人も、クレンと同じくびっくりしている。


「に・・・兄さんの男らしいところを、もっと見たくて・・・」


「え? じゃあ普段、自分って男らしくない・・・って事??」


「そっ、そうゆうわけじゃなくて・・・!!」


 リータの顔は、いつの間にか真っ赤になっている。

両手で隠しても、指の隙間ですぐ分かるくらい。

 

 ラーコに関しては、目を潤ませながらクレンを見ていた。


「な・・・何? 姉さん、その目・・・??」


「いやね、クレンもいつの間にか大人になっちゃったのかぁー・・・ってね。」


「大人というか・・・・・


 ・・・仕方ないよ、姉さんと一緒に過ごした時期が極端に短いんだから。」


「そうゆう事じゃなくてー!」


 ラーコはニヤニヤしながら、クレンの頭を撫でた。

クレンは少し恥ずかしがりながらも、渋々姉の優しさを受け止める。

 恥ずかしいものの、ラーコが素直にクレンの成長を喜んでいるのは事実な為、クレンは何も言えな

 かった。

グルオフはというと、昨日よりもスッキリした様な表情になっている翠に、ようやく安心した様子。


 翠はそこで初めて、4人が自分の事を色々と心配してくれていた事に気づいた。

途端に翠は、また恥ずかしくなってしまうが、もう4人に対して顔を背けられない。

 4人に、感謝してもしきれない気持ちを伝える翠。

今まで改まって、そんな言葉を言った事がなかったのだが、翠は躊躇せずに胸の内を話した。


「皆、色々とありがとう。

 おかげで色々と吹っ切れたし、もう隠し事もなくなったから、すごくスッキリしている。

 

 ・・・でも、唯一悔やまれるのは、自分の口で打ち明けられなかった事・・・かな?

 昨日は最初っから最後まで、4人が私の話を真剣に聞いてくれていたから、私も打ち明けられた。

 


 

 ・・・だからさ・・・・・

 これからも、一緒に冒険して・・・いい?」


 その言葉に、一瞬驚いた4人であったが、すぐに4人は翠の元に駆け寄った。


「当たり前じゃん! 古参として、これからもずっとミドリの側にいるから!」


「僕もどこまでもご一緒します!」 「いきなり当たり前な事言わないでよ!」


「僕も、王座に就いても、またミドリさんと旅がしたいくらいです!

 この旅路、ミドリさんがいないと始まりません!」


 そんな言葉の数々に、翠はようやく『転生前の自分(過去)』を受け入れ、『今の自分』を受け入

 れた。

ゲーム好きで、内気だった自分も、勇猛果敢で、ヒーラーに囚われない戦闘スタイルを貫く自分も。

 

 そのどれもこれもが、他でもない自分である事。自分は転生者でも、この国を救う覚悟がある事。

その全てを受け入れ、貫き通す覚悟を決めた。


 もう自分を偽る必要もなければ、隠す必要もない。何故なら、自分を受け入れてくれる存在が沢山

 いる。

共に戦い、共に支え、共にこの過酷な旅路を歩んでくれる。これほど心強い存在はない。

 

 『お金』や『権力』では決して手に入らない、特別な存在。

それを自覚するのが、少々遅かった翠だが、彼女は学校の授業では決して教わらない事を、自力で学んだ。


 何の役に立つのか、自分の為になるのか、将来のためになるのか、そんなのはどうでもいい。

彼らと一緒なら、たとえどんな結末だとしても構わない。これから先が、また苦難に覆われていても構わない。

 この世界で、胸を張って歩める。それだけで、もう何もかもに挑む気になれる。

偽・王家の人間達は、決してえられないであろうものを、5人は持っている。


「・・・・・じゃあそろそろ、『本筋』に戻ろう。

 シキオリの里へ・・・!!」


 荷物整理を終え、ようやく足を踏み締め、シキオリの里があるであろう北へと向かう5人。

不思議と5人の足取りは、以前よりも速くなっていた。

 シキオリの里を見てみたい気持ちもあるが、やはり『心の重り』が完全に消えた事で、足が軽くな

 っているのだ。

もう5人は、里で何が待ち構えていても、すぐに対応できる。


 だが、本来の目的は、歩きながらしっかり確認する5人。

自分達は、里へ喧嘩を売りに行くわけでもなければ、ただ発見して終わるだけではない。

 この国を破滅へ導いてる偽・王家打倒の為の『ヒント』や『勢力』を集める。

そして、これらの目標を共に目指してくれる仲間の結成、つまり『コエゼスタンスの再建』




 5人の胸がワクワクしている間にも、足元には『白い雪の結晶』が積もり始め・・・

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